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580、師匠ズの結託
しおりを挟む「『コウマ病』を治せる薬……すまないが獣人殿、それは、我々にとってどれほどの価値があるかおわかりか……?」
「こっちにはないって聞いてるからな。でも俺は作れる。ただで手に入れるのはダメって言うんだったら、アレだ。タタンとガレンをよくしてやってくれ」
「おいヒイロ。俺は大分よくしてもらってるぜ。ここのやつらいい奴らばっかりだしよ」
「その通りだ。団長だって俺らが獣人だろうとなんだろうと関係なく接してくれるからよ。あの獣人差別とかなんとかっつう話はどこ行ったってかなり二人で頭を悩ましてたくらいだ」
「そいつはいいな。ジャル様とユイルが一緒に住む未来が近付いた」
「そんなもん近付かなくていい!」
ケインさんの言葉に、獣人さんたちから笑いが起こる。
そして、ソルブさんの言葉はうやむやに……。
なるのかと思ったら、ニコロさんが口を開いた。
「このお薬は、ぜひ私に買い取らせてください。私達では値を付けることが出来ませんので、ぜひ対価を受け取っていただきたいと思います。必ず」
ニコロさんは断言して、ヒイロさんの手を取った。
「教会を統べる立場として、ぜひ相応の対価をお願いします。ぜひ」
「あんたさ」
ヒイロさんは手を取られたまま、じっとニコロさんを見つめた。
そして、盛大に溜め息を吐く。
「あんたはあんた。あんたは俺らに負い目はねえんだからよ。それにあんたもマックの関係者だろ」
周りの人にはきっとヒイロさんが何を言ってるのか全く分からないんじゃないかな。
でも、ニコロさんが教会の名を出したことで、俺にはなんとなくわかった。
前の教皇がしでかしたことを、自分が償おうとしてるんじゃないかな。
「ニコロさんには、前に『祈り』を教えてもらったんです。なので、ニコロさんも俺の師匠です」
「何『祈り』!?」
俺がそう言うと、反応したのはヒイロさんじゃなくてヨシューさんだった。
「ってことはだ。マックが聖水茶を作れるようになったのはあんたのおかげか! そりゃあすげえ! ニコロ、だっけ。あんた最高だな!」
ヨシューさんはヒイロさんの手を強引にニコロさんから引っぺがし、自分がニコロさんの手を握るとぶんぶん上下に振った。
さすがヨシューさん、聖水茶ファンなだけあるよ。こんな和解の仕方があるなんて。
友好的な俺の師匠ズの態度に、最初驚いていたニコロさんは、ぶんぶん振られた手を見て、ふと顔を綻ばせた。
周りを置いてけぼりにしたまま、師匠たちは仲良くなったのだった。
「やっぱ匂いでわかる俺はいた方がいいだろってことで、俺はマックと一緒に病の根源を根絶やしにしてくるぜ」
どうやって根源を探して根絶やしにするかという話で、ガレンさんは平気な顔をしてそんなことを言った。
でもヒイロさんが薬を作るってことは、獣人さんたちだって『コウマ病』にはかかるってことだよね。大丈夫なのかな、と眉を下げると、ガレンさんはガハハと笑った。
「だってよ。たとえ病になっても、ヒイロとヨシューがすぐに治してくれるんだぜ。大丈夫大丈夫」
「ってことは俺もヨシューもついてかないといけねえのかよ……」
ガレンさんの言葉に、ヒイロさんがめんどくさそうな顔をした。ヨシューさんも「うへえ」とか言ってる。
逆にケインさんは「行けよお前ら」と二人に発破をかけている。
「ここら辺ってことは、ジャル様の洞窟付近も危ないってことだろ。間違えてユイルが外に出て病にかかっちまったらどうするんだよ。そうならないためにすぐ消しに行くぞお前ら!」
ケインさんも相変わらずだった。でも、その理屈はわかる。小さい子が苦しむのを見るのはほんとにやだよね。とレディアちゃんに視線を向ける。
レディアちゃんはご機嫌でロイさんに抱かれている。あうあう言ってる声がめちゃくちゃ可愛い。
「だったらタタンも来いよ。俺らだけとかありえねえ。タタンが魔物を倒せよ」
「そんなもんだったらいくらでも倒すけどよ、俺ら、仕事があるんだぜ。な、団長」
タタンさんが極まっとうな返しをすると、ソルブさんは腕を組んで「いや」と首を横に振った。
「お前たち二人は、マック殿たちの護衛として一緒に行動する任務に就いてもらう」
そしてその言葉に反応したのは、ヴィデロさん。
「団長。俺も、護衛の許可をください」
「ヴィデロさん!? ヴィデロさんは病にかかるからダメって!」
「そうだ。ヴィデロが病にかかったらどうする」
「ヒイロもヨシューもいます。ってことは、タタンとガレンと同様、俺が病にかかろうが、すぐに治してもらえるということですよね。だったら、一緒に行かないという手はない」
きっぱりと言い切ったヴィデロさんに、ソルブさんは深いため息を吐いた。そして、ヴィデロさんから俺に視線を移す。
その視線には、何か色んな意味が込められている気がしたけれど、気のせい気のせい。
ソルブさんはヒイロさんとヨシューさんに視線を移して、「こんなことを言っているが、甘えていいのだろうか」と訊いた。
