これは報われない恋だ。

朝陽天満

文字の大きさ
上 下
619 / 830

616、どうしたらいいんだろう

しおりを挟む

 行ってらっしゃいのキスと共にヴィデロさんを仕事に送り出した俺は、早速インベントリの中を充実させて辺境に跳んだ。

 色々と魔大陸に必要な物は詰め込んできた。

 枝も。でも安易にそこらへんに差しちゃいけないのはちゃんとわかってる。



 一緒に魔大陸に跳んでくれる『高橋と愉快な仲間たち』と合流して、ユイの腕に触れると、「じゃあ行くよー」という気の抜けるような声と共に、視界が変わった。

 一瞬にしてズンと身体に感じる重力的な何かに、息苦しくなる。

 ステータス欄は横に表示しとけよ、と助言してもらったので見ていると、数秒に1の割合でHPが減っていく。これはヤバい。怠くなるし、なんていうか、空気からして身体に毒な物なんだなっていうのが立ってるだけでわかる。

 

「こんな中、勇者たちはどうやって魔王の所までたどり着いたんだろ……」



 ついついそう零すと、雄太が慣れた調子で何かを飲みながらそれな、と教えてくれた。



「現地の魔物の肉を錬金鍋にぶち込んでよくわからねえ、けど食べられる料理をサラさんが作ったらしいぞ。味は良かったけど見た目はヤバかったんだとかなんだとか。あっちに帰り着いてちゃんとした飯を食ったときが一番感動して涙が止まらなかったとか言ってたな。だからこそ、王女様嫁に貰った時に最初のうち出てきた消し炭のような食事も、最高に美味く感じたんだとか。勇者って結構不憫だよな」

「へえ……」



 確かに錬金で作る食べ物ってなんか見た目がヤバそうな物ばっかりだからなあ。綺麗なのも色々あるけど。ってことは、サラさんのレシピにこの大陸の魔物肉を使ったレシピも載ってるのかな。俺も作ってみたい。

 ワクワクした顔をした瞬間、雄太にじろりと見られた。



「俺は食わねえからな」

「俺何も言ってないよ」

「あ、私食べたいわ。錬金の魔物肉料理、出来ればスクショしたい! 美味しかったら『食い道楽スレ』に載せていい? 匿名で!」

「それちょっとテロ行為に等しいんじゃ……」



 いいじゃんいいじゃん、と気楽に答えた海里が、早速出てきた魔物をサクサク倒していく。

 え、そんなに簡単に倒せるの? と海里の強さにドン引きしていると、海里が早速魔物肉をゲットして俺に渡してきた。



「期待してる。じゃあ早く近くの村に行きましょ」



 頼もしすぎる護衛と共に、俺は既に視界に入っている村に足を向けた。

 木の柵が村を覆っていて、そこまで広くない村の中は、空気は変わりないけれど、魔物は本当に現れなかった。

 転移してきてすぐにホーリーハイポーションは飲んだから、HPは減ってなかったけど、どうにも感じるこの重さと怠さが何とも言えない。前に雄太が「倦怠感解除薬ウィジーポーション欲しい」って言ってたのがわかる気がする。試しに飲んでみると、だるさがスッと引いて、すごくすっきりした。すげえ! これは沢山持っておかないとだめだ。



「まずはこの村を浄化しないといけないんだっけ」



 見物人スタイルになっている雄太たちを放っておいて、俺はまずどこから浄化しようか村を見回した。

 広くない村とはいえ、一度で浄化できるほど狭いわけじゃない。家だって朽ちてはいるけれど、そこそこの数はある。小さな教会も建っているけれど、それでも中にはちゃんと礼拝堂があって、奥には何個かの部屋もある。

 まんま獣人さんたちの村と同じような感じの大きさだ。



「とりあえずはやってみよう」



 その場で短剣を鞘から引き抜くと、短剣がキィンと鳴った。やる気満々なのがなんとなく伝わってくる。

 剣を構えて、詠唱する。



『この世界を見守る最上の神よ』



 俺の声と共に、短剣が振動する。



『その気高き聖なる神気でこの禍なる気を包みこみ給え。円状鎮魂歌サークルレクイエム』



 詠唱終了と共に、短剣から発した光が辺りを包み込む。

 それは、いつもよりも大きな光で、あまりの眩しさに思わず目を閉じてしまう程だった。

 え、待って。この魔法、普通はこんなに眩しくないし、ここまで範囲広くないよ。いつもだったら半径10メートルの円なのに、これ、絶対にもっとずっと広い範囲包んでる。しかもいつもよりも光が強い。こんなに眩しいなんてありえない。

 短剣が気合いを入れるかのごとく、キィイイインという高い音を放っている。

 そして、光が収まっていくとともに、その音も収まっていった。

 音と光がなくなると、俺は盛大に息を吐いた。

 MPが残り10になっている。と思ったら、見ている間にも少しずつ回復している。

 魔素が多いってこういうことなのか、と妙に納得してしまった。



「聖魔法のレベル上がったか?」

「前よりはね。あと、この短剣もなんかよくわからないけど経験値は入ってる。でもなんか、ここだと魔法の威力が上がる気がする」

「ああ……それな。ここではユイがやべえ魔法バンバン繰り出すんだ。そしてこの間、海里に「夫婦喧嘩するなら、ここに来ればいい」って入れ知恵されてたのを俺は聞いてしまったんだ……」



 遠い目をして雄太が零す。

 俺の聖魔法であれだけ違いが判るなら、ユイの上級魔法なんて物凄い物があるんだろうな。ああ、確かに、土下座する雄太を捕まえてここに魔法陣魔法で跳んで、ここで魔法をぶっ放せば嫁圧勝なのはわかる。しかもそこで置いていかれたら雄太詰むな。海里ナイス。

