これは報われない恋だ。

朝陽天満

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番外編4

第三の神の御使いの欠片を求めて 3

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 歴代の錬金釜持ち主は、特にこれといった共通点はない、らしい。しいて言えば、悪いことに絶対に使わない人。滅茶苦茶ざっくりしている。

 錬金釜で作ったアイテムを売って金を稼ぐ、とかは悪行の内には入らないらしく、その悪いこと、というものもざっくりしている。例えば錬金アイテムで相手を呪うとか、錬金アイテムで敵意ない人を攻撃するとか、対価よりもさらに大きな物を望むとか、錬金アイテムで詐欺をして大金を稼ぐとか。

 錬金釜を使用する資格あり、と判断された人が状況変わって欲に走ると、それに触発されたように錬金釜が暴走するんだそうだ。だから、もし俺が錬金釜を使ってさっき言ったような悪いことをし始めたら、俺が持っている釜はバッチリ暴走するらしい。そして魔王が誕生する。すなわち俺。きっと過去最弱魔王になる自信ある。

 それはもう一つの釜を持つヴィデロさんも同様で、でもヴィデロさんが悪いことをするなんて想像もつかないから、その点は問題なし。でももしヴィデロさんが魔王になったらこっちは史上最強の魔王が誕生する予感。そして、史上最高のかっこいい魔王になると思う。

 

「資格がない人が錬金釜を一人で使ったら、全てのアイテムが失敗作になるんだっけ」

「まず錬金が出来ないんじゃなかったか。魔力を注ぐだろ。その時点で欠片が反発する。ちょっとだけ欠片を貸してくれ。そして離れていろ」



 釜を使えない人はどうなるのか、というのを見せるため、ジャル・ガーさんが獣人の村に行く前に、工房で実験してくれた。

 まず釜に魔力を注いだ時点でボン! と失敗の爆発があった。

 二人で魔力を入れると今度はすんなり入った。

 なるほど。触って貰って魔力を注いで貰った時点でわかるのか。手っ取り早くていいね。

 

「素材とかも持って行った方がいいかと思ったけど、この分だといらなそうですね」

「ああ。その前の段階で使えるかどうか判別されるからな」



 本当に釜一つ持って行けば大丈夫らしい、と聞いて、ちょっとホッとする。どれだけ素材が必要なのかドキドキしていたから。もともと錬金素材って手に入りにくいし、トレ付近には全くないし。エルフの里には沢山あるけれど、錬金釜が暴れていて大変な中素材を根こそぎ貰うようなことをしたら迷惑でしかないし。

 じゃあ行きますか、と温室に向かったら、温室でヴィルさんとクラッシュが寛いでいた。



「やあ、健吾。皆を連れてどこに行くんだ?」



 優雅にガーデンテーブルでお茶を飲んでいたヴィルさんに今起こっていることを説明すると、目を輝かせた。クラッシュも同様に聞き耳を立てている。



「その釜、俺は使えなかったんだよね。前にサラさんが使ってたのを見て、楽しそうだなって思って弄ろうとしたら爆発されてさ」

「爆発! 面白いな! 健吾、ぜひ俺にも一度使わせてくれ!」



 ヴィルさん、目が輝いているよ。

 今までは一度も使ってみたいと言ったことはなかったけれど、実は使ってみたかったらしい。ジョブ関係の物だから弄るのはよくないと思っていたんだって。

 ヴィルさんの前に錬金釜を置くと、ヴィルさんは喜んで釜に触れ、魔力を入れて……。

 釜は無情にもボン! と資格なしの烙印を押した。

 



 ヴィルさんは「残念だ」と言いながらも、楽しそうに笑っていた。



「そういえば弟も釜を手に入れたんだったか。長老様が押さえているということは、時間との勝負なんだろう。弟を巻き込んで二手に分かれよう。俺とクラッシュは冒険者ギルドをある程度回るから、健吾は皆と獣人の村を回ってくれ」

「え、俺も!?」

「天使が手伝ってくれると、とても助かる。エミリさんとの連携もスムーズにいくだろう?」

「母さんはもうヴィルのこと滅茶苦茶信頼してるってば。俺がいなくても一緒だよ」

「頼むよ。一緒にいると心強いんだ」

「……たく、俺も暇じゃないんだよ」

「報酬は弾もう」



 暇じゃないと言いながら、ここで息抜きしていたのは誰だよ、と心の中でツッコみつつ、二人を見送って俺たちも行動を開始した。

 それにしても不覚だった。錬金釜は二つあるんだよね。二手に分かれるって手もあったのか。思いつきもしなかった。

 常設された魔法陣から見慣れた村に跳ぶ。

 ジャル・ガーさんの一声で、村の人たちが広場に集まってくれた。

 ヒイロ師匠とヨシュー師匠が皆を並ばせ、ジャル・ガーさんが順番に釜を触らせる。

 順調に釜はボン、ボン、と煙を上げていった。



「これは容易なことじゃないな……」



 一つ目の村では、誰一人該当者がいなかった。

 少なくとも、数人は該当者が欲しいところらしい。見つかったのが一人だけで、しかも釜と相性が悪かったらまた一から探さないといけないから。しかも一度調べ終わった後だから、該当者が出て来る確率は格段に下がる。

 溜息を吐きながら、次の村に向かう。

 ここでも同じことを繰り返し、またしても一人も該当者が出ず空回りに終わる。

 残るは5つの村。誰か見つかるといいんだけれど。

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