平凡次男は平和主義に非ず

朝陽天満

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27、溶けて蕩けて

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 少しの間、口移しで酒の味を堪能する。
 いつもならこれくらい飲んでも平気なのに、今日は何故か身体の中を酒精が巡っている気がする。腹の奥が熱くて、頭がぽやっとして……

「ん……マーレ、続きは、向こうで」
「はぁ……ぁ」

 アラン様に身体を起こされ、口から垂れた酒の雫を腕で拭う。
 身体の中が、熱かった。
 目の前にいるアラン様がいつも以上に綺麗に見える。
 もっと、という思考が頭の中で回る。
 
「一瞬でも離れたくないのに、まだ我慢しないと、ダメ……?」
「……っ、こういう時に一番かわいい顔をするのは、反則だ」

 ぐっと何かを呑み込んだような顔をしたアラン様は、またがったままの俺の身体を持ち上げた。
 バランスが崩れそうになってアラン様の首にしがみ付くと、間近にあるアラン様の口がチュッと俺の口を吸う。

「ほんの少しだけ、私のために我慢してくれないか」
「アラン様のために……? 我慢、する。から、早く……」

 キスを返すと、アラン様が大股で寝台に近付いた。
 柔らかく広い寝台にそっと降ろされる。
 離れがたくて首に回した腕をそのままにしていると、耳のすぐ横でクスリと笑う声が聞こえた。それはまるで俺を包み込むような、総てを認めてもらえるような響きで耳から飛び込んで来て、身体が蕩けた。
 キスを繰り返しながら、アラン様の手が俺の服を剥いでいく。
 肌があらわになると、優しく手のひらが肌の上を滑っていく。
 触れられたすべてが熱くて、そこから別の物体に変わってしまうような気がしてくる。

「溶け……そ……」
「たくさん、蕩けさせたい……」

 その言葉だけで脳が蕩けそう。
 うっとりしながら目を開ければ、蕩けそうなアラン様の顔が間近にあった。


 アラン様の指が、俺のナカを解していく。
 香油の仄かな香りが指の動きと共に立ち上る。
 
「ん、んン……ぁ」

 クチュ……という水音と俺の吐息が交ざって、何とも言えない淫靡な空間が出来上がる。
 勃ち上がった前が切なくて足を閉じれば、やんわりとアラン様に開かれ、じれったい程に優しく前をしごかれる。
 
「も、アラン様ぁ……っ」

 焦らさないで。
 腹の奥が疼いて悲鳴を上げている。
 早くアラン様の熱が欲しい。
 俺のナカを暴いているアラン様の指は、さっきから的確に弱点を突き、その都度俺の身体は跳ね、熱は増していく。

「辛かったら、必ず言うんだぞ……」

 アラン様の言葉に頷けば、俺のナカにあったアラン様の指が抜かれていく。
 太腿を開かれ、アラン様の身体がぴたりと俺の下腹に感じる。
 俺を求めてくれている硬い屹立が、俺のモノと擦れ合い、期待に身体が震える。
 ぐ、と今まで沢山解された場所にソレが挿し込まれ、たまらず俺は声を上げていた。

「ああぁ……っ」

 ゆっくりと挿入されるアラン様の屹立が、俺の内壁を押し広げて奥へ奥へと熱を届ける。

「あ、あらん、様……っいい、いい……っ」
「私も、すごくいい……痛くはないか……?」
「少し、痛いのがいい、キツいのも、いい……っ、でも、繋がってるとこ、溶けて、アラン様と、俺の境目が、わからないのが、すごく」

 感じたままの思考が口を突く。
 途端、一気にアラン様の屹立が最奥に差し込まれた。
 繋がったところの肌がぴたりとくっついて、それがまたよくて、頭の中が溶けていく気がする。
 
「それ以上、言うな……私が、耐えられない……」
「たくさん、沢山ください」

 溢れるくらいに。
 呟くと、足を支えていてくれたアラン様の手が腰に回った。
 ズルル、とアラン様が抜けていく。
 
「あ……」

 喪失感に声を出せば、総て抜けきる前にまた奥に差し込まれ、また違う声を上げてしまう。
 アラン様の屹立が、動くたびに俺の弱点を抉っていく。
 その度に俺のモノから白濁が溢れる。
 自分の物じゃないような甘い声が口から零れ続け、いつもは優雅にも見える動きは今に限ってとても荒々しく、そこがまたいい、と思い。
 見上げれば、いつもは見られないアラン様の顔が目に飛び込む。
 愛しい人を見下ろすような、何かを必死で我慢しているような、激情を抑え込んでいるような、そんな顔。
 俺は、どんな顔でアラン様を見上げてるんだろう。
 これからはずっと、こうしてアラン様と身体全体で愛し合うことができるってことか。

「……幸せ過ぎて、胸が、痛い」
「私もだ……」

 ついつい零した呟きに、そんな声が返ってきて、胸の中から愛という名の熱が溢れた。


 
「おはようマーレ」

 睡眠から意識が覚醒して、一番初めに耳に飛び込んできたのは、アラン様の声だった。
 今までと同じ声の筈なのに、響きがいつもと違って聞こえるのは、俺の耳がおかしくなったんだろうか。
 首を傾げながら目を開ければ、花のように微笑むアラン様の顔が間近にあった。
 その笑顔に、一瞬で眠気が飛ぶ。
 そういえば昨日から一緒の寝台に寝てたんだった。
 ちらりと身体に視線を向ければ、薄めの寝間着に包まれた俺の身体とアラン様の身体が密着していた。
 ちらりと見える胸元がとてもセクシーで、心臓が跳ねる。
 そして俺の胸元には、アラン様がつけた赤い模様が点々と散っていた。
 ぐわっと顔が熱くなる。
 
「朝一でアラン様のセクシーショットとか、心臓止まりそう……」
「これから毎日のことだから慣れて貰わないと困るな」

 軽く笑いながらそんなことを言うアラン様に「無理です」とジト目を向けてしまう。
 だって、見れば見る程アラン様は魅力的に見える。毎日飽きずに見惚れる自信があるよ。
 恥ずかしくてそっと毛布を引き寄せれば、その上からアラン様に抱きしめられた。

「これから朝ここから抜け出すのが苦痛になりそうだな……ずっとマーレと戯れていたいと思ってしまう」
「朝っぱらから誘惑しないでください……本気でここから動きたくなくなるから。今日はアラン様も一緒に農地拡大と村の統合の会議でしょ」
「そうだな。仕方ない、起きるか……」

 アラン様は、ぐっと腕に力を込めて俺を抱き締めると、チュッと軽く口にキスをして身を起こした。
 俺も一緒に起き上がり、下半身の怠さに息を吐く。
 この怠さすら嬉しいと感じるのは、俺がヴィーダ家の血を継いでいるからか。
 だってヴィーダ家って一人この人って決めたら絶対に浮気も余所見もできない気質だから。もう俺はきっと恋愛的意味ではアラン様以外考えられないよ。
 躊躇いなくバサリとローブを脱ぐアラン様の背中が、何かとても眩しい光のように感じて、俺はそっと目を細めた。

 
 
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