これは報われない恋だ。

朝陽天満

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507、調子に乗りました……

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 というわけで、レベリングじゃないけど、一人で聖魔法だけでどこまで行けるか検証しようと思います。

 検証現場はトレの森。ここならユニークボスでもない限り死に戻りすることなく魔物と戦えるから。

 周りにはたまにレベル上げをしていると思われるプレイヤーがいるけど、皆頑張ってるから俺も頑張ろう。

 早速出てきた魔物に、もう本を見なくても憶えた詠唱を唱えて『聖球ホーリーボム』をブチ当てる。

 さすがにトレ付近の魔物は一撃で半分くらいHPを減らせることが判明した。うん、一撃で倒せるくらいにならないとなんだけどなあ。でもまあレベリング一日目でここまで上がったのが奇跡に近いんだし。

 二発で光にした魔物のドロップ品を確認してから、俺はさらに進んだ。今の職業は錬金術師だから入ってくるのはだいたい錬金アイテム。

 順調に聖魔法で魔物を葬っていき、俺はとうとう山裾の境界線を越えた。ここの魔物はどうだろう。効くかな。効かなかったら素直に死に戻りしよう、と心に決めて、境界線奥に足を進めた。

 出てきた魔物は身体の大きな熊のような魔物だった。

 爪も鋭く、牙がすごい。額には黒い三つ目の目がくっついていて、咆哮はビリビリ。なかなか強そうだ。

 短剣を構えて詠唱を始めると、魔物は目に見えないほどのスピードで爪を振り下ろしてきた。

 咄嗟に短剣を盾代わりにすると、短剣が熊の掌に吸い込まれるように突き刺さった。途端に短剣の悲鳴が聞こえた気がした。

 慌てて短剣を抜いて後ろに下がる。

 血を垂らした手を舐めながら、魔物はグルル……と威嚇しながらじりじりと横に動いた。

 短剣には魔物の血がついていたけれど、それもすぐに光になってキラキラと消えて行く。

 ダメだ、聖魔法だと詠唱が間に合わない。

 俺は諦めて短剣を鞘にしまい、長光さんの刀を抜いた。

 さっき一撃を食らったせいか、魔物は警戒してるみたいだった。

 逃げたところで追い付かれるのはわかり切ってるから、俺は刀を構えて、自ら走り出ていた。

 魔物が二本足で立ち上がり、空に向かって咆哮をあげる。それはクマの鳴き声とは全く違い、腹の奥にずんと来るような音だった。

 何とか硬直を回避した俺は、まだ魔物が咆えている間に走り寄って刀を振るった。



 切っては離れて、逃げてまた切って。

 HPを少しずつ減らし、自分も減らされて、何とか魔物を光に変えた時には、俺もボロボロだった。

 とりあえず残ったMPを惜しみなく使って魔法陣魔法で転移すると、雰囲気の変わった通常通りの森に安堵する。

 やっぱり俺一人で境界線の向こうはダメだった。一匹でこれだけ苦労するってホント無理。

 やっぱり魔導士っていうのは前衛がいてこその後衛だった。詠唱してる間にやられる。ユイはそんなことなさそうだったけど、それだけ熟練の魔導師ってことだよな。尊敬する。

 人心地ついてハイパーポーションでHPを回復した俺は、ふと気になって聖短剣を取り出した。



『ルミエールダガールーチェ【212/***(-4)】:闇を吸収変換し、聖を吸収しおのれの力とする聖なる短剣。闇属性以外のものを傷つけると少しずつ力を失っていくので注意が必要。祭典儀式用であり、装備したものは特有の聖魔法『サークルレクイエム』が使えるようになる』