 思わず笑うと、雄太が「ユイを怒らすことだけは俺しねえ」と誰にともなく呟いていた。それがいいよ。仲良くね。





 俺が浄化した場所は、あのずしっとした空気が爽やかな空気に変わっていた。でもじわじわと浄化範囲が狭まっているのが見た目でわかる。やっぱりというかなんというか穢れた魔素ってちょっとどよっとして見えるんだよなあ。浄化した場所があると比較が容易っていうか。暗い部屋と日当たりのいい部屋、ってくらいに空気の色が違った。でも見た目でわかるっていうのはすごくわかり易くていいかも。



「これ、悠長に時間を掛けて浄化してると、すぐに前のドヨンとした空気に戻っちゃうってことだよね。マック君、どうするの?」

「どうしよう。素早く回復して次の場所に行ったとしても、奥まで浄化してこっちに戻ってくるとまたここは穢れ魔素に戻ってる気がするよね」

「そうだな……どうするかな」

「これじゃあ、たとえここに植えてもすぐに枯れちゃうのは目に見えてるよな、枝……」



 溜め息を吐いて、とりあえず動いてみる。

 もう一度村を一望してみようかということになって村の外に移動する。さっききたところから南に行くと丘になってるらしい。

 村の入り口を潜って村の外に出ると、「あ」というブレイブの声がして、皆が動きを止めた。



「待ってくれ。この入り口部分、きっぱりと浄化されてるのとされてない魔素が分かれてる」



 ブレイブに言われて、確かに、と頷き合う。

 村の外にも浄化魔法は届く場所で浄化したにも関わらず、村の外の浄化されたはずの場所はすでにドヨンとしていた。でも、村の周りを覆った柵から向こうは、きっちり浄化されているし、そこから魔素が穢れて行くこともなかった。



「……村の中は少しずつ戻ってってるよな、浄化した場所……」



 腕を組んで雄太が首を傾げる。ブレイブも思案顔になり、海里が村の入り口を入ったり出たりしている。

 ここ、村の外なんだけど。

 そんな考え込むなら村の中に行こうよ。

 魔物がこっちに向かって来ても平然と考え込んでる三人にそう声を掛けると、ユイが「大丈夫」と笑顔を見せた。



「風の聖霊、あなたのその自由な翼で、目の前の大きな魔物を切り刻んで! 鎌鼬ウィンドシックル!」



 ユイの詠唱と共に、後ろから風が吹いた。

 そして、その風が目に見える刃になって魔物に向かって行った。んだけど。



「でっか……」



 一つ一つの鎌鼬が3メートルサイズで、しかもかなりの数が魔物にザクザクと襲い掛かっていく。それは魔物を貫通して後ろにある黒い木までなぎ倒していった。



「ね、大丈夫でしょ。ようやく風魔法がレベルマックスまでいったんだよ。次は火魔法のレベルを上げるつもり」

「は、はは……すごいね」



 ちなみに、魔法のレベルマックスは100らしい。進化しなかったから、それでマックスだとか。今度は違う魔法も最大までレベルをあげて、複合系の上位魔法が出ないか検証してみる予定らしい。こんなのほほんとしながらも、色々と考えているらしい。成績は悪くないって聞いたことあるけど、ようやくわかった。ユイは頭いい。この中で頭悪いの俺くらいかな……。



 今度こそ魔物の出ない村の中で熟考することにした俺たちは、しばらくそこにとどまって、浄化魔法は村の柵、というかアリッサさんの魔道具の結界が効いている場所に接触している場所からは穢れが戻らないということに気付いた。



「ってことは……一気に村を浄化しちゃったらもう外の魔素みたいにはならないってことじゃない?」

「それな。でもなんだかんだ言ってさっきの規模だと一気にってのは難しいだろ」

「マック君、他に浄化できる人知ってる?」

「ユキヒラとニコロさんくらいだけど、ニコロさんは絶対に無理だし、ユキヒラと二人でも一気には無理だよ」

「……なんかないかな」



 皆で頭を捻る。

 村を見回しても、やっぱり村全部を浄化するにはさっきの魔法を10回とか20回くらいかけないといけない気がする。

 もしかしてここら辺に枝を挿し木するの、無理なんじゃないかな。



「とりあえず片っ端から浄化してってみる? マジックハイパーポーションなら山ほど持ってきたし」

「だからそれじゃすぐ元に戻っちまうだろ」

「でもこれ一気になんて無理じゃん」

「だからそれを何とかするために考えてんだろ」

「私も聖魔法使えればよかったんだけどね。それだけはもう覚えられないし……無念だわ」

「ユイはもう魔法はいいだろ」

「よくないよ。今度は火魔法をマスターするんだから。火魔法の一番威力が大きいやつ覚えたいし」

「どんな魔法なんだ?」

「ええとね」



 皆も全然いい考えが思い浮かばなかったんだろう。雄太とユイは魔法の話に移行している。



「ええとねそこらへんの魔素を火種に変換して、一斉にそれを爆発させるやつ。辺り一面火に巻かれてすっごく派手らしいよ。使ってみたいよねえ」

「やべえ、それ見てえ」

「うん。頑張って覚える。一番に高橋に見せるね」

「すっげえ楽しみ」



 はいラブラブ。

 にこやかに話すユイの言葉の内容は全然にこやかに出来ない内容だけど。

 
しおりを挟む
感想 508

あなたにおすすめの小説

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者

みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】 リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。 ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。 そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。 「君とは対等な友人だと思っていた」 素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。 【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】 * * * 2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

処理中です...