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第一章
18、高い目標
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聞こえて来た可愛らしい声に自然眉が寄る。
そこで、ライ君がこっちを見ていることに気付いたので、素直な疑問をぶつけてみた。
「休憩時間に勉強って、ライ君してたっけ?」
ライ君のそんな姿は見たことないけど、そんなことをする人がこの中にいるのかな。それに、ここにいる誰かがそういうことをしてるとして、どうして一年生のヒロインちゃんがそのことを知っているんだろう。と首をかしげていると、ライ君が呆れたような溜息を吐いた。
「俺じゃねえよ。ローズ様だろ」
「私? 休憩時間に勉強なんてしてませんけど……」
「そうかもしれないけど、あいつはローズ様が必死で勉強してるんだと思ってるみたいだぜ」
「なんで?」
アレックス殿下はなんとかヒロインちゃんを帰そうとしているみたいだけれど、ヒロインちゃんの食いつきがすごくて、全然会話になっていない。
私が休み時間に勉強しないといけないくらい生徒会が忙しいって、どこ情報なんだろう。休み時間は私の癒しの読書時間なんだから、勉強なんてするわけないのに。
「ローズクオーツ様のことを想うのなら、ここで生徒会の激務から解放して差し上げた方がいいと思うんです」
「彼女の代わりはどこにもいないよ。きっと君には彼女の代わりは出来ないだろう」
聞こえてくる殿下の言葉に、皆が一斉に頷いた。特にグロリア様が首がもげるんじゃないかという程にブンブン縦に振っている。
やっぱり私のことだったのか。ライ君正解。
「でしたら、次の試験の時に私の方がローズクオーツ様よりも成績上位になったのなら、彼女と私の立場を入れ替えてください。きっとお役に立ってみせます!」
「いやだから……ちょっとはこっちの話も聞けよ……」
アレックス殿下が何かを言う前に、鼻息荒く廊下を進む足音が聞こえてくる。
最後の殿下の独り言はだいぶお疲れが滲んでいて、ドアを開けた瞬間皆が「お疲れさまでした!」と出迎えたことに一瞬肩をビクッと震わせていた。
「話は聞いていた。なんだあの生徒は」
シーマ様がドアの方を向きながら呆れたような声を出す。
「なんかすっげえアピールされたぞ。私優秀ですって。今日向かったところほぼずっとついてきてたからホント大変だった……ザッシュは一言も喋らないし」
「ああいう姦しいのはどう話していいか悩むだろ。会話にならん」
アレックス殿下とザッシュ様が席に着いたので、二人にもお茶を出すと、殿下が顔をほころばせて「これこれ、このタイミングだよな」と優雅にカップに口をつけた。
「ローズ嬢、アリア嬢となんかやり合ってるのか? あれ、ローズ嬢を気遣う振りしてかなり堕としてるぞ」
「いいえ、やり合うも何も、交流もほぼないですし……」
きっと彼女は生徒会に入って、第三王子殿下や騎士団長ご子息、宰相ご子息と仲良くなりたかったんだと思います。
そう心の中でつぶやきつつ、何も知らない風を装って首をかしげてみる。
「ところで次の試験で彼女の方が成績上だったら生徒会補佐交代なんですか?」
「そんなこと俺、一言も約束してないぞ。彼女が一方的に言っているだけだったのはザッシュも聞いてるよな」
「ああ」
「むしろどうして成績だけで交代できると思ったのかそれが疑問だ。俺さ、ローズ嬢を選んだこと、すっげえ僥倖だったと自分で思う」
「そんな持ち上げられても何も出ないんですが」
「むしろ俺が出すよ。ザッシュがいそいそと侍女を並ばせて買って来た『ウテナ菓子店』の焼き菓子! 俺の分もやるから沢山食えよ」
「ありがとうございます! 気合入ります! これからも是非頑張りますのでどうかザッシュ様差し入れよろしくお願いします!」
ぐっと拳を握ってザッシュ様を見つめれば、ザッシュ様は嬉しそうに笑った。
