これは報われない恋だ。

朝陽天満

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653、優しい詰問

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「マック、俺はもうちゃんと心構えしてる。だから、そうやっていうのを躊躇わないでくれ」

「ヴィデロさん……」



 頬に、鼻に、瞼に軽いキスを繰り返されながら、俺はヴィデロさんの言葉を受け止めていた。

 心構え、させちゃったんだ。

 だったら、変に隠すよりももうきっぱり言っちゃった方がいいのかな。

 俺は閉じていた瞼をそっと開いて、間近にあるヴィデロさんの綺麗な瞳を覗き込んだ。



「もうすぐ……魔王の封印を解いて、サラさんを救いに行くかもしれない」

「そうか」

「俺も、行かないといけなくて、サラさんを復活させられるのが、俺が作った蘇生薬で、それは誰かに託すとか出来なくて」



 少しだけ瞳が揺れてる気がする。でもヴィデロさんは不安な顔はしてなくて。

 少しだけ微笑んでいた。



「マックは……俺の誇りだ」

「ヴィデロさん」

「マックが魔王との戦いに行かないといけないっていうのは、なんとなくはわかってたんだ」



 キスを止めたヴィデロさんは、今度は優しく俺の身体に腕を回して、胸元に俺を引き寄せた。



「マックは異邦人だから、その身体を引き裂かれてもまた復活するっていうのはわかってる。でも、目の前でいざその姿を見せつけられると、本当にマックは復活してくるのか、俺たちみたいに身体がそのままそこにとどまって息絶えていくんじゃないか、そんなことをいつもいつも考えてしまうんだ。この世界はあまりにも死が身近すぎて」

「うん……俺も、怖い」

「だからこそ、俺のカバンはいつでもマックの愛情で一杯なんだな」



 俺が作ったアイテムが、ヴィデロさんには愛情に見えてるのかな、なんてヴィデロさんの腕の中のぬくもりを堪能しながら思う。あんなアイテムじゃ足りない。もっと絶対的な何かを、ヴィデロさんにあげたいと思う。例えば、もう魔王に脅かされない穏やかな国とか。俺だけじゃ絶対に無理だけど、でも俺でもその一角を担うことは出来るんだ。



「止めないでね」

「止めない。そして、俺もようやく決心した」

「決心……?」



 胸元に顔をギュッとされてるのでヴィデロさんの顔を見ることはできないけど、普段よりもヴィデロさんの鼓動が少しだけ早い気がする。

 決心って、何。

 何かをしようとしてるの?



「それは俺に、言えること……?」



 ドキドキしながら訊くと、ヴィデロさんがすう、と大きく息を吸った。ふ、と息を吐いたことで、少しだけヴィデロさんの心臓が落ち着く。



「もしも、マックが絶対に否定しないで俺を信じてくれるなら、言える。でも、それはやめろとか、ダメ、とか言うようだったら、言えない。心が揺らぐから」

「え……」

「前に、レガロさんとジャル・ガーにそのことに関して助言を貰ったんだ。二人とも、しっかりと目標を持って、強い意志がないと無理だと言っていた。もしかしたら取り返しのつかないことになるかもしれない、とも。でも、もし本気だったら、迷うことはないと。まっすぐ進めと言われた。俺の心が迷うのはきっと、マックからの否定の言葉だ。だから、マックが俺がしようとしていることを訊いて否定をしそうなら、言えない」



 絶対に言わない、とは言えなかった。だって、魔大陸についていくなんて言われたら否定しか出来ないから。でもそれはヴィデロさんも知ってるからきっとそうじゃない。どんな内容か全然想像もつかないけれど、魔大陸に行くわけじゃない、んだろうな。



「返事は後でもいい。今は、マックを感じたい。いいか? 俺と愛し合って、俺を感じて、そして、俺を、信じて……きっとこんな抽象的なことを言われてもすぐには答えられないだろうから。少し考えて。答えは、後で」



