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155、飛び込みバイト
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一度ログインして、俺はカイルさんの所に向かった。もちろん、細胞活性剤各種をたくさん持って。
昨日の出来事を説明すると、カイルさんは快く頷いてくれた。
「ナスカ村かあ。あそこの村長いるだろ。あの人な、前はここの領主をやっていたお人でなあ。俺達街民のことを一番に考えていい市制を敷いてくれてたんだよ。その後のやつが最悪だったから余計にあの頃はよかった、って思ってなあ」
「うん。すごくいい人だった。だから、もしあの村がまた魔物に襲われそうになったら、破香の木の手入れをよろしく」
「言われなくてもやってやるよ。俺はあの村の人たちに少なからぬ恩があるんでな」
「なんかカイルさんも年老いて農園をやれなくなったらナスカ村に移住しそう」
「お、それもいいなあ」
何気なく呟いた言葉に、カイルさんがニヤリと笑う。
そしたらきっとあの村は今以上に安泰だよな。何せ植物エキスパートが行くってことだから。
「あ、っとそうだった。俺やることあるんだった」
「おう、頑張れよ」
カイルさんに手を振って、工房に戻ってくる。
話し込んじゃって結構時間が経ったよ。
ベッドに転がって目を閉じて、ログアウトする。
自分の部屋で目を開け、ギアを外すと、今着てるジャージを脱いで、一応外を歩いても恥ずかしくはないような服に着替えた。
自転車に乗って、近場のスーパーマーケットに向かう。
途中、初めてヴィルさんと会ったファストフード店の横を通り抜けざまちらりと横目で見ながら、目的の場所に向かう。
天気がいいから自転車が気持ちいい。
風がちょっと肌寒いけど、日差しがあったかいから相殺されてる。
自転車を駐輪場に停めて、店の中に入っていくと、まだ午前中なせいか、お客さんはまばらだった。
メモを見ながら次々かごに入れていき、頼まれた物と俺用お菓子を手に清算に向かう。
袋に買い物した物を詰め込んで、自転車の所に戻った。
家に帰ったらログインしよ。祈りを使ってみよう。聖水、一回作ってみたいな。でも問題がひとつある。俺、水魔法を使えない。どうやって水を出そう。
そんなことを考えながら自転車にまたがる。
すると、後ろからプップーという車のホーンの音が鳴り響いた。
俺邪魔しちゃったかな、と慌てて後ろを振り向くと、すぐ横の駐車場に日本製ではない車が停まっていた。
薄いスモークが貼られた窓が静かに開く。
そこから顔を出したのは、ヴィルさんだった。
今日も高そうなスーツを着ていて、こんなスーパーマーケットにはとてもそぐわない雰囲気を醸し出していた。
「健吾。おはよう。今日は学校サボりか?」
悪気なくにこやかにそう声を掛けられ、俺は慌てて「違います!」と否定した。サボりなんて人聞きが悪いよ!
