48 / 53
第二章
47、勇者召喚のアイテム
しおりを挟む
蔑んだ笑顔って本当にヤバいな、と改めて思う。どれだけ綺麗でも、一瞬にして可愛くなくなる。
もしこの表情をグロリア様がしたら……その想像をしてしまい、変な声が上がりそうになるのを口を押さえることで必死で止めた。
グロリア様の悪役ムーブ、胸がキュンキュンする。女王様! 女王様がいた……! こんな小物感満載の方じゃなく、本物の女王様だった……。可愛い。さっきの考えは間違いでした。出来る人があの表情をすれば、とても映える。きっとシーマ様もメロメロで踏んで
下さいとかその美しいお尻に敷かれたいとか言いかねない。
私があの表情をすると緊張して泣きそうででも笑わないといけない小物にしか見えない。多分。笑いしか取れないね。
「貴女、情報は大事よ? 最近、とても風が強いと思いませんこと? あれは勇者様がたが風の精霊様を無事お助けしたからだという情報でもちきりでしてよ?」
「あ、あの、差し出がましいことを……申し訳ありません」
青くなって小さくなる女生徒を見下ろしたマリーウェル嬢は、クラス内をぐるりと見回した。
「何か有益な情報はないかしら?」
マリーウェル様が私をじっと見てくるけれど、私も情報は欲しい方だからね。そこら辺はこの国の人にお任せするよ。
情報を集めたあとは、殿下たちをどうするのかがまた問題になると思うから、きっと皆忙しくなるよ。
私もこの学校の書庫で色々と探そう。ドッケ……違った。色んな情報を。
マリーウェル様は周りを見渡すと、ではこうしましょう、と手をポンと叩いた。
「精霊様のことを調べる時間を設けましょう。そうですわね……二日後、情報を持ち寄り精査しましょう。よろしいかしら、先生」
「まあいいだろう。二日後にまたホームルームを儲ける」
各自調べてくるように、と最後だけは先生がまとめ、マリーウェル様は席に着いた。
この行事が終わらないと大々的に動けないっていうのがキツい。
来月は絶対にセルゲン国に行ってやるんだ。青い空、広い海、でかい海鮮……。
ああ、勇者なんて呼ばなくていいから、無難に展示物とかで終わらせたい。むしろ殿下たちが喜ぶものなんて見つけられない方が平和なんじゃ……。
何事もなく終わってくれないかな、学園祭。
なんて思っていた時期もありました。
我がクラスの生徒は、やってくれました。
アレックス殿下が「顔出すしかないか」という情報を持ってきた生徒がいたんだよ。
それはあのマリーウェル様……ではなくて。
よく図書室で会う同じクラスのメガネ男子が、精霊の歴史的な本を図書室の奥にある古書の中から見つけてきたんだ。
学園の了承を得て、来てくれるならその本は差し上げる、と言う約束まで学園長と取り交わしたらしい。有能。
見た感じ本当にボロボロだったけれど、あれはあれだ。スピリットクリスタルの解体新書なる分厚い攻略本の中に書かれていた精霊様と悪魔たちの確執がずらずら書かれたものだった。
内容はわかる。
でもその本は、現代では使われていない古代の文字で書かれていた。多分兄さんなら読めるけど、私は単語がわかる程度。でも挿絵がちゃんと入っていて、その挿絵はバッチリ見たことがあるので、内容はわかる。
そして、そのメガネ男子は、ちゃんと古代の文字が読めた。有能。
「内容は、昔は悪魔と精霊は同じ世界で隣り合って暮らしていたことが書かれています。授業では習わない歴史のようなので、もしかしたら勇者様たちも納得いただけるかと」
その説明を聞いたマリーウェル様は、ちょっといらだったようにそんなボロを……と呟いている。
もしかしたら自分が一番すごい情報を持ち寄れなかったから?
