これは報われない恋だ。

朝陽天満

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767、二度目の初夜

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 鳥居をくぐり、無事お式が終わった。

 皆で近くのレストランに移動して貸し切りパーティーをして、沢山食べて飲んで騒いで解散となった。

 スーツとドレスで来た雄太たちは、その恰好のまま少しだけデートをするらしく、腕を組んで帰っていった。

 ヴィルさんたちとお祖母さんたちは、タクシーでホテルに移動。俺たちは、衣装やさんに行って衣装を返さないといけないんだけど、やっぱりうちの親が送ってくれることになった。正直大分疲れてたからホントありがたい。



 衣装を着替えて普段着になったところで、両親から夕食の誘いがあったので、喜んで付いていくことにした俺たち。

 車で実家まで移動すると、久しぶりに自分の家に入った。



「さっきのレストラン、とても美味しかったけれどお昼だからかこってりした味付けが多かったじゃない。どうしてもさっぱりが食べたかったのよね。健吾、手伝って」



 母さんにエプロンを渡されて、苦笑しながら席を立つと、父さんは戸棚から酒瓶と洒落たグラスを取り出していた。飲む気満々だね。じゃあ、つまみになるようなものを作ろうか。

 二人をリビングに放置して、母さんとキッチンに立つ。

 並んで作業していると、母さんが「あーあ」と溜め息を吐いた。



「本当に健吾が結婚しちゃったのね。袴で神社内を歩く姿を見て、ようやく実感したわよ。父さんもそう思ったみたいで始まる前から涙目よ。娘じゃないんだから、なんて言って宥めてたけど、ダメね、母さんもちょっとだけ寂しいわ」

「って言っても、住んでるところはすぐ近くだし、遊びに来るし。ご飯たかりに来るかもしれないよ」

「いいえ、健吾は来ないわよ。呼ばない限り。だって健吾、今だってなかなか来てくれないし。それに本当はヴィデロ君の国に行く気満々だったでしょ」

「……うん、まあ」

「ほらね。母さんたちもそれはうすうす感じてたから、覚悟はしてたんだけどね。あんたたちが逆にこっちに来てくれて嬉しいわ」



 そっか。と母さんの言葉を聞いて、俺は作業の手を止めた。

 俺がずっと考えてたこと、なんていうか、親には筒抜けだったんだ。全然違う地に行こうとしてた事とか、その場合もう会えないってこととか。その考えはヴィデロさんがこっちに来てくれた今でもなんだか心の奥底に覚悟として残ってる気してて。

 俺の帰る場所はヴィデロさんの隣、っていう気持ちがあるから、ここに来てももう自分の居場所はないんじゃないかって。

 そう思ってた俺は、両親に対してかなり薄情だったんだなと、気付いた。

 こんなにも俺たちを受け入れてくれて、待っていてくれて、ヴィデロさんごと愛情で包んでくれるようなそんな空気が、この家にあることに、今更気付くなんて。



「父さんが先に泣き出したから思わず笑っちゃったけど」

「母さん」



 母さんは包丁をまな板の上に置くと、サッと手を洗ってタオルで拭いた後、俺を抱き締めた。

 俺も慌てて包丁を置いて、躊躇いがちに腕を動かす。

 こんな風に母さんに抱きしめてもらったの、いつくらいまでだったっけ。小さい頃は抱っこされてたと思うけど、小学校くらいからはこんなこと恥ずかしくてしてなかった気がする。

 俺より大分小さい母さんは、それでも俺にとってはとても大きな存在の母さんで。

 ヴィデロさんのお陰で母さんたちと別れることなく、一緒にいられるようになったんだな、なんて、向こうで父さんと楽しそうに飲んでるヴィデロさんをさらに好きになった。



「母さん大好き」

「何よ改まって。知ってるわよ。健吾顔に出るもの」



 ポンポン、と背中をあやす様に叩くと、母さんは離れていって、また手を動かし始めた。



「そうして健吾が俺に回復薬を飲ませてくれたんです。それでもうずっと好きだったことを伝えてしまって」

「そうかそうか。ヴィデロ君もADOをやってるんだったもんな。そのゲーム内恋愛っていうのは、あれかな、主流になりつつあるのか? 15歳から出来るんだなんて目をキラキラさせてた健吾が凄く楽しそうにしているゲームだもんな。面白いんだろうなあ」