「そんなヴィルさんは今日も寝坊ですか?」
意趣返しにそう質問すると、ヴィルさんは驚いたように目を開いた。
「どうしてわかるんだ。健吾はエスパーか?」
本気で言ってるのか俺を揶揄っているのか全く分からなかった俺は、溜め息を吐いて「じゃあ、気を付けてお仕事行ってくださいね」と自転車をこぎ始めた。
さっさと家に帰ってログインするんだから。
そう思っていたら、もう一度「健吾」と声を掛けられた。
「悪い悪い。本当は偶然じゃないんだ。さっきそこで軽く食べていたら自転車に乗ってここに向かう健吾が見えたから来てみたんだ。ところで今日の予定は?」
俺が見えたから来てみたって。それ、女の子に言ったら絶対に誤解するよ。
溜め息をなんとか呑み込んで不発に終わらせた俺は、素直にADOをすることをヴィルさんに教えた。
「少しだけ俺に時間をくれないか?」
「え?」
ヴィルさんのお願いに戸惑っていると、ヴィルさんが車を降りてきた。
かごに入った買い物袋を手に取り、自転車をもう一度駐輪場に停め、しっかりと施錠して俺の手を取った。
「見たところ、健吾は料理が出来そうだ。簡単なものでいいから、俺のために料理を作ってくれないか? これからちょっと仕事が立て込むことになるから英気を養いたくて。作り終わったらまたここまで送るから。バイト代も弾む。頼むよ」
お願いします、と顔の前で手を合わせられ、どうしようかなと逡巡する。
俺の場合はゲームだしなあ。こんな頼まれ方をこの顔でされたら断れないよな。忙しいわけでもないし。
簡単な物を作るだけだし。
「いいですよ。もう一度そこに買い物に行ってもいいですか? これはうちの母さんに頼まれた食材なんですよ」
「え、じゃあ、マジでいいのか?!」
驚くところを見ると、断られると思ったらしい。
っていうかまだ3度しか顔を合わせてない俺なんかに料理を頼むってのもどうかと思うけど。
「言ってみるもんだなあ。じゃあ一緒に買い物をして行こうか。あ、そうそう、誘拐とか思われたらことだから、ちゃんと身元を明かすから待ってくれ」
そう言って、ヴィルさんは胸元から名刺を取り出して、俺に見せた。
水色の紙にヴィルさんのフルネームと会社名、そして会社の住所と電話番号が書かれている。
それを裏返すと、ヴィルさんは自分の携帯端末の番号とアドレスを描き込み、俺の胸ポケットに突っ込んだ。
今、会社名に『ラウロエレクトロニクス(株)』って書いてあったけど、もしかしてヴィルさんって起業してる人なのかな。
「あとで健吾の連絡先も教えてくれないか?」
そう言ってウインクすると、ヴィルさんは車に俺の荷物を積んでから、店の入り口に向かって行った。
そして連れてこられたのは、スーパーマーケットからほど近いビル。
数店のテナントが入っているそのビルの最上階に連れてこられて、さっき貰った名刺と同じ会社名の入ったドアを潜る。
中に入ると、後付けの仕切りがあるフロアに、大きな機械とかモニターとか机とかギアとかいろんな物が置かれていた。仕切りだらけのフロアは、小さな部屋が沢山あるような状態になっているのに、仕切りの上下があいているせいか、そこまでの狭さは感じない。
想像以上に多い機器類におののいていると、ヴィルさんがこっちだよと俺を手招いた。
「こういうのって社外秘とかが多いんじゃないですか? 俺なんかが入っても大丈夫?」
あの大きな機械が何に使われているのかわからないし、モニターが俺でも見えるところに多数あるってことは、もし社外秘でも見えちゃうってことだ。
と危惧していると、ヴィルさんが笑った。
「大丈夫。そういうの気にするならこんなところに連れてこないって。それに基本俺一人の会社だから、人手が必要なときは外から連れて来るんだ。だからあんまり心配しなくていいよ」
「うわ、一人で起業。すげえ」
「何ならうちでバイトする?」
冗談めかしてそんなことを言うヴィルさんに丁寧にお断りして、俺は早速奥の部屋にある簡易キッチンで料理を作ることにした。
何が食べたいか買い物の時に訊いたら、「カレー」と迷いなく答えられたから、そこまで手間はかからない。立派な冷蔵庫もレンジもあるから、冷凍してもいいし。多めに作ろう。
野菜もたっぷり買ってきたから、と使い慣れないキッチンで野菜をザクザク切り始める。
俺流のカレーを作り、ご飯もセットして、炊けたら食べれるよと声を掛けようとドアを開けたら、ヴィルさんが頭にギアを被って、目の前のモニター3台を駆使しながら何かを打ち込んでいた。
働く男って感じだった。
どんなことをしているのかさっぱりわからなかったけど、男としてこういう姿にあこがれるよな。
声を掛けそびれてヴィルさんの働く姿に見惚れていると、手を止めたヴィルさんがギアを被ったままこっちを向いた。
あのバイザー、クリアタイプなんだ。いいなあ。限定品で俺には手が届かなかったんだよなあ。
