これは報われない恋だ。

朝陽天満

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番外編2

大型イベント来る! 3

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 HARUたちは神殿に三度目の挑戦をするために山裾を進んでいたらしい。

 なんでも、「ダンジョンの中の魔物もポイント換算されるのか」とタクトがふと呟いたことがきっかけで、じゃあ神殿行くか。あわよくば限界突破してくるか。のノリでいたらしい。

 え、あの神殿ってそんな軽い試練だったっけ。かなり大変じゃなかったっけ。満身創痍のセイジさんとかボロボロのヴィデロさんとかギリっギリの状態じゃなかったっけ。クラッシュは毒に侵されてたし。え、そんなノリで行けるの?

 ちょっと遠い目をして三人を見ていると、三人は無邪気に「マックさんも行く?」と訊いていた。ご遠慮します。素材は惜しいけどね。



「俺はちょっと辺境行かないとかな。今日いるかな、長光さん」

「え」

「え!?」

「な、長光……?」



 フレンドリストを開きながら呟くと、三人はぐっと顔を乗り出してきた。

 だってさっき刀刃こぼれしちゃったから。謝り倒して直してもらわないとさすがに自己修正機能追っつかない気がするんだもん。

 名前が白くなっているのを確認して、俺はチャットを開いた。



「え、行くなら、俺らも連れてって欲しいっす」

「もしかしてマック先輩長光のフレだったり……?」

「え、うん」

「う、凄すぎる……『高橋と愉快な仲間たち』ともフレなんだろ……マックさんの人脈……」



 え、やっぱり雄太たちはそんなに有名になっちゃったんだ。ま、トップランカー的な状態になっちゃったしね。それは仕方ないか。目の前で海里さんに憧れてるんだ! と豪語するHARUを見ながら、俺は長光さんにチャットを飛ばした。

 長光さんはすぐに返事をくれて、すぐ直してもらうことになった。ついでに目を輝かせている三人がいることを伝えると、今はポイント稼ぎをしたいからぜひ連れて来てくれ、と逆に言われてしまった。長光さんもポイント貯めてるんだね。

 というわけで、俺は三人と共に辺境に跳んだ。





 長光さんの工房前に跳ぶと、一緒に来た三人が凄い顔で俺を見ていた。

 なんていうか変な人を見る目で。



「なんつーか……マックさんの手の内全部知ったら俺ら悔しくてログインできなくなりそう……」

「転移の魔法陣とか、どこで手に入れるんだよ……見つかりもしねえよ」

「マック先輩だし……最初の時からこんなんだっただろ。未発見のダンジョン見つけたり、目に見えない採取場所を発見してたり」



 だな、うん、と頷きながら変な目を向ける三人に、苦笑しか出てこない。

 俺をどんな人だと思ってるんだろうこの子たち。

 またも遠い目をしながら工房のドアをノックして中に入ると、いつもはがらんとしている店に所狭しと鎧や武器が並んでいた。うわ、長光さんの本気度がそれだけでわかる。



「長光さーん」



 奥に声を掛けると、すぐに奥に繋がるドアが開いた。



「よう、いらっしゃいマック君! 後ろの君たちもようこそ俺の工房へ。早速刀見せてくれないか? どんな魔物を倒したんだ」

「『炎輝石フレイムパイロキシン』をドロップする特大兎です……ちょっと鑑定眼で見えちゃって、諦めきれなくて必死で戦ったんですけど、刀が犠牲に……。ちなみに俺も瀕死になって後ろの中学生三人組に助けられたんですけどね」

「中学生って……あんときは確かに中坊だったけど、俺ら今高3っすよ!」

「えっ……?」



 隼の言葉に、俺の方が戸惑う。あ、そうか。こいつらはアバターを全然変えてないからずっと中学生だと思ってたよ、俺。

 心の中でごめん、と謝っていると、長光さんは違うところに食いついた。



「『炎輝石』……だと? どこで出たんだ? ユニークか? もう一匹見かけなかったか? すげえ欲しい」

「トレの神殿に近い山裾で出たんですけど」

「そうか……すまない、直しは後でもいいか? ちょっと俺、兎探して……って、マック君鑑定眼でドロップ品が見えるって言ったよな……臨時で俺とパーティー組んでくれないか?」

「見える率は半々って感じですけどよければ。でも俺、今刀がボロボロなので聖短剣しか持ってないですよ?」

「魔物は俺が倒すから全然問題ない。いらないドロップ売り払った取り分は50でどうだ。使った回復薬はその都度請求していい。俺も本職は戦闘じゃないからポーションにお世話になりまくると思うし」

「パーティー組むならそういうのは戦闘できない分アイテム出して当たり前なので、お金なんて貰えないですよ。って、『炎輝石』もしかして滅茶苦茶欲しいんですか?」

「欲しい。ガンツに頼まれた鎧、『炎輝石』があるとより完璧に仕上がるんだ」

「え、じゃあ、俺がゲットしたやつ、買います?」

「あれは有用すぎるから、マック君も欲しいと思って瀕死にまでなったんだろう」



 長光さんの察しが良すぎる答えに、俺は苦笑した。確かにそうなんだけど、何かに使う、っていう構想まではなかったっていうか。

 そして、ん、と長光さんは後ろの三人に目を向けた。



「ごめんな、君たちを無視する形になって。素材のことになると他に目がいかなくなってな」

「生産職なら仕方ないっす。でも、俺らは長光さんにこうやって会えただけでもう胸いっぱいなんで、全然問題ないです」



 タクトがそういうと、他の二人もうんうん頷いた。

 長光さんに良ければ自己紹介してくれないか、という言葉に、三人は感激したように元気よく「はい!」と声を上げた。



「『サンシーカー』一応リーダー賢戦士セイジセイバーのHARUです」

「一応サブリーダーの風神魔導師ウインドマスタータクトDXです」

「じゃんけんで負けて役職のないバーサーカーのはやぶさです」



 横で聞いてて、俺は初めて三人のパーティー名を知った。

 『サンシーカー』って名前、聞いたことあるような気がする。それは長光さんもそうだったらしく、目を輝かせた。



「あれか。君らが噂の魔大陸シーカー! 未発見のダンジョン踏破を目標にしてるっていうパーティーか」

「あ、はい。ダンジョン見つけるのが楽しすぎて。魔大陸ってまだ未踏破の場所多いじゃないですか。面白過ぎてやめられないっす。ちなみに『サンシーカー』のサンの部分は俺ら三人ってことで、別に太陽がどうのとかそういうことじゃないですから。数字だと収まり悪いなってカタカナにしただけなんで」

「なるほど!」



 長光さんは三人とフレンド登録をし、三人も目を輝かせながら「光栄です!」とフレンド登録していた。



「もし前衛がいないなら、俺らが前衛やりましょうか。一応索敵系マスターしたんで奇襲されることはないし、剣も限界突破させたんで弱くはないつもりです」



 HARUの提案で、俺と長光さん、そして『サンシーカー』の三人が臨時でパーティーを組むことになった。



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