「お義父さんくらいの歳の人たちも沢山ログインしていますよ」

「ヴィデロ君もIDは持ってるんだろ。最初はどんな感じだった?」

「最初は……まるで夢でも見ている様でした。ベッドの上に寝たはずなのに、目に入るのは青空と街並み。手足は自由に動き、普段と全く変わりない。これが本当に寝たままの俺なのかってしばらく呆然としてしまいました」

「そうかそうか。最初は何をしたんだ? 健吾は確か街の外に出て薬草を積んだとか、魔物に体力を削られて死に戻りをしたとか、夜にいちいち報告してくれて」

「最初は……身体が本当に通常通りに動くか少し確認して、その後兄と共に腕試しをしました」



 つまみをお盆に載せてリビングに持っていくと、父さんが熱心にヴィデロさんにADOのことを聞いていた。

 初めてのログインとか。それ結構最近のことだよね。

 それまではその街に住んでたしね。



「そうかあ。ゲーム内恋愛なんて今時すぎて長続きするのか心配だったけれど、ヴィデロ君たちなら大丈夫そうで安心だよ」

「もちろん、これから先はケンゴを一生大事にしますし、愛しています」

「うん……あれだな。息子の伴侶から『愛してる』とか聞くと、親としては恥ずかしいやら困るやらで複雑だな」



 ハハハ、なんて困ったように笑った父さんの前に刺身の皿を置き、次いでヴィデロさんの前に置くと、空になったトレイをテーブルの隅に置いて、俺はヴィデロさんに抱き着いた。



「俺も大好き。愛してる」

「ケンゴ」



 父さんの前でだけど、出し惜しみしない。ちょっとだけ恥ずかしいけど。父さんは俺たち二人を困惑の顔で見て、息子たちの明るい行く末を祝ったらいいのかちょっとは両親の前なんだから恥じらいを持ってくれと注意したらいいのか、と溜め息を吐いて、俺たちの笑いを誘った。







