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アルバの高等学園編

点数の付け方は

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「例えば、周りと同じ成分にするために光属性の鑑定を使うとか、植物関係の状態を知る魔法を使うとか、ありでしょうか。あと、家に使う木ってきちんと乾燥させないといけないって本で読んだことがあります。だから、乾燥のための風魔法とか、あとは何でしょう、鉄などを使う場合は火属性で溶接するということもあるかもしれませんね。乾燥は水属性でも出来るので、どちらが一般的でしょうか」

 思いつくままに呟いて周りに視線を巡らせると、皆が驚いた顔をしていた。
 一番に我に返ったアーチー君が「そうでしたアルバ様の知識量は半端なかったんでした」と呟いていたけれど、そんなことないからね。雑学ばっかりだからね。

「今ので五種類は埋まりましたね。地属性で地ならし、光属性の鑑定魔法と乾燥入れましょう。地属性ばっかりだとつまらないですもんね。だったら、風魔法で切断、乾燥は水属性で行きますか。あと一つ……違う属性は……」

 手をポンと打ち合わせてにこやかな顔になったセピア嬢が、ほらほら早く書いてと促してくる。

「闇属性で空間把握の魔法があるので、それで等間隔に物を設置できます」

 フレッド君もセピア嬢に乗り始め、気付けば五種類は全部違う属性の魔法で埋められていた。きっともっとたくさんの魔法を使って修繕されるんだろうけれど、家を建てる知識がないからあんまり出てこないなあ。
 言われるまま書き入れて受付の上級生に課題の紙を持っていくと、解答用紙にパーフェクトと書き入れられた。

「パーフェクトなんですね。ありがとうございます」

 にこやかにお礼を言っていると、セドリック君が横に立ってスッと課題の紙を提出していた。上級生はすぐにチェックすると、セドリック君に戻した。

「はい、九十点です、惜しい」

 チラリと見ると、課題に対して全てを埋めていたのに、点数が引かれていた。

「あれ、どこがマイナスなんでしょう」
「アルバは何点だった?」
「パーフェクトって書いてもらいました」
「何!?」

 俺の答えに、セドリック君は大げさなジェスチャーで驚いていた。
 採点ってどうやってするんだろう。もしかしてセドリック君の班の方が難しかった?

「どんな課題だったんですか?」
「パンを作るときに使う魔法を五種類答えろってやつ」

 ああなるほど。課題の内容自体同じなんだ。ただ、何を作るかが違ってくるってことか。

「僕のところは古い館の修繕に使われる魔法五種類ってなってました」
「うわ、館修繕かあ。アルバの方が難しそうなのにどうしてこっちの方が点数低いんだろう?」

 二人で首を捻っていると、目の前の上級生がにこやかに教えてくれた。

「ここでは、どれだけの属性の魔法を知っているかという課題だったので、書かれた属性が増える程に点数が高くなりますね。セネット様の答えは火属性二個、水、土、光と四属性だったので点数がマイナスになりました。一属性だけで全部書けたら基本は六十点です」
「「なるほど」」

 俺たちは全部違う属性を書き入れたから点数が高かったらしい。それだったら、パン作りの方が難しそう。古い館なんてどんな魔法でも使えそうだからいくらでも答えが出てくるもんね。

「簡単な課題でよかった……でも全部書こうって言ってたのはセピア嬢なので、MVPはセピア嬢ですね」
「くっそ、負けた……でも館の修繕なんて簡単じゃないからな……」

 二人並んで班メンバーのところに戻り、そのまま十人で一緒に行動することにした。



 一度荷物を取りに行き、皆で特別サロンに移動する。入り口にはすでにジュール君の班メンバーが所在なさげに立っていた。普段使うサロンのさらに上の階だから、確かに緊張するよね。かくいう俺もこういうところがあることすら知らなかったし。
 入り口にいるスタッフに、セドリック君は早速ランチを持ってきていない人用のランチを注文して、あまり人気のない廊下を進んだ。
 階段を上がっただけなのに、このフロアはいつも俺たちが使うサロンよりもさらに豪華だった。一部屋一部屋にスタッフがつき、テーブルなんかも普段のところより一段階高級品と言った感じだった。
 セドリック君はまったく気にせず部屋に足を踏み入れたけれど、後ろについて来た殆どのメンバーは緊張して縮こまっていた。
 サロン内はかなり広くて、テーブルの一つ一つがゆったりしたスペースで設置されていた。ソファはふわふわで、王弟殿下の宮にあったソファと比べても遜色がないくらいだった。これはお高いね。
 おのおの恐れおののきながらそっとテーブルに着く。
 ジュール君の班には親が男爵家と親戚筋のマルタ君がいた。
 市井組の三人は本当に身の置き所がなさそうに一つのテーブルにまとまっている。
 その後すぐにセドリック君が頼んだランチが届き、三人はその豪華さに顔を青くしていた。

「これ、本当に僕たちが食べていいのか……? 請求されても払えないよ……」

 マルタ君がそっと呟いたのが、サロンに響く。それがまたマルタ君を恐縮させることになって、みていてちょっと可哀想になってきた。
 セドリック君もそのカチンコチンな雰囲気に苦笑する。

「大丈夫。食事代はここのサロンは請求されないんだ。だから遠慮なくて食べて欲しいな。美味しいんだよ。あ、ランチ持ってきた人でも頼めるけどどうする?」

 いつも通りの口調でセドリック君が皆に聞くと、そっとランド君が手を上げた。

「あの……ずうずうしいけど、うち結構貧乏なので、こんなランチきっと二度と食べられないと思うんで、頼んでもいいですか?」

 チラチラとアーチー君の前に置かれたランチに視線を向けていたランド君はダメ元だ! とばかりに「お願いします!」と頭を下げた。

「もちろん。食べよう。僕も追加で頼もう。最近ランチボックスだけじゃ足りないんだ。育ち盛りだから。アルバもスイーツだけでも頼みなよ」
「僕のランチボックスにはスイーツも入ってるので大丈夫です。育ち盛りじゃないですから!」

 ぷっと膨れてそう返すと、ジュール君に「大丈夫ですよ、これからです」と慰められた。胸が抉られる。
 だってここにいるご令嬢二人よりも俺の方が身長低かったんだよ……。栄養が全て病に取られたからなのはわかってるけど、もっと大きくなって兄様を姫抱っこしたいんだよ。俺の野望なんだよ。

「ごめんアルバ。拗ねないの。中等学園生のときよりはかなり成長してるじゃないか。それに、オルシス様はどんなアルバでも好きだって言ってくれたんだろ?」
「そうですけど……この大きさだと兄様を姫抱き出来ないのが悔しすぎて……!」
「姫……抱き? え? まって、アルバが姫抱き……する?」

 俺の言葉に呆然としたセドリック君は、次の瞬間ブホッと公爵家ご子息にあるまじき態度で噴き出した。

 
 
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