これは報われない恋だ。

朝陽天満

文字の大きさ
上 下
827 / 830
番外編5

魔大陸開墾編 11

しおりを挟む
 たんまり手に入った錬金素材を、錬金釜に入れてグルグル掻き混ぜる。
 新しいレシピが現れていたので、それをちゃんとしたレシピに仕上げるべく、次々と錬金しているのだ。
 隣には、工房に遊びに来ているセブンがいる。
 慣れない錬金作業に苦戦している模様。重そうな動作を見ていると、ヴィデロさんに手伝ってもらって作っていた初期の頃を思い出して胸がほっこりする。
 
「なんでマックのはそんなに軽そうなんだよ」
「俺専用になったからじゃないかな。前のはサラさん用を使わせてもらってた感じだったからめっちゃ大変だったよ」
 
 言いながらも、レシピに書かれている素材をツッコんでは混ぜる、混ぜる、混ぜる。
 そして、見たこともないアイテムが出来上がり、レシピ集の一ページが完成する。達成感がヤバい。楽しい。
 ニコニコしていると、セブンが鑑定を使ったらしく、出来上がった錬金アイテムをガン見している。

「なんだよそのぶっ壊れ性能の錬金アイテム」
「ぶっ壊れって」

 言い過ぎじゃ、と苦笑しながら鑑定眼で見てみると。

『古泉浄石:枯れた泉の中心に埋めると泉が復活する石 湧き出る水は浄化作用(弱)』

「弱い聖水が湧き出る泉……これ、問題案件……」
「なんつーもんを作るんだよ。俺にもレシピ教えろよ」
「いいけど、セブンまだレベル足りないと思う」

 そうだよな、と俺の言葉に溜息を吐くセブンを放置して、俺はその石を手にルーチェさんの呼び出し札を使った。
 
「呼んだか」

 札を使ったすぐ後に、俺の工房の中にサラさんを伴ったルーチェさんが現れた。
 
「来てくれてありがとうございます」
「いいって。すげえお宝の匂いがプンプンしたからよ」

 そう言ってニヤリと笑うルーチェさんに、早速出来上がった泉を復活させる石を見せた。
 この間入ったシークレットダンジョンで取れた素材を使って作ったことも。

「ほう……枯渇した泉を聖水が出る泉として復活できる石……何やら魔道具代わりにも出来そうなもんが出来上がったな。これ、いくらで売ってくれる?」
「私がこの間一緒に採って来た素材全てっていう対価でもいいわ。魔大陸中央に丁度良く枯れた泉があるのよ。あそこがこの石で復活できれば、国の再建も捗りそう」

 どうかしら、と目を輝かせるサラさんに苦笑しながら、快諾する。
 あの素材がシークレットダンジョンに入らなくてももう一度手に入るなんて、願ってもない。
 交渉はスムーズに成立して、俺は素材をたんまりと手に入れた。
 むしろ、俺が採取した量の約1,5倍はあった。サラさん同じ時間しか採取してなのに早すぎ。見習いたい。

「また出来上がったら売ってくれないか。魔大陸の泉が復活するのはかなり助かるからさ」
「はい、あと追加の浄水石も持ってってください。まだまだ使うんですよね」
「うわ、助かる。魔大陸広すぎるよな。何個売って貰っても足りねえ足りね」
「全部一気に復活させる方が無理ですよ。ここの八倍くらいの広さでしたっけ」
「だよなあ。でも、逸っちまうんだよな」

 無理せず、と付け足しながら浄水石を渡し、対価を貰う。
 ついでに何か素材はないか訊いていると、隣にいたセブンが「あの……」とルーチェさんに声を掛けた。

「もしよければ、俺にも何か錬金素材を売って貰えませんか」
「お! もちろん。見てくか? マック、そっちの部屋で店開いていいか」
「え、逆に嬉しいです。俺も見たい。あ、じゃあ一緒にご飯食べませんか。人が多いと鍋が美味しいから」

 ご飯に誘うと、皆が歓声を上げた。
 錬金釜はしまい込んで、皆でキッチンに移動する。
 ダイニングテーブルにルーチェさんがとっておきの素材を並べていくのを見ながら、俺は鍋の仕込みに入った。
 ルーチェさんの商品のラインナップは相変わらずどこからそんなもん手に入れるんだよとツッコみたくなるような物ばかりで、これを欲しいままに買っていたら破産待ったなし状態だった。
 数点見繕って売ってもらい、商品をしまったところでテーブルに鍋を運ぶ。
 スパイスタップリの辛めの鍋は、ルーチェさんがお気に召したらしく、沢山食べてくれた。

「とりあえず泉が復活したら祝おうぜ」
「今は寂れてるけど、異邦人石工が今魔大陸で活動してくれてるのよ。依頼出しちゃうわ」
「あそうだ。セブン、今度アルの所に来てくれ。頼みたいことがあるんだ」

 最後セブンに声を掛けると、じゃあね、と消えていった二人を見送った。横ではセブンが手を握りしめて「俺もいつかあの人たちに買い取って貰えるような錬金を作る」と決意を新たにしていたので、思わず噴いてしまった。

「だって今貰ったクエスト、錬金術師じゃなくて鍛冶師のクエストだったんだよ。マックほんと凄すぎだろ」

 あの一言は、クエストとなったらしい。
 錬金術師としてのクエストじゃなかったことにがっかりしているセブンが気の毒なって、俺は慰めるため声を掛けた。

「でもセブンは勇者に鍛冶の腕認められたんだろ。そっちもすごいよ。勇者に認められたその腕で俺がめっちゃ強くなる剣とか作って欲しいくらい」
「それは……、ええと、ごめん……」

 無理……と目を伏せるセブンの脳天にチョップを繰り出した俺は、俺が使っても辺境の魔物を倒せるような剣を打つ人は天才以上だよな、と呟き、今度はセブンに笑われた。


しおりを挟む
感想 508

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

処理中です...