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299、やっぱりヴィデロさんは可愛くてヤバい
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詳しく時間と継続した日取りを決めたヴィルさんは、満足げに石化したままだったジャル・ガーさんの腕をポン、と叩いて、『ああ!』と声を上げた。
『呪われた……』
『もう! ヴィデロと違って手がかかりすぎる!』
宙を見上げて呆然としているヴィルさんに、クラッシュが呆れながらディスペルハイポーションを渡す。
それを一気飲みしたヴィルさんが、今度は『呪いが消えた』と呟いたのを聞いたクラッシュが、ブッと吹き出していた。美形は吹き出してもマジ美形だった。
『もう、当たり前でしょ。解呪薬なんだから』
『そうだったのか。なかなか面白いな』
『俺的には不安しかないよ……』
笑いながらもそう突っ込むクラッシュに、ヴィルさんが笑顔を向ける。
そしてジャル・ガーさんに振り返り、『とても有意義な時間だった。ありがとう。今度ぜひ俺お薦めの酒を届けよう』と声を掛けたところで、ジャル・ガーさんに掛かっていた酒が完全に乾いて元の石像に戻っているのに気付いたらしいヴィルさんは、『なるほど呪いの石像か』と改めてジャル・ガーさんを見上げた。
ケインさんはいつの間にかいなくなっていた。
クラッシュに『そろそろ帰るよ』と手を差し出されて、ヴィルさんは嬉しそうにその手をしっかりと繋いだ。触れてればそれで跳べるのに。
トレの雑貨屋の中に帰ってきたヴィルさんは、『折り入ってお願いがあるんだ』と徐にクラッシュに声を掛けた。
『改まって何?』
『次の時もまたあの洞窟に連れて行って欲しいんだ』
繋いでいたクラッシュの手をそのまま両手で握りしめて、ぐいと身体を近づける。
ちょっとだけクラッシュの身体が仰け反ってるのが、一方的に迫ってるようにしか見えないんだけど。でも美形同士だから絵面がいいなあ。
『あのさあ、俺もあんまり店を空けれないんだけど。マックだっているんだから、マックに頼めばいいじゃん。事情を説明してさ』
『そうか、その手もあったな。こっちとあっちで同時に確認できるのは凄くいいかもしれない。そうと決まれば早速あの部屋にここと繋がるモニターを用意しないとだな。専用ギアも必要になるかもしれない』
ヴィルさんが目を輝かせてるけど、俺まだ了承してないから。まあバイトの延長とか言われそうだから諦めるけど。
そんなことを思っていたら、佐久間さんがくくくと笑った。
「あいつは人使いが荒いから気を付けろよ。ってもう見初められた時点でアウトか」
人使いが荒そうなのはわかるけど。それとわかっていてここに転職してきた佐久間さんはもしかしてMなのかな。人は見た目によらないな。
そんな失礼なことを考えながら、ヴィルさんが意気揚々とクラッシュの店を出ていく画面に視線を向ける。
そしてふと気付く。ヴィル鳥がいないのにどうして映像が届くんだろう。
そのことを佐久間さんに聞くと、あの鳥は映像も拾えるけど、主にこっちからメッセージを届けるのを主とした物なんだって教えて貰った。もちろん鳥の目からも映像を拾えるけど、なんかそういう機能を付けた専用ギアをヴィルさんが使ってるからこうやって映像を拾えるらしい。もちろん俺たちの一般ギアにはそんな機能は付いてない。だからゲームフェスタの時みたいに一般のプレイヤーにモニターを頼むときは、ヴィル鳥を飛ばすんだって。
ヴィル鳥もアバターらしくて、それを飛ばす許可を出してるのがアリッサさんだとか。
じゃあヴィル鳥もちゃんとこっちのプレイヤーと同じように魔素で出来た身体なのかな。ってことは……。
「ヴィル鳥ってもしかして、魔物に食べられたら死に戻りする、とか……?」
