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429、おっさんな俺といいことしない?
しおりを挟むふわふわドーナツは想像以上に門番さんたちの受けが良かった。
大量に作って持って行ったら、一瞬でなくなるくらいには。なんでも、懐かしい味がするんだそうだ。中にはふわふわドーナツを一口食べた瞬間ダーッと泣き出してしまった門番さんもいて、小さいころに魔物に襲われて亡くなったお母さんの作ったお菓子の味がするとか。泣きながら俺に抱き着こうとしてきた瞬間ヴィデロさんが間に入ってその人を抱擁してあげていたのはちょっとしたハプニングだった。
また作ってくれと皆に言われて、俺は苦笑しながら了承した。
遅くなったからというよくわからない理由で、門番さんたちは工房までの短い距離にヴィデロさんという護衛をつけてくれた。そのままお持ち帰りしていいよってマルクスさんが笑ってたけど、ほんとにお持ち帰りするよ? 朝まで帰さないよ。そう言うと、なぜか門番さんたちから歓声を貰ってしまった。
「すっごい理由で外泊届は出しといてやるよ」ってマルクスさんが言ってたので、そのまま俺はヴィデロさんをお持ち帰りすることにした。すっごい理由の中身が知りたいけど、ヴィデロさんが笑いながら「絶対に呆れるような碌でもないことを書く」と断言して放置していたので、気にしないことにした。
途中すれ違った見知らぬプレイヤーに「二人のスクショ撮っていいか」と聞かれたので、掲示板とかに載せないで、俺に送ってくれるならいいよと許可をしたら、本当に俺とヴィデロさんの並んで映ってるスクショを送ってくれた。これ、何とかしてヴィルさんの所にある携帯端末に送れないかな。ヴィデロさんが見れないのが悔しいとか言ってるから、その端末からヴィデロさんの端末にメール添付で送れないかな。ヴィルさんに相談してみよう。そう言うと、ヴィデロさんはなんだか複雑な顔をしていた。
『コウマ病』発症のこととか色々あったせいか、2人でゆっくりするのはすごく久しぶりな気がする。
ヴィデロさんもそれは感じていたらしくて、ヴィデロさんは椅子に寛ぐと、膝の上に俺を乗せたがった。いやね、乗るのはやぶさかじゃないけど、大の大人の男を膝に乗せるの、足痺れないかな。そう言うと、ヴィデロさんはたまらないという様にとんでもなく楽しそうな顔をして笑った。
「膝に乗る相手がマックだったら、どれだけ大きなマックでも痺れないから大丈夫」
「ほんとに? 『細胞活性剤』使いすぎておっさんになってヴィデロさんと同じくらいになった俺を乗せても?」
「大丈夫」
笑顔で頷いたヴィデロさんに、俺はほんとにおっさんになって高身長になってやろうか、と膝の上から部屋の中のインベントリを弄って『細胞活性剤(小)』を取り出してみた。
パンツが剥がれるようになってからは全く使っていなかった細胞活性剤を持ち上げてヴィデロさんの目の前でちゃぷんと振っても、ヴィデロさんは「どんなマックでも俺は大歓迎」とキスをしてきた。そうだよね。おっさんな俺もちゃんと愛してくれたもんね。
問題なのはスタミナポーションが使えないってことだけど、おっさん相手にそこまでがっつくかなあ。
そう思いつつ、たまには違うプレイもいいかもね、と俺は細胞活性剤を口に含んだ。
いつもチロッと舐める程度だった瓶の中身は、半分くらい減っている。
そして、膝の上に乗っていた俺は、それでも視線が変わりなかったのが、ヴィデロさんを見下ろす形になった。
「俺、おっさんになった?」
「いや、すごく優しそうな好青年になった。一緒にいるとそれだけで癒されそうな雰囲気だ。それにきっとマックは歳をとっても「おっさん」なんて言葉は似合わないだろ」
「そうかなあ、ヴィデロさんは絶対に歳を取ったら「ダンディなおじさま」になりそうで想像しただけで悶絶しそうだけど、俺は絶対におっさんだよ。あああ、絶対にかっこいい。どれだけ歳をとってもヴィデロさんは絶対にかっこいいよ……!」
想像しただけでほんとにかっこよかったので、俺は思わず顔を覆って天を仰いだ。
ヴィデロさんの笑い声が聞こえるけど、だって仕方ない。ヴィデロさんがかっこいいから仕方ない。好き。
「おっさんになった俺と、向こうの部屋でイイことしない? すっごくエッチなこと」
