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699、この温もりが本当に幸せで
しおりを挟む少しずつ少しずつヴィデロさんが俺の中に挿ってくる。
息が詰まって痛くて苦しくて、思わずヴィデロさんの背中に回した腕に力を入れると、ヴィデロさんが俺の顔を覗き込んできた。
「……やめるか?」
声を出すと呻きそうで、俺はただ首を横に振る。
こんなにギチギチなんだ、なんて、ミシミシする下半身を誤魔化しながら、詰めていた息を吐く。
ローションがヌルヌルだからもう少し簡単に挿ると思ってたけど、ちょっと甘かった。
それでも。
「……もっと」
抜こうとしないように、俺は足をヴィデロさんの身体に絡めた。
まだまだほんの少ししか受け入れてないのに、早く欲しいという意に反して身体がこわばる。
宥める様に俺の頭を、頬を大きな手の平で撫でるヴィデロさんは、進めることも抜くこともできなくてちょっと困った顔をしていた。
「目……涙溜まってる。痛いんだろ」
「これは……っ、嬉し涙」
「ケンゴ……」
実際にはヴィデロさんのヴィデロさんがあるところに心臓があるみたいにそこがどくどくと脈打ってる気がするんだけど、ここで泣き言を言ったら男が廃るし、実際に嬉しいから、俺はキスをせがんだ。
「頑固だな。これからはいつだってこうやって抱き合えるのに……」
ちゅ、と唇を啄ばみながら、ヴィデロさんが口調の割には愛し気な眼つきで俺を間近で見下ろす。
その目が好き。でも、俺で気持ちよくなって蕩けるような顔も大好きだから。
ぐ、と足に力を入れて、ヴィデロさんの腰を引き寄せる。そうすると、少しだけまたヴィデロさんが奥に挿った。
ヴィデロさんが優しく俺の腕を外して、身を起こす。さらにローションを付け足して、まだまだ残ってる自分のモノと俺のそこに優しく塗ると、じわっとそこが熱くなった。やんわりとヴィデロさんの手のひらが俺の柔らかい物を包み込んで、弄り始める。
「あ」
直接的な刺激に、ピクッと身体が跳ねた。
違和感はまだまだ凄いけど、前に感じる直接の刺激の方が強くて、腰が痺れる。
ヴィデロさんの手の中で、俺のブツはまた硬くなっていくのが自分でわかる。
執拗に、でも優しく扱かれて、俺は無意識に声を漏らしていた。
「あ……っ、すご、まって……そんな、こすったら」
「擦ったら……?」
「気持ちよくなる、から……っ、ん」
「じゃあ、もっと擦る」
んんん、とくぐもった声を漏らすと、ヴィデロさんの手の動きが少しだけ強引になる。
あ、なんか、気持ちいい。
ほわ、と腰にくる気持ちよさを感じていると、また少しヴィデロさんのヴィデロさんが奥に挿った。
今度はそんなに痛くなかった。それよりも前の刺激が良すぎてダメだった。
今のうちに全部挿れて欲しい。
「いま、の……して。もっと奥まで」
痛いって感じないうちに。
ヴィデロさんを見上げると、ヴィデロさんは煽るなよ、と眉根をギュッと寄せた。
煽ってるわけじゃなくて、ただただ、あの一体化した様な二人で幸せを共有しているような感覚を味わいたいだけ。
顔のすぐ近くで自分の身体を支えているヴィデロさんの腕に、唇を寄せてチュッとキスすると、く、とヴィデロさんの口から声が漏れた。そして、綺麗な深緑色の瞳が瞼の下に隠された。
俺のモノを握っていたヴィデロさんの手が、俺の太腿に移動する。俺がキスした腕も。
足をぐっと開かれて、ぐぐぐ、と一気にヴィデロさんのヴィデロさんが進んできた。
「あ……っ!」
奥にヴィデロさんを感じて、背中が反る。
ちゃんと、最後まで。
ヴィデロさんの首から外されてどうしていいか分からなかった手を、腹に添える。そこから感触はわからなかったけど、ちゃんと、俺の中に。
マックの時は散々愛し合ったのに。健吾として愛し合ってるってだけで、気持ちはすごく違う。
はっきり言って気持ちいいかどうかはわからないし苦しいし、ずきずきと痛いんだけど、これだけは言える。
嬉しい。
じわ、と目頭が熱くなった。
「……っ、ケンゴ、ごめん、痛かったか!?」
焦ったようなヴィデロさんの声が降って来たので、俺は首を振った。
「正真正銘……嬉し泣き、だから……っ」
ちゃんと愛し合えるのが嬉しい。
ヴィデロさんといられるのが嬉しい。
一緒にいるだけで嬉しいんだけど、こうして愛し合えるのが本当に幸せだなって思う。ヴィデロさんを置いてログアウトするのが嫌だったし、ログインした時の俺が単なるアバターなのもちょっと胸に引っかかってた。だからって、雄太みたいに自分と同じ顔のアバターを作ったところであんまり意味ないし。