「菓子仲間ができたのは嬉しいな。こいつらあんまり甘いものを食べないんだ。グロリア嬢だって太るからと……」
「ザッシュ様はどうやら私に喧嘩を売っているようですね……違います。甘いものは好きです。けれど、私は甘いものより甘酸っぱい物の方が好きなんです。特にベリーとレモンのお菓子が好きなので、お詫びに今度レモンのタルトを差し入れてくださいませ。お待ちしております」
「……あれはあまり甘くないだろう」
「いいえ、あの甘さと酸っぱさのコラボレーションが最高なのですわ」
「ほらな、菓子仲間が周りにいないだろう? 家では甘いものを食おうとすると弟にごつい身体をして甘いものとか似合わないにもほどがあるとバカにされるから他ではスイーツ談義などできないし」
「フルーツのタルトもお菓子ですわ。偏見はいけませんわよ」
「甘いもの談義するなよ」
いつもは口数の少ないザッシュ様は、甘いものの話になると饒舌だった。
雰囲気もがらりと変わって年相応になるのが大分面白い。
滅茶苦茶美味しい高級お菓子を頬張りながら皆の言い合いを聞いていると、殿下がそっと私に気遣う視線を向けた。
「その、ローズ嬢はどうなんだ? 勉強が大変なのか? 休憩時間も取れないくらい。正直、本当に大変なら、ここから解放するのも致し方ないとは思うけど、俺としては続投を本気でお願いしたいんだ」
殿下が真剣な表情で頼む、と頭を下げる。その際、チラリとグロリア様を見たのを、私は見逃さなかった。グロリア様係は私だって誰にも渡したくない。癒しだからね。
「むしろその前提が間違ってますよ。私、休み時間は読書に宛てているので。目標は卒業までにここの学園の蔵書を全て読破することです。その為には休憩時間を当てるのが一番効率的なんですよ。勉強なんかで読書時間を減らしたくないですね」
「それか……」
胸を張って答えれば、皆が呆れたような顔になった。
「学園の蔵書を全て読破って……試験の勉強をするよりも目標高くないか?」
「趣味ですから」
殿下から貰ったお菓子を開けながら、反論は許さないよ、という圧を込めてにこりと笑った。
そこで、ライ君がこっちを見ていることに気付いたので、素直な疑問をぶつけてみた。
「休憩時間に勉強って、ライ君してたっけ?」
ライ君のそんな姿は見たことないけど、そんなことをする人がこの中にいるのかな。それに、ここにいる誰かがそういうことをしてるとして、どうして一年生のヒロインちゃんがそのことを知っているんだろう。と首をかしげていると、ライ君が呆れたような溜息を吐いた。
「俺じゃねえよ。ローズ様だろ」
「私? 休憩時間に勉強なんてしてませんけど……」
「そうかもしれないけど、あいつはローズ様が必死で勉強してるんだと思ってるみたいだぜ」
「なんで?」
アレックス殿下はなんとかヒロインちゃんを帰そうとしているみたいだけれど、ヒロインちゃんの食いつきがすごくて、全然会話になっていない。
私が休み時間に勉強しないといけないくらい生徒会が忙しいって、どこ情報なんだろう。休み時間は私の癒しの読書時間なんだから、勉強なんてするわけないのに。
「ローズクオーツ様のことを想うのなら、ここで生徒会の激務から解放して差し上げた方がいいと思うんです」
「彼女の代わりはどこにもいないよ。きっと君には彼女の代わりは出来ないだろう」
聞こえてくる殿下の言葉に、皆が一斉に頷いた。特にグロリア様が首がもげるんじゃないかという程にブンブン縦に振っている。
やっぱり私のことだったのか。ライ君正解。
「でしたら、次の試験の時に私の方がローズクオーツ様よりも成績上位になったのなら、彼女と私の立場を入れ替えてください。きっとお役に立ってみせます!」
「いやだから……ちょっとはこっちの話も聞けよ……」
アレックス殿下が何かを言う前に、鼻息荒く廊下を進む足音が聞こえてくる。