「どうしたの健吾。材料が足りなかったか?」
バイザー越しに目を合わせて聞いてくるヴィルさんに、俺は首を振った。
「ご飯が炊けたら食べれますって声を掛けに来たんですけど、仕事邪魔しちゃいましたね」
ごめんなさい、と頭を下げると、ヴィルさんは「え」と声を上げた。
「もうできたのか? 早くないか? 健吾はあれか、優秀なのか」
「違います。リクエストのメニューが簡単だっただけです」
「簡単だからってこんなに早くできるとは……俺は健吾を見くびっていたようだ」
違うから。しっかりとレトルトのルーをゲットしたんだし、これくらいの時間は当たり前なのに。そこまで持ち上げないでくれ。食べた後がっくりされたらことだ。
「ちょっと待ってくれ。これを終わらせるのにもうあと一時間くらいかかるんだ。送っていくのはそれからでいいか?」
「あ、全然大丈夫です」
というかむしろそんなに遠くないから送っていかなくていいのに。今も善意で俺の家用の食材まで冷蔵庫に入れて貰っちゃってるのに。
「というか後はよそって食べるだけなので、あと帰りますね。邪魔しそうですし、そう遠くないし」
俺がそう言うと、ヴィルさんは「それは悪いよ。俺が送っていくって言ったのに」とギアを頭から外して立ち上がった。
そして、奥の方の机からもう一つのギアを持ってきて、それを俺に差し出した。
「ついでにもう一つバイトを頼まれてくれないか? これでADOにログインして欲しいんだ。IDとパスが手元になくてわからないなら、仮のアバターを用意する。仮アバターでもスキルは今まで育てたものは使えるから、ちょっとモニタリングさせて欲しいんだが、どうだろう」
「え、それって」
「そこにある大型の機械をギアと他の所にあるシステムにつないで、ADOの通信システムの調整を俺メインで行っているんだ。誰も従業員がいないのは、一人の方が色々とやり易かったりするからなんだけど、たまにモニターも欲しくてね。行動をモニタリングするけれど、それを了承してくれるのなら、ぜひログインして欲しいんだ」
それってもしかして、ADOの調整の手伝いを俺がするってこと? と、俺はヴィルさんの説明を聞きながら、ちょっとだけドキドキした。
昨日の出来事を説明すると、カイルさんは快く頷いてくれた。
「ナスカ村かあ。あそこの村長いるだろ。あの人な、前はここの領主をやっていたお人でなあ。俺達街民のことを一番に考えていい市制を敷いてくれてたんだよ。その後のやつが最悪だったから余計にあの頃はよかった、って思ってなあ」
「うん。すごくいい人だった。だから、もしあの村がまた魔物に襲われそうになったら、破香の木の手入れをよろしく」
「言われなくてもやってやるよ。俺はあの村の人たちに少なからぬ恩があるんでな」
「なんかカイルさんも年老いて農園をやれなくなったらナスカ村に移住しそう」
「お、それもいいなあ」
何気なく呟いた言葉に、カイルさんがニヤリと笑う。
そしたらきっとあの村は今以上に安泰だよな。何せ植物エキスパートが行くってことだから。
「あ、っとそうだった。俺やることあるんだった」
「おう、頑張れよ」
カイルさんに手を振って、工房に戻ってくる。
話し込んじゃって結構時間が経ったよ。
ベッドに転がって目を閉じて、ログアウトする。
自分の部屋で目を開け、ギアを外すと、今着てるジャージを脱いで、一応外を歩いても恥ずかしくはないような服に着替えた。
自転車に乗って、近場のスーパーマーケットに向かう。
途中、初めてヴィルさんと会ったファストフード店の横を通り抜けざまちらりと横目で見ながら、目的の場所に向かう。
天気がいいから自転車が気持ちいい。
風がちょっと肌寒いけど、日差しがあったかいから相殺されてる。
自転車を駐輪場に停めて、店の中に入っていくと、まだ午前中なせいか、お客さんはまばらだった。
メモを見ながら次々かごに入れていき、頼まれた物と俺用お菓子を手に清算に向かう。
袋に買い物した物を詰め込んで、自転車の所に戻った。
家に帰ったらログインしよ。祈りを使ってみよう。聖水、一回作ってみたいな。でも問題がひとつある。俺、水魔法を使えない。どうやって水を出そう。
そんなことを考えながら自転車にまたがる。
すると、後ろからプップーという車のホーンの音が鳴り響いた。
俺邪魔しちゃったかな、と慌てて後ろを振り向くと、すぐ横の駐車場に日本製ではない車が停まっていた。
薄いスモークが貼られた窓が静かに開く。
そこから顔を出したのは、ヴィルさんだった。
今日も高そうなスーツを着ていて、こんなスーパーマーケットにはとてもそぐわない雰囲気を醸し出していた。
「健吾。おはよう。今日は学校サボりか?」
悪気なくにこやかにそう声を掛けられ、俺は慌てて「違います!」と否定した。サボりなんて人聞きが悪いよ!