 何も言えないまま頷くと、ヴィデロさんは優しく俺をベッドに押し倒した。







 下半身むき出しでベッドに横から寝かされた俺は、ベッドサイドに投げ出した足の間にいるヴィデロさんに、俺のものを咥えられている。

 取り出した潤滑香油で後ろも解されながら、前も可愛がられると、さっきヴィデロさんに言われた言葉が頭から飛びそうで、必死で歯を食いしばる。

 こんな状態で考えろなんて、無理。

 引っ切り無しに感じる快感に、俺は必死でヴィデロさんの頭を押さえた。俺に押さえつけられて上下ストロークの出来なくなったヴィデロさんは、今度は舌で執拗に愛撫し始めた。



「あ、ああ! 待って、それもダメ、だめ! イく……っ! 吸わないで……っ、指、動かさないでぇ……っ」



 舐られて指でいいところを擦られて、最後頭の所をギュッと吸われて、俺はヴィデロさんの口の中に体液を飛ばした。

 それを最後まで舐めとる様に舌を動かしたヴィデロさんは、震える俺の腰をひと撫でして、指と口から俺の身体を解放した。

 じわじわする身体を持て余していると、足を大きく開かされて、ヴィデロさんが覆いかぶさってくる。

 支えられてる太腿が気持ちいい。重なる唇も。ちょっと苦い舌がすごく腰にくる。

 指で散々解されたところに、熱いヴィデロさんのヴィデロさんが押し付けられて、ついついきゅっと締めてしまう。

 服を着たままのヴィデロさんは、やっぱり服を着たままの俺の上半身に手のひらを這わせながら、ゆっくりと俺の中に挿ってきた。



「あ……ふ、あ、キツ……」

「マックが締め付けるから……っ」

「熱い、ヴィデロさ……っ」

「マックの中も、同じくらい熱い。持ってかれそうだ……」



 そんなことをいいながらも、ヴィデロさんは焦ることなく、ゆっくりと挿入していく。それが余計に長くいいところを擦っていて、余計にヤバい。

 ヴィデロさんは服の中にも手の平を這わせると、ぐい、と胸元をはだける様にインナーを持ち上げた。

 そして、ちらっと見える乳首を指で刺激してくる。



「んん……っ」



 指の腹で撫でられる乳首が気持ちいい。ヴィデロさんと愛し合うことは、気持ちいいしかない。でも気持ちよすぎてたまに辛い。例えば今とか。

 まだまだヴィデロさんはゆっくりゆっくり俺の中に挿れている途中で、ちょっとだけ顰められたヴィデロさんの顔は、もっとたくさん動きたいと言ってる気がする。

 もっと沢山動いて欲しい。

 ヴィデロさんももっと気持ちよくなって欲しい。



「マック……どう、少しは考えてくれたか……?」



 ようやく時間をかけてすべてを俺の中に収めたヴィデロさんは、俺の髪の毛を掻き上げ、そんなことを訊いてきた。

 こんな状態で考えられない。無理。でもヴィデロさんを信じてる。好き。

 ゾクゾクする背中を宥めながら、俺はヴィデロさんの首に腕を伸ばした。そして、ビリビリする手でヴィデロさんを引き寄せる。

 自分から口をチョンとくっつけて、その刺激だけで果てちゃいそうなのを必死で我慢する。



「……ヴィデロさんを、しんじる……、何でも、できるかぎり、サポートする……!」



 唇を動かすと、ヴィデロさんの唇に触れるほどの距離で、俺は口を開いた。

 こんな状態じゃなくても、きっと俺は同じことを言ってたよ。それよりも、こんな状態で言ったことで、逆にヴィデロさんが信じてくれなかったらどうしよう。



「いつでも、信じてる……っ」



 だって、大好きだから。それに、多分俺の方がヴィデロさんが呆れるようなことを沢山するのに、ヴィデロさんは俺を信じてくれてるから。



「愛してる……」



 俺とヴィデロさんは、同時にその言葉を口にしていた。
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