 うわ、闇以外を傷つけると最大値の方がマイナスされちゃうんだ。これは攻撃に使っちゃダメなやつだ。



「ごめんな、傷つけるの嫌なのに魔物を傷つけさせて」



 ついつい短剣を撫でて、腰に戻す。

 一人では聖魔法で攻撃するのは難しい、と悟ったのだった。



 とぼとぼとトレの街に帰ってくると、丁度ヴィデロさんが軽装備で門前で話をしていた。

 森の状態を報告しているっぽかったヴィデロさんは、俺の姿を見かけた瞬間満面の笑みで手を振った。可愛い。

 俺もさっきまでの落ち込みはどこ行ったって思うくらい気分が上昇して、思わずヴィデロさんに駈け寄る。



「マック、また無茶したな。ローブにかぎ裂きが出来てる」



 俺を抱き締めながら、ヴィデロさんがローブの背中部分をゆっくり撫でる。



「うん、聖魔法でどこまでできるかやってみたんだ。ここら辺の魔物はなんとかなったけど、境界線から向こうのはやっぱり一人で魔法で倒すのは難しかった」

「当たり前だろ。境界線向こうの強さは森とは段違いだ。そんな無茶しないでくれ」

「うん、ごめんね」

「無事ならいい。ローブ、修理してもらいに行こう」

「まだ店開いてる?」

「大丈夫だ」



 ヴィデロさんは門番さんに手をあげると、俺の手を引いて防具屋さんに向かった。

 ヴィデロさんは今日は危ないことなかったのかな。見た限り傷はなさそうだけど。

 そのことを訊くと、ヴィデロさんは笑顔でサムズアップした。



「大丈夫、すべて一撃で倒せたから。マックは傷はないのか?」

「もう治したから大丈夫」



 そうか、という返答と一緒に、繋がれた手にちょっと力が込められたのがわかった。



 今日の報告をしている間に、防具屋さんに着いた俺たち。

 店に入ると、防具屋の店主さんが出迎えてくれた。



「おうヴィデロ君マック君。よく来たな。今度はどんな無茶をやらかしたんだ?」



 無茶をすること前提の言い方に、俺とヴィデロさんは苦笑した。

 羽織っていたローブを脱いで店主さんに渡すと、店主さんは驚いたように目を見開いた。



「こんな状態でよく無事だったなマック君」



 魔物の爪でがっつりと穴の開いたローブを掲げて、店主さんが溜め息を吐いた。

 耐久値もかなり減っていて、せっかくヴィデロさんから貰ったローブ、もっと大事にしないとと項垂れていると、ヴィデロさんが俺の顔を覗き込んできた。



「前にも言ったかもしれないけどな、装備品は消耗品なんだ。装備品はマックの身を守るための物なんだから、いくらボロボロでもマックが無事ならそれでいいんだよ。そうやって無事に帰ってきてもらうためにプレゼントしたんだ。だからそんな顔するなよ。マックだってそういう気持ちで俺に鎧を選んでくれるんだろ?」

「うん……」



 でもヴィデロさんにもらったものは全部大事なんだ、と心の中で付け足しておく。

 聖魔法のレベルが上がったからってちょっと調子に乗ってたかも。反省。

 綺麗に直してやるよ、という店主さんの頼もしい言葉に頷いて、俺たちは帰路に着いた。





 工房の玄関を開けて家に入ると、ヴィデロさんが振り返って「ただいまマック」とちょっとだけ照れながら言った。



「おかえりなさいヴィデロさん……!」



 いまだに慣れない一緒の家。きっとヴィデロさんもまだ慣れてないと思う照れ方が可愛い。

 でもそのうちこういう言葉のやり取りが普通になるといいなと思いながら、俺はキッチンに向かった。



 明日の予定は昼に少しだけヴィルさんの所に行けばあとは何もないから、今日はゆっくりとヴィデロさんといちゃいちゃしようと思う。

 お互いの服を脱がせ合い、風呂場になだれ込む。身体を洗い合って、浴槽に二人で入る。

 ヴィデロさんの足の間に座って、素肌の胸に背中を預けながら、はぁ……と吐息を零す。



「重くない?」

「全然。むしろ役得」

「俺こそ役得」



 背中に素敵筋肉の感触があるのがとても役得。

 思わず横を向いて鎖骨に頬擦りすると、するするとヴィデロさんの手が俺の腹を這った。

 つつつ、と手が動いて、意味があるのかわからない程度の俺の乳首を摘まむ。

 ピクッと身体を揺らすと、後頭部にちゅ、とキスが降ってきた。

 お尻の後ろに当たるヴィデロさんのヴィデロさんが、段々と硬くなっていくのがよくわかる。つられるように俺のものも硬くなっていく。

 気持ちいい。でも、キスしたい。

 後ろで存在を主張するヴィデロさんのヴィデロさんを弄りたい。俺のも弄って欲しい。

 乳首も気持ちいい。指先でこねられるように動かされるのが堪らない。

 吐息と共に身体の中の熱が上がっていく。



「ヴィデロさん……」

「このままじゃのぼせそうだな」



 ほんのりと色づいた頬を晒しながら、ヴィデロさんが耳元で呟いた。

 身体を拭いてそのまま隣の寝室に向かう。何も身に付けない清々しさが恥ずかしい。でも眼福。ヴィデロさんの背中としまったお尻がとても目に嬉しい。

 あの背中に手を這わせたいし、お尻を撫でたい。

 そんなことを悶々と思いながら、ベッドに上った。 





 
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