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34、なかにもらうと蕩けるんだ

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 過疎村をまとめたとは言っても、まだまだ小さな街や村は結構ある。
 どこもまだ厳しい雪の季節を乗り越えるので精いっぱいな状態で、豊かになったとは言い難い。
 人も増えたわけじゃなく、もともといた領民たちが一つに固まって領都が大きくなったような状態だ。
 まともな商会もあるわけじゃないし、酒と鉱石はまだ大々的に売り出したわけじゃないので、大々的に稼ぐことは難しい。そのうち領民が増えれば鉱山もノームたちじゃなくて領民たちで賄いたいのに、なかなか上手くいかない。とはいえ、王都から買うよりもだいぶ安く物が手に入るようになったので、ほんの一歩前に進んだ形だ。
 領都も落ち着き、騎士団が落ち着き、けれど課題はまだまだ山積み、そんな中、俺は文官の仕事から外れた。短い文官生活だった……
 正しくは、書類確認はするけれど、ある程度人の多い街や、その場所で頑張るという村間の道路整備や、まだノームたちだけで回している鉱山の整備やその周辺の整備の書類確認のみになったというわけ。
 まあ今までもイレギュラーな動きばっかりだったから、あまり立場的に変わってはいないんだけれど。
 来年こそは鉱山の内部をある程度安全に活動できるようにして、周辺に鉱山村を作りたいから、そっちに移動も呼びかけて。
 とにかく領内の道路工事を俺とノームが一手に引き受けて、移動を楽にしようとアラン様と話し合ったんだ。その為に必要なのは、俺。というか、俺の魔力。そう、魔力だけであとは親方たちに頑張って貰うことになる。

「またしばらく俺自身は役立たずかぁ」

 俺にしかできないことだと自分に言い聞かせてみても、色々と考えてしまう。だってやっぱり俺自身は魔力枯渇でへばって終わりだと思うとちょっと情けない気がして、夜になるとアラン様に泣き言を零していた。
 アラン様はそんな俺のへこんだ姿に笑いを零すと、両手を広げた。慰めてくれるらしい。
 思わず破顔して、迷いなくそこに飛び込んでいく。
 優しく包み込むその腕は、幾分へこんだ気持ちを浮上させてくれた。

「マーレの泣き言はなかなか聞けないから、たまにはこうしてゆっくりと不満を聞くのも悪くないな。私としては魔力枯渇で体調不良になるマーレを抱けないのが一番残念でならないが」

 冗談めかしてそんなことを言うアラン様に、気分が一気に復活した。
 顔を上げれば、アラン様の整った顔が間近にある。

「問題ないです。抱いて。むしろ抱いてください。中にタップリください。アラン様の」

 ぜひ! と押し気味で迫れば、アラン様はうっと顔をしかめた。

「はぁもう何を言っているのか……! それじゃあマーレが辛いだろう」

 少しだけ頬を赤くしながら、アラン様がコホンと咳をする。
 その顔が何やら可愛く見えて、口元が緩んだ。

「でも、アラン様のをお腹の中に貰うと、なんていうか、アラン様の魔力そのものを貰っているようなそんな感じになる気がして……そう、ええと、すっごくいいんです」

 本当は体液で魔力をわけて貰えるなんて聞いたこともないけれど、嘘は言ってない。
 アラン様の魔力はどこか心地いし、何より中に貰うと身体中が蕩けてあったかくなる。
 
「今日も仕事終わりましたし、今はもうプライベートですし。アラン様、ベッドいきません? 今日は魔力もほぼ減ってないから、滅茶苦茶にしてもまったくなんの問題ないですよ」

 アラン様にしなだれかかった状態でアラン様を見上げれば、やっぱりしかめっ面で「ああもう……」と吐息と共にどこか焦ったような声が飛び出した。
 途端に身体を抱き留められ、口が塞がれる。
 さっきまで飲んでいた酒の香りが口の中に満たされ、ついでに心も満たされる。
 
「くそ、誘惑するマーレが可愛すぎて・・・・・・! 明日から雪支度が始まるから、一度だけ」
「もうそんな時期なんですね。仕方ないか。じゃあ、すごく濃厚な交わりを一度だけ……」