「もちろん。ヴィデロだったら俺らの仲間の様なもんだ。いくらでも治してやる」
「病にかからねえのが一番だけどな。めんどくせえから」
「ヒイロ黙れよ。そこはかっこよく俺がすぐ治してやるっていうところだよ」
二人の言葉を聞いて思わずといったように顔を綻ばせたソルブさんは、一言「……無事帰って来い」とだけ言ってくれた。
「その代わり、ヴィデロは休暇扱いだ」
「構いません。長期休暇、ありがとうございます」
「誰も長期などと言っていないんだがな」
「いつまでかかるかわかりませんので」
あくまで引かないヴィデロさんに、ソルブさんはもう一度盛大な溜め息を吐いた。
これは諦めたってことかな。ソルブさんも大変だね。でも、俺としては大変うれしい。ちょっとだけ複雑だけど。
「では、私は避難した街の住民の病を治すために動きましょう」
ニコロさんがソルブさんに提案する。
「……猊下が、ですか」
「いいえ、今はしがないナスカ村の治癒師ニコロです」
「あなたは全く……」
にっこりと笑って、躊躇いなく教皇の法衣を脱いだニコロさんに、ソルブさんが額を押さえた。
もしかして、二人はニコロさんがナスカ村に住んでた時からの知り合いだったりするのかな、と思わせるような、そんな雰囲気を醸し出していた。
街門騎士団から出た非常事態宣言を受け、衛兵たちが居住区にいる人たちを避難させるべく動き出した。
さすがにというかなんというか、居住区には結構な人数が住んでいるらしく、冒険者ギルドにも要請が来て、色々と街の中がバタバタし始めた。
そんな中、俺とヴィデロさん、そして、獣人5人が門の詰所を後にした。
「もし広範囲なら、異邦人たちに手伝って貰うのがいいのかもしれねえな」
歩きながら、ヒイロさんがそんなことを言う。
そんなときにはエミリさんに相談するのがいいと思う。
俺の提案に、皆が頷いた。
ということで、まずは冒険者ギルドに行くことになった。
幸いというか、エミリさんは統括の部屋にいた。
「どうしたのマック。ごめんなさい。今非常事態宣言が出されたので、これから忙しくなるのよ。手短にお願いできるかしら」
「はい。あの、『コウマ病』の根源を断つために人を集めたいんですけど」
俺の言葉に、エミリさんはなにいってんのこいつ、みたいな視線を俺に向けてきた。
そのコウマ病がまさに、非常事態宣言の元凶だったから。
「根源を断つために、人を集めるって」
「だってよ、異邦人ってのは絶対に『コウマ病』にかからねえだろ」
「何それ知らなかったわ」
「だって身体中魔素で出来てるからよ」
「異邦人っていうのは非常識だとは思ってたけど、そこまで非常識だったなんて……作り出したアリッサは何を考えて……あ、ヴィデロ君、ごめんなさい。悪口じゃないの。彼女の溢れだす才能が怖いだけよ……」
エミリさんは、遠い目をしながらそんなことを呟いた。
ヴィデロさんは苦笑していたけど、エミリさんすらこんな顔をさせてしまうアリッサさんって、ほんと恐ろしいほど凄い人だと思う。というかあの人の頭脳ってどうなってるんだろう。確実に俺よりも脳みその皺がギュッと詰まってメロンの様になってる気がする。俺の脳みそがスイカ並だとして。なんていうか、ヴィルさんもそうなんだけど、次元が違う。人として。
「そうね。でも、どうしてそのメンバーの中にヴィデロ君も入ってるのかしら……あなたは病にかかるのよね」
「ヒイロから薬を買い取って治そうと思っているので問題なしです」
「問題ありまくりだと私は思うのよ。ヒイロ、とんでもない物を作ってるのね」
「マックもそろそろ作れるようになると思うから大丈夫大丈夫」
「何が大丈夫なのかわからなくなってきたわ。でも、そうね。依頼として貼るんじゃなくて、指名依頼で行きましょうか。変なやつが来て、あなたたちが害されるのは不本意だから。そしてヒイロ、私にも売ってくれないかしら、その薬。避難してきた人に使いたいわ」
「それならニコロがいるから大丈夫だろ。結構沢山ヴィデロの職場に置いてきたし」
「ニコロ……? え、どうして猊下が?」
「マックが困ってるからって来てくれてよ。あいつ、この近くに住んでたのか? 団長とも仲良さそうだったぞ」
「猊下は教皇になる前はこの付近の村にいたけれども……猊下……あの人は何やってるのかしら。でも、ありがたいわ」
エミリさんはそういうと、椅子から立ち上がった。そして近くで仕事をしていた秘書の人を呼ぶ。
「辺境に依頼を出してくれない? 『白金の獅子』『マッドライド』『マーメイドドロー』『ブルードルフィン』『高橋と愉快な仲間たち』『トランス』『リターンズ』『紅蓮連合』『獣同盟』どれか一つでも頷いてくれたらいいんだけど」
エミリさんの指示に秘書さんが頷いて、すぐに部屋を出ていく。
っていうか知らない名前が結構出てきたなあ。エミリさん、どれだけプレイヤーの事把握してるんだろう。
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