 ゆっくりと時間をかけて歩いて帰ってきた俺たち。

 佐久間さんは既に帰って来ていて、ヴィルさんはお祖父さんお祖母さんと共にホテルに泊まると教えてくれた。

 ぜひヴィデロさんも顔を出すようにホテルの場所のメモ用紙を貰ったけれど、ヴィデロさんは首を横に振った。

 すぐさまヴィルさんに連絡を入れて、合流は明日にする、と伝えていた。



「だって俺たちの初夜、だからな」



 部屋に戻ると、ヴィデロさんは口角を上げて、耳元でそう囁いた。

 そうだね。今日は結婚式だったんだもん。初夜だよね。





 二人でお風呂に入って、二人でお互いの身体を拭いて、ヴィデロさんは俺を抱き上げると、そのまま寝室に向かった。

 既に反応してる俺たちの物が擦れるのが気恥ずかしくて、気持ちいい。

 軽く触れては離れる唇が名残惜しくて、ついつい追ってしまう。

 ベッドに転がされ、ヴィデロさんに見下ろされると、その身体つきのかっこよさと綺麗さに思わずため息が漏れる。



「ケンゴ、すごく可愛い顔してる……」

「ヴィデロさんは、すごく、かっこいい。見惚れちゃう」

「そう言ってもらえると、この顔に生まれてよかったと思うよ」



 ヴィデロさんは顔だけじゃなくて、身体も、声も、性格も、その優しさも全部好き。

 そう訴えようと開いた口は、ヴィデロさんの口によって塞がれた。



「ふ……っ」



 絡まり合う舌に、腰がぞくぞくする。

 俺の身体を愛おし気に撫でるヴィデロさんに負けずに、俺もヴィデロさんの身体を手の平で堪能する。

 たまに擦れるお互いのモノが、触れる度に気持ちよくて、鼻にかかった声が漏れる。じわっと熱い何かが零れ出て、俺とヴィデロさんのモノを濡らしていく。

 まだ触れてもいないのにイきそう。

 この甘い雰囲気と、ヴィデロさんの気持ちよさそうな表情が、更に俺の気持ちを煽っていく。

 ローションを纏った指が俺の中に挿ってくると、俺はたまらず少しだけイった。持たなかった。

 今日はなんだか色々考えさせられて、そのせいか、ヴィデロさんの肌がとても安心して、触れられることが嬉しくて、それが、たがを外した。





 もっと、ずっとそう言い続けてたと思う。貪欲にヴィデロさんのヴィデロさんを奥まで呑み込んで、それでもまだまだ足りなくて。

 沢山出してもう俺のブツは力をなくしてるのに、身体はまだ気持ちいいと痙攣する。

 ゆっくりと動くヴィデロさんの熱が、俺のほんの少しだけ残っていた理性まで溶かしていく。

 向かい合って口をむさぼり合いながら、自分で腰を動かす。腰を持ち上げる度に仰け反りそうになる身体は、ヴィデロさんの腕がしっかりと支えてくれて、俺の身体を下に引き戻す。

 奥をこつんとされるたびに奥がギュッとヴィデロさんのヴィデロさんを締め付けて、間近にあるヴィデロさんの口から吐息が洩れる。

 俺の動きがもどかしかったのか、いつしか太腿の下に腕が周り、足が浮き上がった状態で、身体を揺すられた。ずっと俺は自分でもびっくりするほど甘い声を出し続けている。



「ふか、深い……っ」

「もっと、だろ……っ」

「ん、もっと、いっぱい……っ、熱いのが」



 ううう、と泣き声のような喘ぎ声を上げて下腹の痙攣と共に、透明な体液をトロトロと零す。もう出ないけれど、気持ちいいのが止まらない。身体はずっとイき続けてる気がする。



「ケンゴ……」



 優しいけれど、どこか苦しそうなヴィデロさんの声が凄くエロい。

 それが耳から入って、俺はまたも中を痙攣させた。

 動くたびに聞こえる、グチュ、グチュ、という水音は、俺が零した体液の音か足されるローションか。



「あ……っは、あぁあ……」



 言葉にならない嬌声に、ヴィデロさんの吐息が重なる。

 ぐっと身体を引き寄せられて、最奥に熱が放出される。

 ずるり、とヴィデロさんが抜けていったと同時に、俺は力尽きて後ろ向きにベッドに倒れ込んだ。

 肩で息をしながらベッドの柔らかさを堪能していると、またしてもずるっと抜ける感覚がした。



「……ごめん、ケンゴ。何度か同じゴムに出したら、抜くときに外れた……」



 目に毒すぎる……と、火照った顔を逸らしたヴィデロさんは、周りまで精液まみれになっていたゴムをそれでもしばってティッシュに包むと、そっとゴミ箱に捨てた。

 確かに、お尻あたりが凄くドロドロな感じがするな、と何気なく手を寄せると、垂れたらしい結構な量の体液が指に絡んだ。

 これだけの量、中に出されたらどれだけ満たされるんだろう、なんてぼんやりと考えていると、眉をギュッと寄せたヴィデロさんにすぐその手を拭われてしまった。



「これ以上呷らないでくれ……流石にこれ以上は明日に障るだろ」

「……あ、そうだね……明日は、お祖父さんと、お祖母さんに会いに……」



 スタミナが全然戻ってないせいか、あんまり舌が回らない。

 ケンゴも絶対に連れて来いってヴィルさんに釘を刺されたんだってヴィデロさんはちょっと苦い顔で教えてくれた。

 それでも止まらなかったって。



「嬉しい」

「そこで喜ぶな」

「だってそれだけ俺を抱きたいって思ってくれてるってことじゃん。嬉しいに決まってる」



 全く、と苦い顔を苦笑に変えたヴィデロさんは、もう一度俺に覆いかぶさって来て、キスをくれた。

 もうスタミナがないけど、もう一回くらい拙い誘惑してもいいかな。まだまだヴィデロさんの肌を感じていたいんだ。

 俺は半分くらいしか開かない瞼を必死で持ち上げて、ヴィデロさんの素敵な素肌に腕を伸ばした。



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