「そんなヴィルさんは今日も寝坊ですか?」
意趣返しにそう質問すると、ヴィルさんは驚いたように目を開いた。
「どうしてわかるんだ。健吾はエスパーか?」
本気で言ってるのか俺を揶揄っているのか全く分からなかった俺は、溜め息を吐いて「じゃあ、気を付けてお仕事行ってくださいね」と自転車をこぎ始めた。
さっさと家に帰ってログインするんだから。
そう思っていたら、もう一度「健吾」と声を掛けられた。
「悪い悪い。本当は偶然じゃないんだ。さっきそこで軽く食べていたら自転車に乗ってここに向かう健吾が見えたから来てみたんだ。ところで今日の予定は?」
俺が見えたから来てみたって。それ、女の子に言ったら絶対に誤解するよ。
溜め息をなんとか呑み込んで不発に終わらせた俺は、素直にADOをすることをヴィルさんに教えた。
「少しだけ俺に時間をくれないか?」
「え?」
ヴィルさんのお願いに戸惑っていると、ヴィルさんが車を降りてきた。
かごに入った買い物袋を手に取り、自転車をもう一度駐輪場に停め、しっかりと施錠して俺の手を取った。
「見たところ、健吾は料理が出来そうだ。簡単なものでいいから、俺のために料理を作ってくれないか? これからちょっと仕事が立て込むことになるから英気を養いたくて。作り終わったらまたここまで送るから。バイト代も弾む。頼むよ」
お願いします、と顔の前で手を合わせられ、どうしようかなと逡巡する。
俺の場合はゲームだしなあ。こんな頼まれ方をこの顔でされたら断れないよな。忙しいわけでもないし。
簡単な物を作るだけだし。
「いいですよ。もう一度そこに買い物に行ってもいいですか? これはうちの母さんに頼まれた食材なんですよ」
「え、じゃあ、マジでいいのか?!」
驚くところを見ると、断られると思ったらしい。
っていうかまだ3度しか顔を合わせてない俺なんかに料理を頼むってのもどうかと思うけど。
「言ってみるもんだなあ。じゃあ一緒に買い物をして行こうか。あ、そうそう、誘拐とか思われたらことだから、ちゃんと身元を明かすから待ってくれ」
そう言って、ヴィルさんは胸元から名刺を取り出して、俺に見せた。
水色の紙にヴィルさんのフルネームと会社名、そして会社の住所と電話番号が書かれている。
それを裏返すと、ヴィルさんは自分の携帯端末の番号とアドレスを描き込み、俺の胸ポケットに突っ込んだ。
今、会社名に『ラウロエレクトロニクス(株)』って書いてあったけど、もしかしてヴィルさんって起業してる人なのかな。
「あとで健吾の連絡先も教えてくれないか?」
そう言ってウインクすると、ヴィルさんは車に俺の荷物を積んでから、店の入り口に向かって行った。
そして連れてこられたのは、スーパーマーケットからほど近いビル。
数店のテナントが入っているそのビルの最上階に連れてこられて、さっき貰った名刺と同じ会社名の入ったドアを潜る。
中に入ると、後付けの仕切りがあるフロアに、大きな機械とかモニターとか机とかギアとかいろんな物が置かれていた。仕切りだらけのフロアは、小さな部屋が沢山あるような状態になっているのに、仕切りの上下があいているせいか、そこまでの狭さは感じない。
想像以上に多い機器類におののいていると、ヴィルさんがこっちだよと俺を手招いた。
「こういうのって社外秘とかが多いんじゃないですか? 俺なんかが入っても大丈夫?」
あの大きな機械が何に使われているのかわからないし、モニターが俺でも見えるところに多数あるってことは、もし社外秘でも見えちゃうってことだ。
と危惧していると、ヴィルさんが笑った。