おっさんっぽく誘ってみると、ヴィデロさんは笑いながら大きくなった俺の腰に腕を回して、そのまま立ち上がった。
抱っこされたおっさんな俺、きっと第三者目線で見ると、とんでもなくカオスな光景だよね。この抱っこされた視線の高さは、ヴィデロさんとそこまで変わりない身長になってるはず。
「下ろす気はない?」
「ベッドでならいくらでも」
楽しそうな声で、ヴィデロさんは俺を抱えたまま軽い足取りで隣の寝室に向かった。
細胞活性剤で大きくなっても、傷も胸の刺青もしっかりと性感帯で、ヴィデロさんはおっさんな俺の身体を余すことなく愛撫した。
やっぱりというかなんというか、身体が成長していると、感じ方もちょっと変わって、俺の中も年と共に慣れたような感じになっていて、すぐに解れて蕩けだしていた。
いつもの自分の身体とは全然違う、なんていうのか、ねっとりとした快感が身体の中を巡っていく。
ヴィデロさんが俺の中に挿ってくるときも、ぎゅうぎゅうじゃなくて、中が絡んで包み込んで柔らかくうねるようなそんな感覚なのが自分でもわかる。
奥まで挿入したヴィデロさんが、ホッと息を吐いて動きを止めた。
「……ずっと俺に抱かれ続けて、すっかり馴染んで俺の形になってるみたいだ……」
ポツリと呟いたヴィデロさんの言葉に、まさにそれ、と俺も同意する。いっぱいいっぱいなのは変わりないけど、俺の身体、抱かれ慣れて快感だけを享受できるよ、みたいなそんな感じがする。ヴィデロさんの吐く吐息もいつもよりも色っぽい。やっぱりいつもはきついのかな。早くこれくらい抱かれ慣れたい。
いつもなら胸にすっぽり入ってしまう状態なのに、今日は抱かれても視線は同じで、不思議な感じだった。キスをするにもヴィデロさんが身体を丸めることなくできるのがすごくいい。
ゆっくりと抜かれる度に、いつも以上に甘ったるい声とじわじわ広がる快感が身体を支配する。おっさんな喘ぎ声でごめん。でも止まらない。
奥を突かれて、ヴィデロさんのヴィデロさんを体内で絡めとる。
擦られるたびに、俺のモノからたらたらと透明な液体が零れて、いつになく甘い痺れが腰全体を包んでいく。
なんか、今日はいつも以上に持たない、かも。擦られる中すべてが良過ぎて、持たない。
「……マック……ああ、もう……」
ヴィデロさんも同じようなことを感じてたらしく、そんなエロい喘ぎを零してくれた。
俺も、なんか、ヤバい。
動かれるたびに身体がしなり、ヴィデロさんを締め付け、はやく奥に出してほしいと腹の底で求める。
耐えられなくて、自分でも腰を動かすと、ヴィデロさんと連動した動きが重なった瞬間、奥のヤバいところがグリッと突かれて頭が一瞬で真っ白になった。
「あ、あああぁぁ……っ!」
「……っ」
吐息のような、それでいて悲鳴のような声が俺の口から洩れて、ヴィデロさんもくっと息を止める。一瞬後に俺の腹の中に熱が流れ込み、ヴィデロさんが上り詰めたことを教えてくれた。
軽く息を乱しながら抜こうとするヴィデロさんを引き留めるように、俺の中がキュっと締まる。
抜かないで。
足でヴィデロさんの腰を絡め取り、首に回った腕に力を込めて、俺はヴィデロさんの身体を引き寄せて、ヴィデロさんの形のいい唇にかみついた。
胸元には刺青の他にキスマークが多数。
ヴィデロさんのヴィデロさんを迎え入れていたところは、まだまだ足りないよとばかりにぽっかりと口を開けて、中に出された物を零している。
自分で出した白い物はへそのくぼみに溜まり、シーツへ一筋のラインを作っている。
そのたまった白い物を、濡らしたタオルでヴィデロさんが優しく拭き上げてくれた。
その上半身素肌のヴィデロさんの肉体はいつ見てもみごとで、腕の動き一つとっても見惚れるほどに綺麗だった。
俺は自分の成長した腕を上げてそれを見てみた。
うん、細い。なんか、そのまま成長しただけ、って感じがすごく残念。筋肉も活性化してくれたらいいのに。……贅肉が付かないだけましなのかな。腹に肉ないし。
「どうしたんだ?」
「なんか俺、おっさんになっても筋肉ないなあって」
しみじみ呟くと、ヴィデロさんはやっぱり楽しそうに笑った。
「マックはほんとに筋肉が好きだな。もし俺が動けなくなって細くなったらマックに捨てられそうだ」
