これは報われない恋だ。

朝陽天満

文字の大きさ
上 下
321 / 830

318、英気はしっかりと養った

しおりを挟む
 錬金釜に向かってひたすら作業をして、出来上がった『感覚機能破壊薬センスブレイクドラッグ』の数は、100個を超えた。これで大きな魔物が100体くらい出てきても大丈夫だね。

 ブレイブに渡せば俺が投げるのなんかより確実に魔物にヒットさせてくれるから、試練の時に渡そう。

 時間を見ると、あと1時間ほどでログアウト時間だった。

 作り上げたブツを工房のインベントリにしまい込んで、俺は腰を上げた。

 明日からテスト勉強頑張らないと。赤点回避のために。

 そのために英気を養おうと思ってヴィデロさんの顔を見に行ったのにヴィデロさんがいなかったことを思い出して、俺は盛大に溜め息を吐いた。



 ちょっとだけお茶を飲んで落ち着いてから早めにログアウトしようと思ってキッチンに立っていると、ドアがトントン、とノックされた。

 こんな時間に誰だろ、と思いながら玄関に向かう。

 玄関を開けると、そこには。



「ヴィデロさん」

「マック。遅い時間にごめん。入ってもいいか?」

「うん! もちろん!」



 見たくて仕方なかった顔が目の前にあり、俺は一気にテンションが上がった。

 ヴィデロさんを招き入れ、早速今入れたばかりのお茶を出す。



「ご飯食べた? まだだったら何か食べる?」

「大丈夫、夜飯は食べてきた。それよりマック」



 ヴィデロさんはそこで言葉を止めると、自分の太腿をポンポンと叩いた。

 そして、おいでとばかりに手を広げた。

 抱っこですか? 行きますとも、もちろん!

 躊躇いなくヴィデロさんの膝の上に向かい合う様に跨り、胸に腕を回して顔をヴィデロさんの身体に押し付ける。

 全身でヴィデロさんを堪能。好き。

 ヴィデロさんも俺の背中に腕を回して、ギュッと力を込めて来る。

 ああ、幸せ。

 ヴィデロさんの顔を見たくて顔をあげると、すかさずチュッと唇が俺の口を啄ばんでくる。



「今日、門に会いに来てくれたんだって?」

「え、もしかして他の人に聞いた?」

「ああ。あんまりにもマックがしょんぼりしてたから慰めてこいよ、なんて言われた」



 あ、だから抱っこ状態なんだ。でも顔を見た瞬間すべてすっ飛んだよ。

 でも、ヴィデロさんは森の巡回が終わった後だから、疲れてるよね。



「しばらく顔を見れなそうだったからヴィデロさんに会いに行ったんだけど。ごめん、疲れてるのにそんな些細なことでここまで足を運ばせて」

「些細じゃないし、俺も顔を見たかった」



 視線を落として謝ると、ヴィデロさんがまたチュッとキスをした。

 それに応えるように俺からもチュッとすると、今度はしっかりと唇を重ねられた。

 気持ちいい。絡まる舌の感覚が腰のあたりにジン……と響く。

 リップ音を繰り返しながら、何度も何度も唇をくっつける。たまに啄ばまれるのがすごくいい。でも舌を絡められるのも好き。口の中を刺激されるとダイレクトに腰に響くし、ただチュッとされるだけでもふわっとなる。



「ヴィデロさ……ん、んん」

「明日もマックが忙しいのはわかってるんだ。でも」



 キスの合間に、ヴィデロさんが掠れたような腰にダイレクトアタックをかましてくれるようなエロい声で、囁く。



「愛し合いたい……」

「俺も」



 その声に胸を打ち抜かれた俺は、一も二もなく同意していた。







 ベッドに移動し、着ている物を脱ぎ捨て、ベッドの上で重なり合う。

 自家製の例のローションを使って、ヴィデロさんを受け入れられるくらいトロトロな状態にされた俺は、ヴィデロさんの生肌を手の平で、腕で、胸で、腹で堪能しながら、ヴィデロさんのヴィデロさんをしっかりと身体の奥まで受け入れた。

 ホットゼリーなんかよりもさらに滑らかにヴィデロさんを奥まで迎え入れられる潤滑香油の力で、俺はヴィデロさんの熱を余すところなく身体の奥で満喫した。





 ヴィデロさんが俺の中で果てた時には、すでに俺は潤滑香油の効果かヴィデロさんの技術テクかもしくはその両方の力で腹の上をがっちり白いモノで濡らしまくり、強すぎる快感で息も絶え絶え状態だった。自家製ランクB、ヤバかった。ヴィデロさんを受け入れてるところが何か違う器官になったような錯覚に陥るくらい、ヤバかった。ちょっと怖くなって思わず結合部を手で確認しちゃったけど、逆にヴィデロさんのヴィデロさんがぎっちり入ってるその場所を触った触感がやたらエロくてそっちに興奮した。

