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741、腕の中の温もり
しおりを挟む存在を確かめ合う様に、俺たちは夜遅くまで愛し合った。
身体にもたらされる熱と快感と、何よりその素肌の感触が、ヴィデロさんがこんなに近くにいるんだってことを感じさせてくれて、俺は不覚にも涙をこぼしてしまった。
ヴィデロさんも泣きそうな顔をしていたから、きっと同じ気持ちで愛し合ったんだと思う。
存在自体を感じるために。愛し合うって、ただ気持ちいいことをするってだけじゃなくて、色んな意味があるんだな、なんて、今更ながら実感した。
「ずっとこうして一緒にいられると思ってたんだ」
ヴィデロさんの素敵な腕枕でベッドに転がりながら、俺がポツンと零すと、ヴィデロさんが優しく俺の頭を撫でる。
「実は俺もそう思ってた。こっちに来ればずっとケンゴといられると思ってた。でも」
ちゅ、と俺のおでこにキスをして、ヴィデロさんが切なげに溜息を吐いた。
「世の中は、あらゆることが起こりえるのが当たり前だから。今回みたいに界が離れてしまうこともあれば、俺がこっちに来れたように界を跨げることもある。何かの拍子に命を落としてしまう場合もある。だから、ケンゴ」
俺の首の下にある腕が曲がって、俺の頭を抱き込む。
俺もヴィデロさんの素肌に腕を回して、より体を密着させた。
「出来る限り、一緒にいよう。この世界でも、俺と婚姻の儀を受けて欲しい」
「もちろん。俺も出来る限りヴィデロさんと一緒にいる。今回みたいなことが起きたら、一緒に乗り越えようよ」
身体を少し起こして、ヴィデロさんの胸の上に乗り上げる。そこからぐいっと身体を伸ばして、小さくチュッとキスすると、ヴィデロさんが俺の腰を捕まえて、自分の身体の上に俺の身体を乗せてしまった。
筋肉ベッドだ。なんて贅沢。最高。
「ケンゴ、顔が蕩けてる」
「だって。ヴィデロさんの上に乗るってすっごく贅沢」
「贅沢ってなんだよ」
俺の言葉にヴィデロさんが声を出して笑ったので、俺もつられて笑う。
「まだ寝れないか? 疲れてるだろ」
「大丈夫。昨日はしっかり寝ちゃったし。ヴィデロさんこそ、寝た?」
「俺は三日くらい寝なくても平気だから」
「寝てないんじゃん」
「兄に少しくらい寝ろって言われたんだが、寝れなかったんだ……あんな状況で寝れたケンゴは本当に心が強いな」
「我ながら神経図太くてびっくりだよね。でもさ、鳥がいて。あの子がいたらなんだか怖いのもなくなったんだ」
最初はボロボロだった鳥の話をすると、ヴィデロさんが少しだけ眉を下げて、そうか、と一言つぶやいた。
「ヴィデロさんの水魔法の水で元気になったんだよ。追加の水、ありがとう。何でわかったの?」
「それは、目の前にコロンと空の葉のコップが置かれたら、もっと水が欲しいのかと思うだろ。ケンゴが必要としてるんじゃないかと思ったから、水で満たしたんだ」
「必要だった。俺がってより鳥がだったんだけど。もしかしたら、鳥はヴィデロさんが見えてたのかもしれない。すぐ近くにいたんだなって思って。あのコップのすぐ近くに俺もいたんだよ」
「水魔法覚えて正解だった。スキルだと割り切ったら、割と何でもできるようになるんだから、異邦人というのは凄いな。ケンゴの役に立ったなら、覚えがいがあるってもんだ」
「そういえばヴィデロさん、前に水魔法はからっきしだって言ってたよね」
「ああ。適性はないんだ。が、異邦人として向こうに渡ったら、適性がなくてもある程度は覚えられることに気付いてな。兄に叩き込まれたんだ。何かあった時にスキルは役に立つって」
「なるほどヴィルさんが……納得」
ヴィデロさんは仕事としてログインし始めてからしばらくの間は、スキル取得に走らされたらしい。
ある程度の魔法を使えるようになって、剣と槍のスキルもさらに上位を取得して、古代魔道語もヴィルさん経由でクラッシュに叩き込まれたらしい。クラッシュは嬉々として「この時を待ってた!」とばかりにヴィデロさんに教え込んだんだとか。二人の先生に絞られるヴィデロさんか……。ずるい。俺もその場にいて一緒に授業受けたかった。でもきっとヴィデロさんのことだから、すぐにマスターするんだよね。アリッサさんの頭脳は余すところなく子供二人に受け継がれてるし。ヴィデロさんかっこいい。