「するんじゃねえ? 食べられたことはねえけど。面白いから今度あの鳥を魔物に突っ込ませてみるかな」
「精神衛生上よろしくないのでそれはない方向でお願いします」
佐久間さんの残酷な提案に、俺はがっくりと肩を落としつつも、頭の中ではヴィル鳥は不死鳥だったんだ、とちょっとだけ愕然とするのだった。不死鳥のイメージが崩れそうな気がする。
画面の中では、ヴィルさんが丁度工房に辿り着いたところだった。あそこは鍵に俺とヴィデロさんとヴィルさんの名前を登録してあるから、ヴィルさんはいつでもどこでも工房に入れるようになっている。だって俺がログインしてないときに今日みたいに街を歩いて帰ってきたら工房に入れませんでした、なんてなったら笑えないし。道端で死んだように転がるヴィルさんのアバターが出来上がっちゃうからね。
静かな工房に入ってきたヴィルさんは、一度周りを見渡してから、そのまままっすぐヴィルさんの部屋に戻っていった。工房と繋がったキッチンを通って来たせいか、ヴィルさんの部屋はとても狭く感じる。だってベッドしか置かれてないし。でも暗かったというヴィルさんの言葉の後にしっかりと明かりを取り入れて、殺風景な部屋にちょっとだけ観葉植物っぽい物を天井からつるしたせいか、狭いなりにいい感じの見た目にはなったと思う。カイルさんお薦めの植物だから見た目もばっちり。ヴィルさんは自分の部屋を見回して、ふむ、と頷いた。
『何とかしてこっちで金を稼ぐか。もう少しこの部屋を広くしたいな。いくらかかるのか……。それにしても健吾は既に一国一城の主か』
満足そうな表情でベッドに転がると、ぷつっと画面が消えた。そして、ヴィルさんが身体を起こす。
被っていたギアを取り外し、皆が近くのモニターに集まっていたのを確認すると、目があった俺ににっこりと笑った。
「見ていたんなら話は早い。ということで頼んだよ、健吾」
「もはや決定事項なんですね……」
「天使の推薦だからね。それに、俺も適任だと思う。それにちゃんと業務として取り入れるから、バイト代は発生させるよ。もちろん護衛に弟を連れて行っても全然かまわない。ただし、俺は見ているけどな。もしかしたら佐久間も見ているかもしれないから、そこらへんはほどほどに」
「だから俺、まだ未成年なんですって。もうすぐ18歳解禁ですけど!」
「……東洋の神秘ね」
本気で感心しているようなアリッサさんの言葉に撃沈した俺。アリッサさんの目には俺がどれだけおこちゃまに見えているのか。かなり気になる。
死守していたご飯をヴィルさんに出してから、いつもより遅い時間に俺は帰路についた。アリッサさんが心配して送ってあげると言っていたけど、自転車だから。そしてアリッサさんの方が女性だし心配だから、と遠慮すると、アリッサさんは笑っていた。
いつものように、門に立つヴィデロさんを見つけて激突していく。
難なく俺を抱き止めてくれたヴィデロさんは、すぐに面を上げて笑顔を見せてくれた。そして、俺の肩にヴィル鳥がいるのに気付いたヴィデロさんは、スッと目を細めてその鳥をじっと見つめた。
『遅くまで仕事大変だな』
視線の横にログが表されて、鳥がピヨと鳴く。
ヴィデロさんはそれに答えるように頷くと、スッと指を鳥に差し出した。俺は通訳してないのに、言われたことがわかったのかな。ヴィデロさんすごい。
ヴィデロさん、なんだかんだでヴィル鳥を気に入ってるんだろうなあ。いる時は必ず自分の肩にとめるし。トトトと指に移動するヴィル鳥をほんわか見ていると、ヴィデロさんは鳥を手に乗せたまま「出かけて来るのか? 気を付けて行ってこいよ」と笑顔を見せてくれた。
「うん。でも工房から跳ぶから大丈夫。ただヴィデロさんを一目見てからと思って」
「そうか。俺もマックの顔が見たかったから嬉しい。本当は俺も行きたいんだけどな」
溜め息を吐きながらちらりと隣の門番さんを見る。その門番さんも面を上げて、ニヤリと笑った。ブロッサムさんだった。
「流石に何もねえ時は仕事させるからな。今日はおとなしく指を咥えてマックを見送れや」
「……だそうだから、ここを離れられないんだ」
諦めたように溜め息を吐いたヴィデロさんが可愛いです。隣ではブロッサムさんが楽しそうにニヤニヤしてるし。ヴィル鳥はそっちに視線を向けて、ブロッサムさんをじっと見ていた。
そして、ぴよ。
『弟をよろしくお願いします』
思わず吹きそうになっても悪くないと思う。鳥が真面目にそんなことを言うその姿がシュールすぎておかしい。
顔を伏せてフフフと耐え切れなくて笑うと、ヴィデロさんは指を上げてじっと鳥を見た。ちょっとだけ真顔で「一体ブロッサムに何を言ったんだ?」なんて訊く姿がまた可愛くてヤバい。
鳥もピヨピヨとヴィデロさんに説明してるけど、それを読んで伝えるのは俺だから。ヴィデロさんには全く伝わってないから。
「じゃあそろそろ行くね」
ヴィデロさんにそう言うと、ヴィデロさんは名残惜し気に眉尻を下げて、仄かに口元を緩めた。そして「気を付けて」と改めて呟く。その手ではヴィル鳥が飛び立とうと羽根をバタバタさせてるけど、ヴィデロさんの手から飛び立たないでいるようだった。あ、ヴィデロさんに足を掴まれてる。もしかして持っていたいのかな。ヴィル鳥も可愛いからね。
『指から嫉妬の感情がじわじわと伝わってくるようだよ……ところで放してくれないかな、弟』
ホンワカと2人の光景に和んでいると、そんなヴィルさんの言葉が可視化されて、そして目の前ではバサバサしている鳥がピヨピヨ鳴いた。え、もしかしてヴィル鳥が可愛いからじゃなくて嫉妬してたのヴィデロさん。うわぁ、そんなヴィデロさんも好き。だけど鳥は放してね。
ブロッサムさんに軽くぺしっとされてようやくヴィル鳥を放したヴィデロさんに別れを告げて、門を出ずに工房に戻る。
そして工房で持ち物をチェックして、俺はヴィル鳥を連れてジャル・ガーさんの洞窟に跳んだ。
これから物質を転移する実験を開始するんだ。
『呪われた……』
『もう! ヴィデロと違って手がかかりすぎる!』
宙を見上げて呆然としているヴィルさんに、クラッシュが呆れながらディスペルハイポーションを渡す。
それを一気飲みしたヴィルさんが、今度は『呪いが消えた』と呟いたのを聞いたクラッシュが、ブッと吹き出していた。美形は吹き出してもマジ美形だった。
『もう、当たり前でしょ。解呪薬なんだから』
『そうだったのか。なかなか面白いな』
『俺的には不安しかないよ……』
笑いながらもそう突っ込むクラッシュに、ヴィルさんが笑顔を向ける。
そしてジャル・ガーさんに振り返り、『とても有意義な時間だった。ありがとう。今度ぜひ俺お薦めの酒を届けよう』と声を掛けたところで、ジャル・ガーさんに掛かっていた酒が完全に乾いて元の石像に戻っているのに気付いたらしいヴィルさんは、『なるほど呪いの石像か』と改めてジャル・ガーさんを見上げた。
ケインさんはいつの間にかいなくなっていた。
クラッシュに『そろそろ帰るよ』と手を差し出されて、ヴィルさんは嬉しそうにその手をしっかりと繋いだ。触れてればそれで跳べるのに。
トレの雑貨屋の中に帰ってきたヴィルさんは、『折り入ってお願いがあるんだ』と徐にクラッシュに声を掛けた。
『改まって何?』
『次の時もまたあの洞窟に連れて行って欲しいんだ』
繋いでいたクラッシュの手をそのまま両手で握りしめて、ぐいと身体を近づける。
ちょっとだけクラッシュの身体が仰け反ってるのが、一方的に迫ってるようにしか見えないんだけど。でも美形同士だから絵面がいいなあ。
『あのさあ、俺もあんまり店を空けれないんだけど。マックだっているんだから、マックに頼めばいいじゃん。事情を説明してさ』
『そうか、その手もあったな。こっちとあっちで同時に確認できるのは凄くいいかもしれない。そうと決まれば早速あの部屋にここと繋がるモニターを用意しないとだな。専用ギアも必要になるかもしれない』
ヴィルさんが目を輝かせてるけど、俺まだ了承してないから。まあバイトの延長とか言われそうだから諦めるけど。
そんなことを思っていたら、佐久間さんがくくくと笑った。
「あいつは人使いが荒いから気を付けろよ。ってもう見初められた時点でアウトか」
人使いが荒そうなのはわかるけど。それとわかっていてここに転職してきた佐久間さんはもしかしてMなのかな。人は見た目によらないな。
そんな失礼なことを考えながら、ヴィルさんが意気揚々とクラッシュの店を出ていく画面に視線を向ける。
そしてふと気付く。ヴィル鳥がいないのにどうして映像が届くんだろう。
そのことを佐久間さんに聞くと、あの鳥は映像も拾えるけど、主にこっちからメッセージを届けるのを主とした物なんだって教えて貰った。もちろん鳥の目からも映像を拾えるけど、なんかそういう機能を付けた専用ギアをヴィルさんが使ってるからこうやって映像を拾えるらしい。もちろん俺たちの一般ギアにはそんな機能は付いてない。だからゲームフェスタの時みたいに一般のプレイヤーにモニターを頼むときは、ヴィル鳥を飛ばすんだって。
ヴィル鳥もアバターらしくて、それを飛ばす許可を出してるのがアリッサさんだとか。
じゃあヴィル鳥もちゃんとこっちのプレイヤーと同じように魔素で出来た身体なのかな。ってことは……。
「ヴィル鳥ってもしかして、魔物に食べられたら死に戻りする、とか……?」
「するんじゃねえ? 食べられたことはねえけど。面白いから今度あの鳥を魔物に突っ込ませてみるかな」
「精神衛生上よろしくないのでそれはない方向でお願いします」
佐久間さんの残酷な提案に、俺はがっくりと肩を落としつつも、頭の中ではヴィル鳥は不死鳥だったんだ、とちょっとだけ愕然とするのだった。不死鳥のイメージが崩れそうな気がする。
画面の中では、ヴィルさんが丁度工房に辿り着いたところだった。あそこは鍵に俺とヴィデロさんとヴィルさんの名前を登録してあるから、ヴィルさんはいつでもどこでも工房に入れるようになっている。だって俺がログインしてないときに今日みたいに街を歩いて帰ってきたら工房に入れませんでした、なんてなったら笑えないし。道端で死んだように転がるヴィルさんのアバターが出来上がっちゃうからね。
静かな工房に入ってきたヴィルさんは、一度周りを見渡してから、そのまままっすぐヴィルさんの部屋に戻っていった。工房と繋がったキッチンを通って来たせいか、ヴィルさんの部屋はとても狭く感じる。だってベッドしか置かれてないし。でも暗かったというヴィルさんの言葉の後にしっかりと明かりを取り入れて、殺風景な部屋にちょっとだけ観葉植物っぽい物を天井からつるしたせいか、狭いなりにいい感じの見た目にはなったと思う。カイルさんお薦めの植物だから見た目もばっちり。ヴィルさんは自分の部屋を見回して、ふむ、と頷いた。
『何とかしてこっちで金を稼ぐか。もう少しこの部屋を広くしたいな。いくらかかるのか……。それにしても健吾は既に一国一城の主か』
満足そうな表情でベッドに転がると、ぷつっと画面が消えた。そして、ヴィルさんが身体を起こす。
被っていたギアを取り外し、皆が近くのモニターに集まっていたのを確認すると、目があった俺ににっこりと笑った。
「見ていたんなら話は早い。ということで頼んだよ、健吾」
「もはや決定事項なんですね……」
「天使の推薦だからね。それに、俺も適任だと思う。それにちゃんと業務として取り入れるから、バイト代は発生させるよ。もちろん護衛に弟を連れて行っても全然かまわない。ただし、俺は見ているけどな。もしかしたら佐久間も見ているかもしれないから、そこらへんはほどほどに」
「だから俺、まだ未成年なんですって。もうすぐ18歳解禁ですけど!」
「……東洋の神秘ね」
本気で感心しているようなアリッサさんの言葉に撃沈した俺。アリッサさんの目には俺がどれだけおこちゃまに見えているのか。かなり気になる。
死守していたご飯をヴィルさんに出してから、いつもより遅い時間に俺は帰路についた。アリッサさんが心配して送ってあげると言っていたけど、自転車だから。そしてアリッサさんの方が女性だし心配だから、と遠慮すると、アリッサさんは笑っていた。
いつものように、門に立つヴィデロさんを見つけて激突していく。
難なく俺を抱き止めてくれたヴィデロさんは、すぐに面を上げて笑顔を見せてくれた。そして、俺の肩にヴィル鳥がいるのに気付いたヴィデロさんは、スッと目を細めてその鳥をじっと見つめた。
『遅くまで仕事大変だな』
視線の横にログが表されて、鳥がピヨと鳴く。
ヴィデロさんはそれに答えるように頷くと、スッと指を鳥に差し出した。俺は通訳してないのに、言われたことがわかったのかな。ヴィデロさんすごい。
ヴィデロさん、なんだかんだでヴィル鳥を気に入ってるんだろうなあ。いる時は必ず自分の肩にとめるし。トトトと指に移動するヴィル鳥をほんわか見ていると、ヴィデロさんは鳥を手に乗せたまま「出かけて来るのか? 気を付けて行ってこいよ」と笑顔を見せてくれた。
「うん。でも工房から跳ぶから大丈夫。ただヴィデロさんを一目見てからと思って」
「そうか。俺もマックの顔が見たかったから嬉しい。本当は俺も行きたいんだけどな」
溜め息を吐きながらちらりと隣の門番さんを見る。その門番さんも面を上げて、ニヤリと笑った。ブロッサムさんだった。
「流石に何もねえ時は仕事させるからな。今日はおとなしく指を咥えてマックを見送れや」
「……だそうだから、ここを離れられないんだ」
諦めたように溜め息を吐いたヴィデロさんが可愛いです。隣ではブロッサムさんが楽しそうにニヤニヤしてるし。ヴィル鳥はそっちに視線を向けて、ブロッサムさんをじっと見ていた。
そして、ぴよ。
『弟をよろしくお願いします』
思わず吹きそうになっても悪くないと思う。鳥が真面目にそんなことを言うその姿がシュールすぎておかしい。
顔を伏せてフフフと耐え切れなくて笑うと、ヴィデロさんは指を上げてじっと鳥を見た。ちょっとだけ真顔で「一体ブロッサムに何を言ったんだ?」なんて訊く姿がまた可愛くてヤバい。
鳥もピヨピヨとヴィデロさんに説明してるけど、それを読んで伝えるのは俺だから。ヴィデロさんには全く伝わってないから。
「じゃあそろそろ行くね」
ヴィデロさんにそう言うと、ヴィデロさんは名残惜し気に眉尻を下げて、仄かに口元を緩めた。そして「気を付けて」と改めて呟く。その手ではヴィル鳥が飛び立とうと羽根をバタバタさせてるけど、ヴィデロさんの手から飛び立たないでいるようだった。あ、ヴィデロさんに足を掴まれてる。もしかして持っていたいのかな。ヴィル鳥も可愛いからね。
『指から嫉妬の感情がじわじわと伝わってくるようだよ……ところで放してくれないかな、弟』
ホンワカと2人の光景に和んでいると、そんなヴィルさんの言葉が可視化されて、そして目の前ではバサバサしている鳥がピヨピヨ鳴いた。え、もしかしてヴィル鳥が可愛いからじゃなくて嫉妬してたのヴィデロさん。うわぁ、そんなヴィデロさんも好き。だけど鳥は放してね。
ブロッサムさんに軽くぺしっとされてようやくヴィル鳥を放したヴィデロさんに別れを告げて、門を出ずに工房に戻る。
そして工房で持ち物をチェックして、俺はヴィル鳥を連れてジャル・ガーさんの洞窟に跳んだ。
これから物質を転移する実験を開始するんだ。
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