これは報われない恋だ。

朝陽天満

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485、『倦怠感解除薬』の効能

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 獣人の村は順調に開放されているらしい。というのも、素材を取りに行くと大分村にプレイヤーが歩いている姿が目に入るから。

 中には、プレイヤーじゃなくてこっちの世界の人も村に遊びに来ている場合もあるのが面白い。

 そして、獣人の転移魔法陣を使える人たちが各洞窟から案内すると決まったらしい。ケインさんが「仕事が減ってようやくゆっくりユイルと遊べる」とか言ってたから。今までケインさん一人で連れ回してたらしいからね。獣人さんたちが帰り道は教えてくれるけど。

 今日はヴィデロさんが非番だったので、一緒に『倦怠感解除薬ウィジーポーション』の素材をくれる魔物を倒しに来ていた俺たち。

 久しぶりのデートがこんな魔物狩りで申し訳ないというと、ヴィデロさんは「一緒に何かをすることが重要なんだ。だからマックの好きに動いてくれて大丈夫」と言ってくれた。好き。

 でもその言葉、ベッドの上で聞きたかったよ。そしたら好きに襲うのに。



 バイ村の森は、前に入った時とは違って、草が大分短くなっていた。

 また隠れるように『リルの実』みたいな物が増えて行かないように、子供が隠れられる程度の短い草しか生やしてないみたいだ。

 ヴィデロさんの剣が振り下ろされる。

 その剣から斬撃が飛んで、魔物のHPが一気に赤までなくなる。

 そこから反撃が来るのをヴィデロさんが軽く避けて、もう一撃。

 魔物が光になって、インベントリにドロップ品が入る。



「やった。お目当ての『発香草はっかそう』ゲット!」

「俺もそれを貰った。マックにやるよ」



 ヴィデロさんも発香草をドロップしたらしく、それを俺に渡してくれる。

 たまに出てくる魔物だってヒイロさんは言ってたけど、なんか二匹に一匹はこれを落とす魔物なんだけど。すっかり潤ったインベントリに満足して、俺たちは村に帰ってきた。

 そのままバイ村の森からジャル・ガーさんの洞窟に出て、数人のプレイヤーと挨拶しつつドアを閉めた瞬間周りにプレイヤーがいないことを確認して工房に跳んだ。





 テーブルにゲットした素材を並べて、他の素材を取り出して、大量の『倦怠感解除薬ウィジーポーション』を作っていく。

 ヴィデロさんは目の前に座って俺の手つきを見ながら、感心したように瓶を持ち上げた。赤い液体がタプンと揺れる。



「これはどういった効能なんだ?」

「怠さを取るやつらしいんだけど、はっきり言ってどんな時に使うのかいまいちわからないんだ」

「怠さ……そうか。マックはまだ調薬を続けるのか?」

「ううん。今日ゲットした分の素材を使い果たしたから、これで終わり。ヴィデロさんのカバンにもちゃんと入れてね」



 好きなだけ、と付け加えると、ヴィデロさんは苦笑して、二本だけカバンにしまった。もっと持ってっていいのに。

 楽しそうに片付け作業を見ていたヴィデロさんは、机の上が綺麗になると、「マック」と俺を呼んだ。



「今日は、マックを抱いていいか?」



 優しい声音で誘われて、俺は一も二もなく頷いた。好き。







 脚を絡めて指を絡めて、舌を絡めて、そして、奥まで熱に浮かされる。

 ぐ、と奥にヴィデロさんのヴィデロさんが沈むと、俺の中が震える。

 繋いだ手に力がこもり、たまらずに声を漏らすと、身体の中の熱が更に俺の中の快感を引き摺り出していく。



「ヴィデロさ……っ、あ、ぁぁっ」

「マック……愛してる」



 身体を密着されて奥を暴かれて、耳元でそんなことを囁かれた俺は、もう何度目かわからない頭パーンを味わう。

 全身が性感帯になったみたいに、ヴィデロさんに触れる全てが気持ちいい。



 身体の奥に熱が放出されるのを感じて、俺もつられるようにたらりともう出ないとすら思っていた体液をこぼす。