「大丈夫。そういうの気にするならこんなところに連れてこないって。それに基本俺一人の会社だから、人手が必要なときは外から連れて来るんだ。だからあんまり心配しなくていいよ」
「うわ、一人で起業。すげえ」
「何ならうちでバイトする?」
冗談めかしてそんなことを言うヴィルさんに丁寧にお断りして、俺は早速奥の部屋にある簡易キッチンで料理を作ることにした。
何が食べたいか買い物の時に訊いたら、「カレー」と迷いなく答えられたから、そこまで手間はかからない。立派な冷蔵庫もレンジもあるから、冷凍してもいいし。多めに作ろう。
野菜もたっぷり買ってきたから、と使い慣れないキッチンで野菜をザクザク切り始める。
俺流のカレーを作り、ご飯もセットして、炊けたら食べれるよと声を掛けようとドアを開けたら、ヴィルさんが頭にギアを被って、目の前のモニター3台を駆使しながら何かを打ち込んでいた。
働く男って感じだった。
どんなことをしているのかさっぱりわからなかったけど、男としてこういう姿にあこがれるよな。
声を掛けそびれてヴィルさんの働く姿に見惚れていると、手を止めたヴィルさんがギアを被ったままこっちを向いた。
あのバイザー、クリアタイプなんだ。いいなあ。限定品で俺には手が届かなかったんだよなあ。
「どうしたの健吾。材料が足りなかったか?」
バイザー越しに目を合わせて聞いてくるヴィルさんに、俺は首を振った。
「ご飯が炊けたら食べれますって声を掛けに来たんですけど、仕事邪魔しちゃいましたね」
ごめんなさい、と頭を下げると、ヴィルさんは「え」と声を上げた。
「もうできたのか? 早くないか? 健吾はあれか、優秀なのか」
「違います。リクエストのメニューが簡単だっただけです」
「簡単だからってこんなに早くできるとは……俺は健吾を見くびっていたようだ」
違うから。しっかりとレトルトのルーをゲットしたんだし、これくらいの時間は当たり前なのに。そこまで持ち上げないでくれ。食べた後がっくりされたらことだ。
「ちょっと待ってくれ。これを終わらせるのにもうあと一時間くらいかかるんだ。送っていくのはそれからでいいか?」
「あ、全然大丈夫です」
というかむしろそんなに遠くないから送っていかなくていいのに。今も善意で俺の家用の食材まで冷蔵庫に入れて貰っちゃってるのに。
「というか後はよそって食べるだけなので、あと帰りますね。邪魔しそうですし、そう遠くないし」
俺がそう言うと、ヴィルさんは「それは悪いよ。俺が送っていくって言ったのに」とギアを頭から外して立ち上がった。
そして、奥の方の机からもう一つのギアを持ってきて、それを俺に差し出した。
「ついでにもう一つバイトを頼まれてくれないか? これでADOにログインして欲しいんだ。IDとパスが手元になくてわからないなら、仮のアバターを用意する。仮アバターでもスキルは今まで育てたものは使えるから、ちょっとモニタリングさせて欲しいんだが、どうだろう」
「え、それって」
「そこにある大型の機械をギアと他の所にあるシステムにつないで、ADOの通信システムの調整を俺メインで行っているんだ。誰も従業員がいないのは、一人の方が色々とやり易かったりするからなんだけど、たまにモニターも欲しくてね。行動をモニタリングするけれど、それを了承してくれるのなら、ぜひログインして欲しいんだ」
それってもしかして、ADOの調整の手伝いを俺がするってこと? と、俺はヴィルさんの説明を聞きながら、ちょっとだけドキドキした。
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