「え、捨てるわけないじゃん。ってかヴィデロさんは筋肉落ちてもヴィデロさんでしょ。俺はヴィデロさんがヴィデロさんだったらどんなだって好きだもん。たとえ幸せ太りしてもガリガリになっても王子様になっても魔王になったとしても。それよりも俺の方が贅肉たっぷりのでぶでぶ親父になって捨てられそうだよ。頭なんかすっかりテレンテレンになったりして……」
言ってて自分で怖くなって、思わず頭を撫でる。今の所、毛根が寂しい場所はない、と安心しかけて、これはアバターだったと思い出す。実際の俺はどうなることやら。今の所うちの父さんも毛根が寂しいところはない、はず。でも母さんが「オシャレ染め」がどうのとか言ってたから、そういう歳になったんだなってちょっとだけ寂しく思ったのは事実で、ってことは、あと20年後には俺の髪の色もオシャレ染めしないといけなくなるってことかな。
「白髪だらけになったりして捨てられそうで怖い」
「金色の髪も、歳をとると白くなるんだ。今は違う色でも、歳をとるとマックと同じ色になるってことだろ。それは楽しみだな」
俺の髪の毛を弄りながら、ヴィデロさんがベッドに座って目を細める。そうか。二人とも白髪になったら、同じ髪色になるんだ。そう考えると白髪も悪くないかも。そういうことをサラっといえるヴィデロさんてほんと男前だと思う。好き。一緒に歳をとって、一緒に同じ髪色になりたい。そしてそれを見て、お互い「おんなじだね」って笑いたい。
それはもうすぐ叶う夢として、俺のやりたいことリストの上位に位置付けされた。
ヴィデロさん、ハゲで贅肉太りになったおっさんな俺も好きでいてくれるといいな。それよりも贅肉が付かないように鍛えた方がいいのかも。
明日は俺が起きなくても勝手に出勤するからと、ヴィデロさんはお泊りになった。
まだ身体の大きなおっさんの俺は、ふと、隣に寝転がってきたヴィデロさんを見て、思った。
「今日は、俺が腕枕できる……?」
同じくらいの身長のはずだから、できるはずだ。
ナチュラルにヴィデロさんの腕に頭を乗せてたけど、逆をしたっていいじゃん。
そう思った俺は、まだしっかりと目を開けていたヴィデロさんに、「腕枕させて」とお願いした。
ヴィデロさんは、また変なことを言い出したぞ、みたいな楽しそうな顔をして、快諾してくれた。
腕をヴィデロさんの頭の下に敷いて、頭を抱え込むように胸に抱き寄せる。ヴィデロさんの金髪、柔らかくて気持ちいい。
腕の中にヴィデロさんがいるっていうのもなかなかに新鮮で、俺は思わず顔をにんまりさせてしまった。ヴィデロさんの腕が腰の上に乗って、心地よい重さが掛かっている。足は二人で絡めて、俺のもう片方の腕はヴィデロさんの二の腕のあたりに置かれて、めちゃくちゃぴったりくっついている。この素肌の密着がとても気持ちいい。小さいままこれをすると、ヴィデロさんの腕が俺のお尻の辺りに来るんだよね。そして足は長さが違ってこういうふうに絡めないんだ。
思わぬ幸福に、俺はついついヴィデロさんを抱きしめる腕に力を込めてしまった。
いつもとは違って、ヴィデロさんをリードしているみたいで、俺がヴィデロさんを抱いてるような錯覚に陥る。途端にきゅんとする心臓と、さっきまでヴィデロさんを受け入れていたお尻。ダメダメ、俺が抱いてるんだから、そこ反応しちゃダメ。
そんなことを考えていたら、ヴィデロさんが俺の刺青に唇をくっつけた。思わずビクッと反応する。
「マック……今、どんなことを考えてたんだ……? 勃ったものが擦れる……」
グリッと同じように勃ってるヴィデロさんのヴィデロさんが俺のはしたなく硬くなったブツに擦れる。
ごめんなさいヴィデロさんを抱いてる想像をしてしまいました。でもさすがにヴィデロさんにそのブツをどうにかするとかそういうことは想像できなかったけどね……。
そんなことより反応するのは俺の奥の奥で。きっと俺は、ヴィデロさんを身体の中に貰わないと満足できないんだよ。そう思うだけでキュンキュンするし。
俺がそっと「……内緒」と囁くと、ヴィデロさんは刺青にキスの嵐を降らせ始めたのだった。
しばらくじっとしてたから、スタミナゲージは大分回復してた、とだけは言っておく。
朝、少しだけ、とログインすると、すでにヴィデロさんは門に戻ったみたいだった。寝起きのヴィデロさんが見たかったな、なんて残念に思いながらもう一度ログアウトした俺は、時計を見て慌てて制服に着替え始めたのだった。
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