そんなことを思っていると、腰を抑え込んでいた手が下に移動していた。
ぬるりと指が中に入って来て、ビクッとなって思考が停止した。
「俺の上にいるのに、俺以外の人のことを考えるのはダメ」
「ヴィデロさんのことを考えてたんだよ」
「本当か? すごく上の空な顔をしてたぞ」
「うん。ヴィデロさんと一緒に勉強したら、楽しいだろうなって思ってた。でも俺はあんまり頭よくないから、すぐに置いていかれるだろうけど」
「そんなことないだろ。ケンゴは何でも出来るじゃないか」
「出来ないことの方が多いよ。戦闘出来ないし弱いし」
「そこは俺がカバーすればいいだけの話だろ」
ヴィデロさんはそんな嬉しいことを言ってくれてるのに、挿ってくる指がヴィデロさんの言葉に集中させてくれない。
埋まってる、指が埋まってるから……。
「あっ」
いいところをかすめた指に思わず声を上げると、口を塞がれた。
舌を絡められて、中を弄られて、二人の身体の間に挟められた俺のブツが硬くなる。これ、反応してるの一発でバレるやつ。
恥ずかしい、と思いながらも、さっきも散々出したはずのそこが元気になっていく。
クチクチとやらしい音をさせながら俺の中を掻き混ぜる指に、音を上げる。
「待って、ヴィデロさん、そこ、したくなる、から……っ」
「俺もそう思って、いたずらしてる」
「でも、寝てないんじゃ……っ、休めないっ……んん」
「言っただろ。三日くらい寝なくても平気だって。朝までケンゴを愛しても、まだまだ大丈夫」
「あああヴィデロさん強いいっかっこいいああ待ってそこだめ……っ」
びくびくと腰が揺れる。
お腹の奥がキュっとなって、そこから熱が沸き上がっていく。
「指、指抜いて……! ああ、あ、や」
びくびくしながらヴィデロさんの手を引っ張ると、簡単に指を抜いてくれたので、身体を起こして、ヴィデロさんの熱源を手で探った。
腰を上げて、硬くなってるヴィデロさんのヴィデロさんを自分からあてがう。
「まて、ケンゴ、まだ何もつけてない……っ」
さっきまでも散々受け入れていたそこは、今もまだ蕩けていて、ヴィデロさんの制止も聞かずに腰を落としていく。
ヴィデロさんの手にはゴムのパッケージが握られていたけれど、だめ、我慢できなかった。
「んんん……っ」
ずるりと中を熱い物が擦る。
「あ、ああ、熱……っ」
生の感触に、俺は一瞬で持ってかれた。ゴムをしててもしてなくてもそんなに変りないと思ってた。けど、全然違った。
ヴィデロさんも、俺の下で必死に息を詰めてるから、ちゃんと気持ちいいらしい。
そのまま腰を振って、振られて、さっきまでの行為とはまた違った熱に浮かされながら、俺たちは空が白み始めるまで熱を分け合った。
二人ともようやく満足してシャワーを浴びに行く頃には、俺は疲労困憊していて、歩くのもやっとだった。
力強いヴィデロさんの腕に抱きかかえられながら浴室に向かいながら、しっかりとした足取りに、三日寝なくても大丈夫、というヴィデロさんの言葉は正しかったことを実感し、そんなヴィデロさんかっこいいなんてうっとりしている間に、身体がさっぱりした。中を洗うときに変な声を出しちゃったのは気のせい気のせい。流石にお風呂場でもう一回なんて体力は残ってないのを知ってたからか、俺の変な声を聴いてもヴィデロさんは洗うだけで終わってくれた。それともヴィデロさんも実は精が尽き果ててたとか。結構沢山足の間から零れてって……うん、思い出すのはやめよう。身体が火照る。
ヴィデロさんと共にベッドに横になると、今度こそ猛烈な眠気が押し寄せてきた。
身体をくっつけて、睡眠欲に身を任せる。背中を優しく撫でるヴィデロさんの手が凄く心地いい。
大好き。
眠気と戦いながらそう思っていると、ヴィデロさんの「俺も」という声が聞こえたような気がした。
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