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339、ブーツ、ゲット
しおりを挟む「まあ、直せないことはないな」
防具屋のおじさんは難しい顔をして黒い鎧を見下ろしている。
神殿でボロボロになった鎧を、防具屋のおじさんに直してもらおうと思って持ってきたんだ。
でもおじさんは、かなり難しい顔をしている。
「だがなあ、正直、ここまで壊れちまうとこの装飾を取り外して新しいのを買ったほうが安上がりだったりするんだ。何より、一度直した物は、耐久値の減りがかなり早くなっちまうからなあ……」
「やっぱりそういうことはあるんですか……」
「直ることは直るし、かなり性能のいい鎧だから、このまま廃棄するのももったいないんだけどな。トレでは絶対に手に入らない精度の鎧だしな……うーん、どうしたもんか……」
ヴィデロさんはじっと自分の鎧を見下ろして、傷を指でそっと撫でた。
「直してください。俺、この鎧をまだ使っていたいんです」
手を放したヴィデロさんは、しっかりと頭を下げて、防具屋のおじさんにお願いした。
渋い顔をしていたおじさんも、諦めたように「わかった」と防具の手直しを請け負ってくれた。
よかった。
「でもってマック君、君のブーツはどうした」
「再起不能なくらいに溶けちゃった……せっかく薦めてくれたのにごめんなさい……」
申し訳なくて頭を下げると、おじさんは「防具は身を守ってなんぼだ。身体が無事ならそれでいい」と優しいことを言ってくれた。
そして、奥に入って行ったかと思うと、手にはまた新しいブーツが。
「この間砂漠都市に行ってきたんだが、そこでいいブーツを仕入れてな。なんでも、辺境から流れて来たらしい。性能もいいし、どうだ、これを買わんか?」
そう言って、かっこいい真新しいブーツを俺に見せてくれた。
色は前に買ったブーツよりやや薄め。でも黒い紐で周りをくるくると装飾された細身の外見がすごくかっこよかった。その紐をきゅっとすると簡単には脱げなくなるし、その紐自体がスピードがものすごく早い魔物の素材で出来てるため、素早さが上がるらしい。
そしてかかとはちょっと高くなってるのが俺的ポイントだと思う。薄っすらと入っているブーツと同系色の刺繍がまたかっこいい。
「うわぁ……かっこいい」
「サイズも合わせてやるから、ちょっと履いてみろよ」
「うん」
スッと足をブーツに通すと、少しだけつま先が余った。
どうやってサイズ合わせをするのかと思って見ていたら、防具屋のおじさんは大きな針と丈夫そうな糸を持ってきて、すっごく簡単そうにチクチクとつま先を縫い始めた。え、ブーツってそれでいいの?!
驚いてみていると、先の縫われたブーツは大きなはさみで形を整えられて、さっきまでとほぼ変わりないかっこよさのまま、俺の足にぴったりになった。
すごい、技術職、すごい。
神業だ……。
感動しながらもう一度ブーツを履いて、紐を縛ってみたり足をトントンしたりしていると、防具屋のおじさんが「どうだ、気に入ったか」とニッと笑った。
って、これで気に入らないと言って返したらどうするのかな。もうすでにサイズを直しちゃったんだけど。
と訊いたら「また別のやつに売るだけだ」とあっけらかんと答えていた。お、男前……。
「すっごくいい。おじさん、これ、買わせて。お代は?」
「ああ。もうヴィデロ君に貰ったからいいっていいって。あとは鎧は出来上がってからな。どれだけ修繕費用が掛かるかわからんから」
「え?」
「はい。よろしくお願いします」
俺が再度驚いている間に、取引は成立していたらしい。
ヴィデロさんは俺の驚いた顔を見て、思わずといった感じで吹き出していた。
相変わらずスマートすぎるよヴィデロさん。かっこよすぎる。好き。
「あ、マック、そのブーツはあいつに返しておいてもいいからな。予備も注文しておいたから」
「おう。サイズはわかったからこっちで手直ししておくよ。鎧と一緒に渡すからな」
「え、え?」
買ってくれるだけじゃなくて、予備までちゃっかり注文してくれていたヴィデロさんに、俺はただ驚いた顔を向けることしかできなかった。
展開が早すぎるよ。でもようやくこのブーツをヴィルさんに返せるのは正直ほっとした。借りっぱなしは性に合わないから。
ヴィデロさんと並んで工房に帰って来る。
いつもは入り口で出迎えてくれる鎧がないっていうそれだけで、工房がなんだか寂しい感じがした。
いつも俺の剣を鎧の横に置いてるんだけど、ただ甲冑台の横に剣だけ置いていると、なんだか剣も寂しそうにしてるように見える。
ヴィデロさんもそれを感じているようで、ポツンと寂しく置かれている剣を見て苦笑していた。
「ヴィデロさん、神殿であの結晶を使った後、何か変わった?」