 ゆっくりとヴィデロさんのヴィデロさんが抜けていき、身体の力も抜ける。

 力の入らない腕でヴィデロさんに抱き着くと、顔を上気させたエロいヴィデロさんの顔にキスをした。



「スタミナポーション飲むか?」

「……飲んだら、また、したくなるから……」



 息切れがしてとぎれとぎれに言葉を返すと、そうか、とヴィデロさんは俺に一つキスを落として立ち上がった。

 服を纏う背中がかっこいいな、なんてだるーっとしながら見惚れていると、身なりを整えたヴィデロさんが何かを手に戻ってきた。

 そして。



「じゃあ、これの効能を調べてみるか?」

「……どれの?」



 差し出してきたのは、さっき俺が作った『倦怠感解除薬ウィジーポーション』。

 怠さを取る薬……って、こういう時に使う物なのか。

 確かにかなり怠い。全身怠い。愛し合った余韻っていうのかな。そういうのが全身を支配している。

 この状況でヴィデロさんが手にしているアイテムの効能を見るのは確かにいいかもしれない。

 ゆるゆると起き上がって、ヴィデロさんから瓶を受け取ると、蓋を開ける。

 口に含むと、まるでグレープフルーツジュースを思わせるような爽やかな味が口に広がった。うん、結構美味しい。

 一気に飲み干すと、スタミナが少しだけ回復して、そして、さっきまで感じていた怠さが全くなくなった。

 スタミナポーションを飲んでスタミナを回復してもあの愛し合った余韻はいつも残ってるのに、これを飲むとあのフワッとした様な感覚が全くなくなって、スッキリしゃっきり! って感じになる。

 徹夜明けのフラフラ状態の時に飲むと意識が覚醒していいかもしれない、そんなアイテムだった。んだけど……。



「これは、愛し合った後には飲みたくない……」



 思わず零すと、ヴィデロさんが慌てたように「何か副作用でもあったのか!?」と覗き込んできた。

 違うんだよ。副作用なんかないんだよ。なんていうかすっごく効くんだよ。



「愛し合った余韻がなくなっちゃった……」



 しょんぼりと呟くと、ヴィデロさんは焦った顔を苦笑に変えた。

 そして「もう一度余韻を残そうか?」と提案してくれたヴィデロさんに、俺は思わず「好き!」と抱き着いていたのだった。







 寝不足で学校に行き、大あくびをしながらご飯を食べる。

 寝そうになると途端に隣からいたずらされるので寝ることはなかったけれど、帰ったらログインするよりたまには寝た方がいいのかもな、なんて思う。多分先生には俺たちの攻防戦が丸見えだったんじゃなかろうか。



「なんでそんなに郷野は眠そうなの」

「聞いてやるな、大人事情だ」

「なんでわかるんだよ!」



 雄太の言葉に思わず突っ込むと、2人とも半眼でこっちを見た。



「カマかけただけだったのに」

「郷野素直だね」



 乾いた笑いを貰って、俺は一人撃沈した。



「ふうん、『倦怠感解除薬』か……。ねえ、それ、俺欲しいんだけど」

「俺も欲しい。物々交換しないか?」



 新しい薬の効能を教えると、2人とも意外にも食いついてきた。



「なんで?」

「魔素が濃い所に行くと怠い気がするんだよ。あの壁の向こうとか」

「うん、まさにそれ。壁向こうで戦ってるとすごくスタミナの減りが速いんだよね。なんか動きが緩慢になったような気がするし」

「実際には動きは全く変わりねえんだけどな。なんか身体を動かしにくいっていうか」

「そうそう。その『倦怠感解除薬』で通常の状態になれるかどうかはわからないけど、よければ売ってくれないかな。雄太は今金欠だから、俺が代表して買取るよ」

「それはいいけど」

「エロいことした後の怠さもスッキリするなら、期待大だぜ」

「それは言わなくていいから!」



 そういうわけで、俺の新薬は辺境に引き取られることになった。もちろん、素材のゲット方法を教えて、今度からは素材を持ち込んでねと頼むことは忘れない。

 結構頻繁に出てくるからそこまで素材集め大変じゃないよね。



 
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