こうして、ログインしてない、アバターじゃない、ちゃんと自分の身体で愛し合えるっていうのは、俺の夢だったんだ。
「嬉しい……」
熱を感じるお腹を手の平で撫でながら、俺は思ったままを口にした。
俺を見下ろすヴィデロさんの口が「ケンゴ」と動く。声は出てなかったけど、口の動きで、俺の名前を呼んでるのがわかった。その口をぐっと閉じたヴィデロさんは、身を倒して、俺の背中を抱き締めた。
肌と肌が密着する。じわじわと体温の温もりが伝わって、それだけで満ち足りた気分になった。
「ケンゴ、ケンゴ……」
「ヴィデロさ……」
「愛してる。ずっと一緒にいてくれ。愛してる」
「俺も。ずっと一緒にいたい」
ギュウッと抱きしめられて、俺も抱き締め返す。唇を重ねて、ディープキスをする。舌が絡められると、気持ちよさで、挿ったままの状態で動いてないヴィデロさんのヴィデロさんをギュと締め付けてしまうのが、自分でもわかった。
俺の違和感が慣れるまで、ヴィデロさんはひたすらキスを繰り返した。密着した身体はそのままに。包み込まれるような、抱き込まれるようなこの体勢はすごくいいと思う。
ひとしきりキスをしたヴィデロさんは、俺に負けず劣らず潤んだ瞳をして、耳元で「動いていいか」と確認してきた。
頷くと、ヴィデロさんのヴィデロさんがゆっくりと抜けて行く。その抜ける感覚に慣れなくて背中を仰け反らせると、宥めるようなキスが降ってくる。
ヴィデロさんの身体も俺の身体もしっとりと汗をかいていて、時折零れるヴィデロさんの吐息が、ずいぶん我慢させてるんだと気付かせてくれる。それでもなお俺を気遣ってゆっくり動いてくれるのが嬉しい。けど、ヴィデロさんにも気持ちよくなって欲しいなって思う。
そのことを声に出すと、ヴィデロさんは苦笑した後、吐息と共に「よすぎて動けないんだよ」と囁いた。
その後も俺を気遣ってなのか、ゆっくりとした動きしかしなかったせいか、結局ヴィデロさんに着けられたゴムの中には何も出てなかった。
既に抜かれた、ヴィデロさんが挿ってたところは未だに何かが挟まってるような、まだヴィデロさんが挿ってるような感じが持続して、動くたびにジン、と何かが沸き上がってくるけど、俺も一度もイけなかった。
二人で苦笑して、キスをして、服を身に着けようとして、ヴィデロさんの服が脱衣所にあることに気付いた。
立ち上がろうとすると、またしてもジン、とお尻が変な感じになる。
思わず身動ぎすると、ヴィデロさんが心配そうに俺を支えてくれた。
「無理させたか?」
「ううん、なんか、なんかまだ中に何かがあるみたいな感じがするだけだから、大丈夫」
それでもまだぽっかりと開いてしまってるような気がして手をお尻に伸ばしてみる。
よかった、ちゃんと閉まってる、と呟くと、ヴィデロさんが変な声を上げた。
口を押さえて、呻く。
「ケンゴ……何とか必死でセーブしてるんだからそんな可愛い仕草はやめてくれ……っ」
「か、かわ……?」
待って、自分のお尻を確認する仕草のどこが可愛いのかかなり疑問なんだけど!
思わずカッと顔を赤くすると、ヴィデロさんが強引に俺を抱き締めてきた。
思わずちらりと視線を下に向けると、未だにヴィデロさんのヴィデロさんは元気いっぱい。見る限りガチガチそうなモノが俺たちの身体の間で存在を主張していた。
「俺が……ちゃんと確認するから。そういう仕草はダメだ。このまま押し倒してケンゴを犯しそうだから……っ!」
「確認……って、ヴィデロさんが、俺のお尻を」
言った瞬間またもうぐう、とヴィデロさんから変な呻きが洩れた。
「……無理やりしたくないから、そろそろ服を着てくれ……」
「ワイルドなヴィデロさんも最高だと思うけど」
「ケンゴの身体を思いやれない俺なんて最低だよ……」
「じゃあ、毎日して、俺がマックの時くらい慣れたらヴィデロさんもちゃんと気持ちよくなって欲しいんだけど。あ、そうだ。じゃあ、口で」
言葉を続けようとした瞬間、口でふさがれた。まだヴィデロさん中途半端だから、口でしようと思ったのに。
口の中をちょっとだけ荒々しく掻き回されて、そっと伸ばされたヴィデロさんの手に俺のブツを握られて、なぜか俺の方が先にイかされてしまった。
俺が出したのを確認したヴィデロさんは、ワイルドな顔つきのまま、そっと俺から離れて行った。
「シャワーを借りるな。ケンゴはもう少し休んでろよ」
そう言うと、ヴィデロさんはそっと俺の身体を毛布で包み込んで、部屋を出ていった。
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