気になっていたのは、結晶の性能。俺の場合、その後錬金をしてジョブレベルを上げた瞬間普通だったらパーソナルレベルでしか上がらなかったHPとMPが上がったから、上限解放されていることが分かったわけだけど。っていうかジョブレベルでそこらへんが目に見えて上がるのはすごく助かる。今まではジョブレベルが上がっても、関連したスキルレベルとステータスが上がるくらいだったから。
でもヴィデロさんたちはそういうのは見えないから、どうやって実感するのかな。
「ああ。なんだか攻撃に魔力が乗りやすくなった。なんていうか、色んな事が出来るようになったっていうか、異邦人たちが使ってる攻撃方法が俺にも出来るようになった感じだ。昨日練習用のデクに向かって素振りをしたらいきなりその風圧でデクが砕けてちょっとだけ驚いだんだ。たまたま近くにいた団長が「それは『フィジカルブレイク』という攻撃だ」と教えてくれて。そういうのあんまり得意じゃなかったから、ああ、これだなって」
「うわぁ、ヴィデロさん普通でもすごく強いのに、剣のスキルもマスターしたんだ……。カッコいい……」
ヴィデロさんが雄太みたいなスキルをガンガン繰り出す想像をして思わずうっとりしていると、ヴィデロさんが吹き出した。
「マックはほんと……可愛いな」
「ヴィデロさんの方が可愛いのに何言ってんだよ」
思わず口を尖らすと、その口をチョンと唇で摘まれた。
ほら、ヴィデロさんの方が可愛いじゃん。
「俺を可愛いなんていうの、マックくらいだからな? どう見ても可愛いなんて柄じゃないだろ」
「でもすっごく可愛いしカッコいい。最高。好き」
目の前の垂涎の胸筋に抱き着きながらヴィデロさんを見上げてそう言うと、ヴィデロさんは嬉しそうに顔を綻ばせて、今度こそ本格的にキスをしてきた。
二人で寝室にこもって、愛し合う。
今はちゃんとそのままの姿で愛し合えるのが嬉しい。スタミナ回復できるのも嬉しい。
自作のローションを使って受け入れ態勢ばっちりにされた俺は、ヴィデロさんに向き合って座る様にして、ヴィデロさんを受け入れた。
すっぽりと包まれる感覚がたまらない。
背中に回される腕が力強くて最高。俺も余すところなくヴィデロさんの肌にくっついてられるのがまたすごくいい。
ヴィデロさんの首に腕を回して、キスをしながら揺すられる。
身体が落ちて行く度にヴィデロさんのヴィデロさんが奥をぐいぐい攻めてきて、重なる口の間から甘い吐息が洩れる。
ヴィデロさんの腹筋に擦れる俺のモノが奥を刺激されるたびに堪え性なく何かを流すけど、もう構ってられる状態じゃないくらい、熱が身体を支配していく。
好き。
大好き。
一緒に素材探しもいいけど。
一緒にクエストを受けるのもいいけど。
こうやって愛し合うのもすごく大好き。
でも何より好きなのは、ヴィデロさんが俺を見るその目。
それだけで、俺を愛してくれてるってすごくわかるくらいに熱のこもった目をしてるんだ。その目を見るだけで俺も更に身体に熱が上がって、ヴィデロさんのヴィデロさんを包み込む身体の中に力がこもる。その時に漏れるヴィデロさんの吐息も好き。
「ん……マック、マック」
「あ、ン……っも、イく、でる……っ」
「俺も、もう……っ」
奥にヴィデロさんの熱を感じて、俺の頭が弾けた。
最高潮の快感と、そしてグルグル渦巻いてた熱の放出による開放感に、思わず大きな声が出てヴィデロさんに抱き着く腕に力がこもる。
お腹の奥が熱い。気持ちいい。ヴィデロさんは気持ちいいかな。好き。
乱れた息のまま深いキスを交わして、さらに息が上がる。
ゆっくりとベッドに寝かされて、奥からヴィデロさんが抜けていく感覚に、またも掠れた声が自分の口から零れる。
冷たいシーツの感触が気持ちいい。でも、離れた肌がちょっとだけ寂しい。
と思った瞬間、今度は足を抱えられて、抜けていったヴィデロさんのヴィデロさんを名残惜しそうに求めていた俺の孔に、また熱が宛がわれた。
ヴィデロさん、スタミナが切れるまで愛し合ってくれるってことでいいのかな……!
覚悟しろよ。ちゃんと枕元にスタミナポーション二人分用意してたからね!
沢山愛し合った俺たちは、ログアウトのアラームが鳴るころに工房の玄関でキスと共に別れを告げた。
ヴィデロさんは明日は仕事。俺はバイト。
アリッサさんが神殿クエストのことで詳しく訊きたいと言ってたから、明日はアリッサさんも交えてADO話になると思う。
雄太たちは無事レベル200を超えたらしい。ドレインさんだけ199のまま止まってるとか。ハンカチを噛んで悔しがっていたと言っていた。残念。でも情報的には他のプレイヤーよりは一歩先んじてるわけだから。次こそ頑張って欲しい。
まだ体に残る熱を感じながら、ドアを閉めた俺は足元を見た。
結局は買ってもらったブーツ。とうとう防具はすべてヴィデロさんに買って貰っちゃったってことか。
今度こそ俺もあんな風にスマートにヴィデロさんにプレゼントしよう。今度こそ!
そう心に決めながら、ログアウトするために寝室に向かった俺なのだった。
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