 目を細めて、何度も角度を変えながら、口を重ねる。
 濃厚な一度だけの夜伽を迎えるために、俺はアラン様の首に腕を回した。

 ソファの上で、深い深いキスを繰り返す。
 最初は俺を慰めるような可愛らしいキスだったけれど、それでは物足りないのでアラン様の舌を絡め取るため、アラン様の形のいい唇を少し強引に割り開く。
 お互いの舌を絡めれば、腰に甘い痺れが広がった。
 アラン様の手が俺の服をそっと脱がしていく。大きいけれど細く繊細な指が、丁寧に、けれど迷いなくボタンを外していく。俺も、と首から腕を外そうとすると、まるでいやいやをするようにアラン様が首を振り、腕をそっと押さえてきたので、脱がすのは諦めることにする。
 肌を直に手の平で撫でられ、くすぐったいのとは違う感覚に吐息が漏れる。
 胸の突起を指ではじかれ、摘ままれ、下腹部にじんと快感が溜まっていく。
 舌と胸を執拗に可愛がられ、俺は白旗を上げた。

「も、ナカも、弄って……」
「濃厚なのがいいんだろう……?」
「そうだけど……っ、もどかしい」

 切なく震える下腹部に、アラン様が目を細めて笑うけれど、アラン様の熱も既にガチガチになっているのがしっかりと布腰にわかる。 
 
「これ以上焦らされると、挿れられた瞬間イくから、ダメ……っ、すぐおわっちゃうから……っ」
「それもまた、可愛い」
「よくないよ……っ」

 ギュッとアラン様の首に抱き着いて、腰を揺らすと、アラン様の熱が俺の足に擦れる。
 アラン様もその刺激に「・・・・・・っ」と息を吞むと、熱を孕んだ吐息を漏らした。
 ぐい、と身体を持ち上げられ、身体が宙に浮く。
 アラン様は俺を抱きあげると、そのままぐいぐい進んで、ベッドに俺を下ろした。
 そのまま下半身も衣類をはぎ取られ、天を向いている俺のモノを、アラン様が躊躇いなく口に含んだ。

「っ……あぁ……」

 温かい物に包まれ、直接的な快感がそこに集中する。
 ゆっくりと口が上下するたびにぐんと熱が上がって、俺の口から嬌声が漏れた。
 たまらず口の中で一度出してしまうと、アラン様の口の中の白濁がその綺麗な指に絡められる。その濡れた指が、今度は秘所を撫でた。 
 敏感な状態で指が挿入され、身体が跳ねる。
 未だ口も離れていない状態で指を奥まで差し込まれて、頭の中が真っ白になった。

「あ、あっ、あっ、んン……んゃ……っ」

 指の動き、口の動きに合わせて、声を出してしまう。
 色々と耐えられなくて、俺の手はアラン様の頭を押さえるように掴んでしまった。
 それに押されるように深くなるアラン様の口技に、指をギュッと締め付けて生理的な涙を浮かべてしまう。良すぎて耐えられなかった。

「や、アラン様、指じゃなくて、口じゃなくて……っ」

 早く欲しい……
 熱のこもった吐息と共に零せば、アラン様の口がようやく俺のモノから口を離した。
 足を抱えられ、指で解されたところに、アラン様の熱が触れる。
 挿入される前に、側に添えられただけでもう、頭が沸騰しそうだ。
 はく、と小さく息を吐いた瞬間、アラン様が俺の肉を分け入ってきた。

「~~~~っ」
「……っ、マーレ、少し、緩めてくれ……っ」
「むり……」

 ただただ挿入されただけなのに、もう音を上げた俺の頬を、アラン様の手のひらが撫でていく。
 それすら気持ちよくて、背中を快感が走り抜ける。
 
「マーレ、愛している」

 耳元でそっと囁かれ、俺はアラン様に抱き着いた。
 アラン様に触れられているすべてが愛しく、気持ちよくて、俺はうわごとのように「俺も」と繰り返した。

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