最後の殿下の独り言はだいぶお疲れが滲んでいて、ドアを開けた瞬間皆が「お疲れさまでした!」と出迎えたことに一瞬肩をビクッと震わせていた。
「話は聞いていた。なんだあの生徒は」
シーマ様がドアの方を向きながら呆れたような声を出す。
「なんかすっげえアピールされたぞ。私優秀ですって。今日向かったところほぼずっとついてきてたからホント大変だった……ザッシュは一言も喋らないし」
「ああいう姦しいのはどう話していいか悩むだろ。会話にならん」
アレックス殿下とザッシュ様が席に着いたので、二人にもお茶を出すと、殿下が顔をほころばせて「これこれ、このタイミングだよな」と優雅にカップに口をつけた。
「ローズ嬢、アリア嬢となんかやり合ってるのか? あれ、ローズ嬢を気遣う振りしてかなり堕としてるぞ」
「いいえ、やり合うも何も、交流もほぼないですし……」
きっと彼女は生徒会に入って、第三王子殿下や騎士団長ご子息、宰相ご子息と仲良くなりたかったんだと思います。
そう心の中でつぶやきつつ、何も知らない風を装って首をかしげてみる。
「ところで次の試験で彼女の方が成績上だったら生徒会補佐交代なんですか?」
「そんなこと俺、一言も約束してないぞ。彼女が一方的に言っているだけだったのはザッシュも聞いてるよな」
「ああ」
「むしろどうして成績だけで交代できると思ったのかそれが疑問だ。俺さ、ローズ嬢を選んだこと、すっげえ僥倖だったと自分で思う」
「そんな持ち上げられても何も出ないんですが」
「むしろ俺が出すよ。ザッシュがいそいそと侍女を並ばせて買って来た『ウテナ菓子店』の焼き菓子! 俺の分もやるから沢山食えよ」
「ありがとうございます! 気合入ります! これからも是非頑張りますのでどうかザッシュ様差し入れよろしくお願いします!」
ぐっと拳を握ってザッシュ様を見つめれば、ザッシュ様は嬉しそうに笑った。
「菓子仲間ができたのは嬉しいな。こいつらあんまり甘いものを食べないんだ。グロリア嬢だって太るからと……」
「ザッシュ様はどうやら私に喧嘩を売っているようですね……違います。甘いものは好きです。けれど、私は甘いものより甘酸っぱい物の方が好きなんです。特にベリーとレモンのお菓子が好きなので、お詫びに今度レモンのタルトを差し入れてくださいませ。お待ちしております」
「……あれはあまり甘くないだろう」
「いいえ、あの甘さと酸っぱさのコラボレーションが最高なのですわ」
「ほらな、菓子仲間が周りにいないだろう? 家では甘いものを食おうとすると弟にごつい身体をして甘いものとか似合わないにもほどがあるとバカにされるから他ではスイーツ談義などできないし」
「フルーツのタルトもお菓子ですわ。偏見はいけませんわよ」
「甘いもの談義するなよ」
いつもは口数の少ないザッシュ様は、甘いものの話になると饒舌だった。
雰囲気もがらりと変わって年相応になるのが大分面白い。
滅茶苦茶美味しい高級お菓子を頬張りながら皆の言い合いを聞いていると、殿下がそっと私に気遣う視線を向けた。
「その、ローズ嬢はどうなんだ? 勉強が大変なのか? 休憩時間も取れないくらい。正直、本当に大変なら、ここから解放するのも致し方ないとは思うけど、俺としては続投を本気でお願いしたいんだ」
殿下が真剣な表情で頼む、と頭を下げる。その際、チラリとグロリア様を見たのを、私は見逃さなかった。グロリア様係は私だって誰にも渡したくない。癒しだからね。
「むしろその前提が間違ってますよ。私、休み時間は読書に宛てているので。目標は卒業までにここの学園の蔵書を全て読破することです。その為には休憩時間を当てるのが一番効率的なんですよ。勉強なんかで読書時間を減らしたくないですね」
「それか……」
胸を張って答えれば、皆が呆れたような顔になった。
「学園の蔵書を全て読破って……試験の勉強をするよりも目標高くないか?」
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