ちなみにマリーウェル様はとても誇らしげに風の精霊様のいるダンジョンの見取り図を提出してきた。もう入っちゃったから正直いらない情報だ。ってかマリーウェル様が風の精霊様が解放されたことを言っていたのに。家宝だとか何だとか教えてくれたけど、私の情報の簡易版だった。
それが殿下たちのもとに届けられたんだけれど。
「俺この文字読めないんだけど。読める人~」
殿下の問いに、誰一人手を上げなかった。
私ももちろん上げなかった。内容はわかるけれども。
すると、皆の視線が私に集中した。
「ローズ嬢も読めないの?」
「読めません。多分兄さんならかろうじて読めるとは思うんですが」
「ノア優秀過ぎん? 領地継がないで王宮にずっといて欲しい」
「兄さんに伝えておきますね。きっと泣いて土下座して喜びます」
「それ本当に喜んでんの?」
尊い方と友人になっただけでもう名誉ですからね! と拳を握ると、殿下が苦笑した。
「面白そうだからぜひこれがいいって言ったの失敗だったかな。俺は絶対にローズ嬢が読めると思ってたから」
「文字は読めませんけど内容はたぶんわかりますよ」
まあもしあのエピソードが乙女ゲーム仕様になっていたらお手上げだけど。
私はボロボロの本を壊さないようにそっと開くと、あの人も殺せそうな分厚い攻略本のページを頭の中でめくった。
もしこの表情をグロリア様がしたら……その想像をしてしまい、変な声が上がりそうになるのを口を押さえることで必死で止めた。
グロリア様の悪役ムーブ、胸がキュンキュンする。女王様! 女王様がいた……! こんな小物感満載の方じゃなく、本物の女王様だった……。可愛い。さっきの考えは間違いでした。出来る人があの表情をすれば、とても映える。きっとシーマ様もメロメロで踏んで
下さいとかその美しいお尻に敷かれたいとか言いかねない。
私があの表情をすると緊張して泣きそうででも笑わないといけない小物にしか見えない。多分。笑いしか取れないね。
「貴女、情報は大事よ? 最近、とても風が強いと思いませんこと? あれは勇者様がたが風の精霊様を無事お助けしたからだという情報でもちきりでしてよ?」
「あ、あの、差し出がましいことを……申し訳ありません」
青くなって小さくなる女生徒を見下ろしたマリーウェル嬢は、クラス内をぐるりと見回した。
「何か有益な情報はないかしら?」
マリーウェル様が私をじっと見てくるけれど、私も情報は欲しい方だからね。そこら辺はこの国の人にお任せするよ。
情報を集めたあとは、殿下たちをどうするのかがまた問題になると思うから、きっと皆忙しくなるよ。
私もこの学校の書庫で色々と探そう。ドッケ……違った。色んな情報を。
マリーウェル様は周りを見渡すと、ではこうしましょう、と手をポンと叩いた。
「精霊様のことを調べる時間を設けましょう。そうですわね……二日後、情報を持ち寄り精査しましょう。よろしいかしら、先生」
「まあいいだろう。二日後にまたホームルームを儲ける」
各自調べてくるように、と最後だけは先生がまとめ、マリーウェル様は席に着いた。
この行事が終わらないと大々的に動けないっていうのがキツい。
来月は絶対にセルゲン国に行ってやるんだ。青い空、広い海、でかい海鮮……。
ああ、勇者なんて呼ばなくていいから、無難に展示物とかで終わらせたい。むしろ殿下たちが喜ぶものなんて見つけられない方が平和なんじゃ……。
何事もなく終わってくれないかな、学園祭。
なんて思っていた時期もありました。
我がクラスの生徒は、やってくれました。
アレックス殿下が「顔出すしかないか」という情報を持ってきた生徒がいたんだよ。
それはあのマリーウェル様……ではなくて。
よく図書室で会う同じクラスのメガネ男子が、精霊の歴史的な本を図書室の奥にある古書の中から見つけてきたんだ。
学園の了承を得て、来てくれるならその本は差し上げる、と言う約束まで学園長と取り交わしたらしい。有能。
見た感じ本当にボロボロだったけれど、あれはあれだ。スピリットクリスタルの解体新書なる分厚い攻略本の中に書かれていた精霊様と悪魔たちの確執がずらずら書かれたものだった。
内容はわかる。
でもその本は、現代では使われていない古代の文字で書かれていた。多分兄さんなら読めるけど、私は単語がわかる程度。でも挿絵がちゃんと入っていて、その挿絵はバッチリ見たことがあるので、内容はわかる。
そして、そのメガネ男子は、ちゃんと古代の文字が読めた。有能。
「内容は、昔は悪魔と精霊は同じ世界で隣り合って暮らしていたことが書かれています。授業では習わない歴史のようなので、もしかしたら勇者様たちも納得いただけるかと」
その説明を聞いたマリーウェル様は、ちょっといらだったようにそんなボロを……と呟いている。
もしかしたら自分が一番すごい情報を持ち寄れなかったから?
ちなみにマリーウェル様はとても誇らしげに風の精霊様のいるダンジョンの見取り図を提出してきた。もう入っちゃったから正直いらない情報だ。ってかマリーウェル様が風の精霊様が解放されたことを言っていたのに。家宝だとか何だとか教えてくれたけど、私の情報の簡易版だった。
それが殿下たちのもとに届けられたんだけれど。
「俺この文字読めないんだけど。読める人~」
殿下の問いに、誰一人手を上げなかった。
私ももちろん上げなかった。内容はわかるけれども。
すると、皆の視線が私に集中した。
「ローズ嬢も読めないの?」
「読めません。多分兄さんならかろうじて読めるとは思うんですが」
「ノア優秀過ぎん? 領地継がないで王宮にずっといて欲しい」
「兄さんに伝えておきますね。きっと泣いて土下座して喜びます」
「それ本当に喜んでんの?」
尊い方と友人になっただけでもう名誉ですからね! と拳を握ると、殿下が苦笑した。
「面白そうだからぜひこれがいいって言ったの失敗だったかな。俺は絶対にローズ嬢が読めると思ってたから」
「文字は読めませんけど内容はたぶんわかりますよ」
まあもしあのエピソードが乙女ゲーム仕様になっていたらお手上げだけど。
私はボロボロの本を壊さないようにそっと開くと、あの人も殺せそうな分厚い攻略本のページを頭の中でめくった。
268
お気に入りに追加
1,467
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる