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201、コツは筋肉と祈り
しおりを挟む「だぁから、違うって。そこはね、もう少しだけ緩急つけて、薬草のイイところを壊さないように磨るんだよ」
「ええと、こう、ですか?」
「違ぁう! 兄ちゃんのやり方は寝てるやつをぶっ叩いて起こしてるようなもん。もっとこう、優しく」
「こう、ですか?」
「んー、ダメダメ」
俺は今、オレンジ色の狐さんの弟子になってる。
そして、薬草の磨り方から習っている。
そして、3日間程ひたすら基礎から上級調薬までの流れをやらされている。
最初から最後まで、ダメ出しの連発。
「何ていうかなあ、ここに薬草の葉脈が走ってるだろ? それを無理にすり潰すと、葉が痛がって苦い成分を出すわけよ。でもね、優しく労わるように磨ると、それだけで味が段違い、効能も段違いになるわけだ。兄ちゃん人族の割にはなかなかいい素材を持ってるんだから、せっかくだからその素材のすべての力を使ってあげたいじゃん」
「はい、ヒイロ先生!」
一生懸命ヒイロさんの手つきを真似するけれど、全然上手くできなくて思わず肩が落ちる。
そんな俺を見かねてか、ヒイロさんの手が俺の肩の上にポンと乗った。
「まあ人族にしては手つきがいいんじゃないかとは思わなくもないからさ、そんなに落ち込むなよお。あ、そうだ。こういうのは? 例えばねえ、番が凄く疲れてる時に、ゆっくり優しく身体を揉んであげるような感じっての?」
「ゆっくり優しく揉んで」
先生、俺、ヴィデロさんにそんなことしたことありません。
マッサージとか全然、してあげたこと、ない。
疲れてたりするかもしれないのに、ご飯を食べさせるばっかりで、あとは俺の方がヴィデロさんの胸筋で癒されてるだけだった。
俺、優しくない……。
サアッと青くなると、それを見たヒイロさんもまた、あわあわし始めた。
「何、兄ちゃん番を労わったことないの?! えええ、どうしよう、そんな子がいるなんて想定したことなかった……」
「お、俺、やっぱりドン引きされるほど優しくないですか……?」
「い、いや、兄ちゃんたちはまだ若いし、これからだから……」
慰めを口に出しつつ、信じられないことを聞いてしまったと顔に書いてあるヒイロさんは、落ち切った俺の肩をポンポンと何度も優しく叩いた。
「ヴィデロさんの筋肉を、揉み解すように、こわばった筋肉を、柔らかくして伸ばすように」
想像力を最大限に働かせ、手を動かす。そしてほうれん草のお浸しのようになった薬草を上級調薬キットに詰め込む。
魔法で出した水でキット内を満たし、優しく円を描くようにガラス棒でかき混ぜる。
次々素材を中にそっと入れつつ、まじりあう様にテンポよくかき混ぜる。このテンポが、丁度祝詞のテンポに重なるので、思わず心の中で祝詞を唱える。これ、口に出して祝詞を唱えながらこれを作ったらまた違うものが出来るのかな。それとも失敗になるのかな。
そんな雑念は失敗につながる。
黒くなった液体に、またも俺は肩を落とした。
「何考えてたんだい? 途中まではなかなかだったんだけど」
「いえあの、魔法で出した水なんだから、もしこれをかき混ぜながら祈りを唱えてたら、聖水成分が入っちゃってまた違ったものが出来るのかなって」
「ほうほう、やったことはないねえ。聖水を加えるんじゃなく、途中で聖水にすると。面白いねえ。なかなかいい発想だ。一度ちゃんと今の調薬が出来たら、やってみよう」
「はい」
ポン、と楽しそうに手を打つヒイロさんに促されて、また一から作り直していく。今度こそ、集中。
グルグルと液体を混ぜ、出来上がりを示す気泡がぽこん、と出たところで火を止める。
獣人の村でしか手に入れられないろ紙を使って、それを濾して瓶に詰めると、初めての上級調薬アイテムが出来上がった。ああ、スタミナが激減り。集中したからなあ。
「ハイパーポーション、ランクD……」
初めての物を作った感動よりも、ランクDというのが目について、思わず吐息が洩れる。
「初めてにしては上出来だよ。中には何度やっても失敗しかしない奴だっているんだからね。兄ちゃんは向いてるよ」
「そんなもんでしょうか」
「もちろん。コツを掴んだみたいだねえ。人族は目も耳も鼻もあんまり利かないからコツを掴むまでが大変だって聞いたことあるのに」
コツは、筋肉と祈りです。真顔でそう返した瞬間、ヒイロさんは飲んでいたお茶をぶっと盛大に吹き出した。「き、き、筋肉……。調薬のどこに筋肉要素が……腹が捩れる」と椅子から滑り落ちて笑い転げている。そんな面白いこと言ったつもりないんだけど。と首を捻っていると、部屋のドアが開いた。
汗だくになったヴィデロさんが外から戻ってきたところだった。
楽しそうなというか笑いの発作で苦しそうなヒイロさんを見て、ちょっとだけ表情を和ませた。
「ヴィデロさんお疲れ様。汗だくだよ」
「ああ。皆が強すぎて、ついていくのがやっとだ。毎回俺はまだまだひよっ子なんだなって思い知らされる」
「ヴィデロさんほどの人がそんなことを言うなんて。ほんとに獣人の身体能力ってすごいんだね。毛並みだけでもすごいのに。いいなあ凄いなあ」
ヴィデロさんの汗を布で拭きながら思わずそう零すと、ようやく復活しかけていたヒイロさんがまた笑い声をあげた。
「毛並み! 兄ちゃんが気にするの、俺らの知識でも技術でもなく、毛並みなのか!」
「だって、モフモフって撫でてるだけで嫌なこと忘れそうだし」
うちは日中家に誰もいなくなるから、ペットを飼えないし。飼っていいよとは言われても、一日中一人でただ家で待つその子を想うと、飼うなんて気楽に言えないし。
出そうになった溜め息を呑み込んで、俺はさっき初めて作り上げた『ハイパーポーション』を手に持った。
「ヴィデロさん、これ、さっき初めて成功したんだ、ハイパーポーション。上級調薬のポーションなんだけど、最初の物はヴィデロさんに飲んで欲しくて」
「そんな物が作れるようになったのか……。俺が飲んでもいいのか?」
「これからはもっとたくさん作るから、だから、最初の一本だけはヴィデロさんに飲んで欲しくて」
そっと差し出すと、ヴィデロさんは嬉しそうに顔を綻ばせながらそれを受け取ってくれた。
そこに、後ろからケンケンと咳払いが聞こえて来た。
「今日の修行は終わりにするかい? 発情したんなら奥に行きなよ。兄さん身体が大きいから無理させないように発情を少しだけ抑える薬も処方しようか?」
いやでも俺まだ成人してないから。と断ると、ヒイロさんは「そっか? でもそっちの兄ちゃんは発情期前っぽい匂いがしたんだけどな」と首を捻ってヴィデロさんを撃沈させていた。
結局は、さらに二日、獣人の村で俺とヴィデロさんは過ごした。
ヴィデロさんはもう石像には戻らないというオランさんと毎日稽古をし、悔しそうにしながらもオランさんの強さを敬っていた。時折「これじゃマックを守れない」という呟きが聞こえるから、ヴィデロさんはオランさんにも勝てる腕をオランさん本人から学び身に着けようとしてるみたいだった。
俺は俺で必死でヒイロさんの課題をこなしていた。
無造作にこれを作ってみな、と上級レシピを渡されたり、これにひと手間加えてみな、と中級レシピを差し出されたり。なんだか学校の宿題みたいでちょっとげんなりするけど、出来ないって言うとハードルがガクンと下がった課題が出されるのが悔しくて、必死で最初に出された課題をこなしている。
でもそのおかげで、ぐいぐいレベルは上がっていった。
最初は半分以上が黒い液体になっていたハイパー系のポーション各種も、ランク自体は低いけど安定して作れるようになった。
そして、その手つきで中級を作り始めたら、ランクS以外が出来なくなった。下級でも中級でもあの基礎は大事なんだな、とヒイロさんの無茶修行をちょっとだけありがたく思った。コツは筋肉と、祈り。
調薬途中に祈って聖水を作り出すという作業は、殊の外面白い効能が付くことがわかり、ヒイロさんを大いに喜ばせた。
なにが出来たかというと、『ホーリーハイポーション』という、ヒイロさんも作ったことがなかった回復薬。飲むとしばらく聖属性が付き、穢れた魔物に傷付けられても穢れなくなるというものだった。
ヒイロさんは面白がって、俺から祈りを教わり、すぐにマスターしていた。すごい、器用。
聖水茶も今ではヒイロさんとケインさんのお気に入り。二人は「これを飲むとなんか腹の奥が『はー、清められたー』ってなるんだよなー」とわけのわからないことを言っていた。それは獣人さんたちには通じることのようで、獣人さんたちは皆聖水茶が気に入り、祈りを覚えたヒイロさんは聖水茶で商売でも始めようかな、なんてほくそえんでいた。
獣人の村でログインログアウトをしていて、あと三日くらいで学校始まるんだよなあ、とヒイロさんとお茶をしながら溜め息を呑み込んだ。冬休みの課題はもう終わらせたからいいんだけど、そろそろ流石にヴィデロさんを帰さないとダメだよなあ、と窓の外で犬の獣人さんと剣を合わせているヴィデロさんを見ながら思う。
本当はもっと早くにトレに帰るはずだったんだよな。ごめんなさいブロッサムさん。
宰相の人にディスペルハイポーションを届けたのが大分前のことのようだ。もうヴィデロさんも全快だし俺も色々と身に着けたし、ヴィデロさんと話し合い、とうとう俺達は次の日に帰ることにした。
俺は漸く上級調薬のレベルが10まで上がった。まだ蘇生薬は作れないけれど、絶対に腕を上げるから。
ヒイロさんとケインさんがそっくりの顔をして「またおいで」と言ってくれたので、またここに来る約束をして、帰りの道を教えて貰う。
帰りは俺の魔法陣を使わなくても、転移の魔法陣が施された場所があったので、すぐにジャル・ガーさんの洞窟に帰り着くことが出来た。
トレに帰ろう、とどちらともなく口に出して、俺達はほんの2時間だけだけど最後に徒歩の旅を楽しんだ。
そして、トレに帰り着くと、俺とヴィデロさんは、生死不明者として捜索依頼が出されているのを知った。
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