「マック……っ、手、触られると……っ」なんてさらに太くしたヴィデロさんがまたエロすぎて、心臓に悪かった。だって確認したかったんだもん。でもエロさを確認しただけだった。

 あんな風になるんだ、繋がってるところ……なんか、うん、凄かった……。

 一度出しただけで俺の中から出ていったヴィデロさんは、喘ぎ過ぎて出し過ぎてぐったりしている俺の髪を梳いておでこにチュッとしてから、そっと「スタミナポーション飲むか?」と訊いてきた。

 もうあとはログアウトするだけだからいいや、と思って首を振る。この心地よい疲れがさっきの余韻みたいで気持ちいい。まだ奥にはヴィデロさんがいるような感じがするのがなんかすごく愛し合った後なんだなってジンとする。

 濡らした布で身体を拭いてもらいながら、俺は顔をにやけさせるのだった。



 まだまだ蕩けてる中を誤魔化して服を着た俺は、ヴィデロさんを玄関先で見送ってから、寝室に戻った。

 時間はまだアラームの時間をちょっと過ぎたくらい。手加減ありありのエッチだった。でも今度はゆっくりヴィデロさんのスタミナが切れるくらいまで愛し合いたいなあ。

 そんなことを思って顔をにやけさせながら、ログアウトした。







 次の日のバイトで、俺はヴィルさんにもうすぐテストだからしばらくは勉強に集中したいということを話した。

 そしたらヴィルさんは目を輝かせて「懐かしいなあ」と呟いた。



「ここで勉強したらいいんじゃないか? こういうテストで成績がいまいちの場合、大抵は自分で効率のいい勉強方法を確立させていない人が多いから。そんな人は自分一人で勉強するより、教わった方が成績が上がりやすいんだ。それに何時間もダラダラ勉強するより、要点を見つけてそこを集中的にした方がいい。特に数学なんかはそれだ。ちょっとした公式を覚えたらそこからの応用がほとんどだから、一つを理解すれば同じ種類の問題はだいたい解ける。要するに、勉強は時間よりも要領なんだ。もしかして健吾は、ただ教科書に載っている例題をだらだら解いてるだけじゃないか?」



 あ、まさにそれです……。教科書を読んでノートに書き写して、教科書付属のワークをただ解いていくだけ。現国の先生なんかはワークさえやっときゃ点数は取れるとか言うけど、やっても取れないのは実証済み。だってワークにはない問題がテストに出るんだもん。



「健吾、良ければ教科書を見せてくれないか? 出来ればテストの教科全部」



 俺は自分の鞄を開けて、辛うじて持っていた4教科分の教科書を取り出して、ヴィルさんの前に重ねた。

 ヴィルさんはまたも「懐かしい」と呟くと、一冊手に取って開いた。

 そして、テスト範囲を訊いてきた。俺が付箋の所だと教えると、ヴィルさんはそこを開いてペラペラと中身を見始めた。

 そして、机の引き出しを開けて、赤いペンを取り出した。

 きゅー、と教科書に線を引いていく。

 五分後くらいに教科書を返してもらったけれど、テスト範囲内はすべて赤いペンでチェックされていた。



「その線を引いたところが記憶に残すところだ。あとの例題はいらない。その公式に数字を当てはめたらどんな問題でも解けるから」

「え」



 驚いて赤い線の所を見ていると、二冊目の教科書にも赤ペンで何かを書いていた。

 それも受け取って中を見る。こっちもあらゆるところに赤ペンで何かが書かれている。

 4つの教科書すべてに目を通したヴィルさんは、赤ペンをしまうと、はい、と教科書を全て俺に返してくれた。

 今チェックしたところを重点的にやればある程度の点数は取れるらしい。満点を取る気がないなら、それで十分だそうだ。満点なんか望んでない、赤点じゃなければいい。って、志が低いのはわかってるよ。





 家に帰り着いて、部屋で教科書を開いて、ヴィルさんがチェックしたところを見ていく。そしてそれを覚えるべくノートに書き写す。

 一教科分の赤ペンチェックを書き上げたところで、日付が変わったことに気付いた俺は、そろそろ寝ないと明日の授業がヤバいから、と教科書を閉じた。

 一日で一教科分の勉強ができてしまった。もちろんヴィルさんがチェックしたところだけだけど。

 とりあえずテスト範囲内のワークは提出しないといけないから、明日はこの教科のワークを埋めて、それから他のをしよう。そう心に決めて、俺は風呂に入るべく階下に向かった。



 そういえばヴィルさん、会社で勉強すれば、とは言ったけど、バイト日を減らすとは全く言ってなかったな、とふと気付いたのは、湯船に浸かってふー、と息を吐いてからだった。



しおりを挟む
感想 503

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...