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93、やっぱりセイジさんだったよ
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農園の中に立ちながら、俺は呆然と今見た光景を思い出していた。
って、そうだった。それどころじゃない、クラッシュだよ!
さっきまでの嫌な空気はすっかりなくなっている。
魔力をたらふく食べたタルアル草は満足したかのように転移した瞬間地面に葉をでろーんと広げ、クラッシュの拘束を解いている。
うわあ、ヴィデロさんがすっごい顔してるなあ。目を見開いて混乱してるような顔。そんな顔も好き。
「マック……今のは」
「転移の魔法陣が成功してよかった。クラッシュにこれだけはって教えてもらってたんだ。ぶっつけ本番だったけど」
俺の言葉に、ヴィデロさんが「そうか……」と呆れたように呟いた。
え、と。ダメだったのかな。
「ダメじゃないけど、ダメじゃないんだけどな、だったら、馬車に乗せられる前に転移を使って逃げることも出来たんじゃないのか……?」
「ああああああ!」
そうかも! っていうかなんで走って逃げた俺! ってあの時は落ち着いて魔法陣なんて書けそうもないから!
あ、でも、馬車の中で使うって手もあったのか。でもそれだと俺が詰め込まれてると思って追いかけてるクラッシュはどうなるんだ。
でもでも俺が大人しく捕まってたからクラッシュは暴走しそうになって、俺がクラッシュを追い詰めたってこと、に、なるのかな……。
「やっぱり、俺、どうしようもなく馬鹿だ……」
もっといい方法が、絶対にあったのに。結局はクラッシュを暴走させそうになって、あのおっさんはそのまま。ただただ転移で逃げたって。
なんか、ほんと。もう。
落ち込む。
「ヴィデロさんも、俺のせいで立場悪くなるよな……ごめん」
「いやそれはないな。しっかりと報告するし、レイモンドの処罰はしてもらうつもりだ。一般人を拉致っていうのはしっかりと法に触れる罪だからな。そこは安心しろ」
「よかったぁ……」
ホッとしていると、それまで俯いてじっとしていたクラッシュが、フラ……と顔を上げた。
じろりとすごい目で俺を睨みつけてくる。
表情が怖い以外、周りの空気が悪くないのは、魔力(MP)がなくなったからだよな。こんなに育ってるもん、タルアル草。足元で絨毯のように広がって、大きくてきれいな花弁を誇らしげにさらしてる。すっごいピンクの花弁だから、たんまりと万能薬の素が出るよ。もう空き瓶ないけど。
クラッシュは憤懣やる方ないという態度で手を握りしめている。
「マック……どうして、邪魔するんだよ……」
少しだけ長めの金髪を乱して、俺を睨むクラッシュに、取り敢えず軽くチョップをお見舞いした。
「仇討ちとかそういうのはいいと思うよ。でもやり方が悪いだろ。あんな状態で仇討ちしても、クラッシュが無事じゃなかったらダメだろ。エミリさん、旦那さんだけじゃなくてクラッシュまでいなくなったらどうなるんだよ。それにさ」
「母さん……?」
ハッとしたようにクラッシュが表情を改める。
ようやく俺の言葉が届いたみたいだ。よかった。
「そう。さっき転移の魔法陣が発動する直前、セイジさんとエミリさんが来たんだよ。たぶんセイジさんの転移で。だから、落ち着いて。もう魔力ないだろ。暴走しないんならマジックハイポーションあげるけど」
「暴走……? 確かに魔力なくなっちゃったけど。さっきのやつなんだったの」
「モントさんに貰ったタルアル草っていう植物なんだけど」
投げつけた時に鉢から飛び出したから、クラッシュの魔力を思う存分吸ってすっかり大きくなってる。しかもここに落ち着いちゃったし。どうしよう、このままお持ち帰り、できるのかな。
ここ、畑じゃなくて門の横らへんなんだけど。モントさんに怒られないかな。
「って待ってマック。セイジさんと母さんが来たって?」
「うん。魔法陣が発動しちゃったから入れ違いって感じで」
「うそ、何で」
「それは本人に聞けよ。っても、もうあそこに戻るのは禁止な。今度はクラッシュが狙われそうで怖い」
「それはわかってるけど……でも」
クラッシュは険しい表情を崩して、今度は泣きそうに顔を歪めた。
そして、俺に抱き着いてくる。
「もう、目の前で拉致されないでくれよ……」
「うん、ごめん……」
抱き着いているクラッシュの背中を撫でて、呟くようなクラッシュの声に、俺まで鼻がツーンとする。
ヴィデロさんは複雑そうな顔をしていたけど、クラッシュの様子にただ見守ることにしたみたいだった。
「お前ら、いったいどうしたんだ。ベル鳴らなかったけど、どうやって入ったんだ?」
いきなり聞こえてきた太い声に、クラッシュはスン、と鼻を鳴らしながら離れていった。
声の方に視線を向けると、裏の農園の方からモントさんがのっしのっしと歩いてくるところだった。
「モントさん。すいません。直接ここに飛んじゃったみたいで」
「飛んだだあ? それにその足元。何でそこにタルアル草が咲いてるんだよ」
「貰った鉢植えのこれ、変な感じで育てちゃって」
足元に鎮座しているタルアル草を見て、モントさんが盛大に溜め息を吐いた。
「畑の土壌ならまだしも、そこの土は魔力がねえんだよなあ。根っこ傷付けねえように掘り返して、あっちに植え直すか。これ、万能薬の素搾り取ったらここだと枯れちまうんだよ。魔力がなくなっちまうから。あ、それとも、ここの土になんか混ぜてみるか。ここで落ち着いちまってるしな」
ムムム、と唸りながらモントさんは地面のタルアル草のことを考え始めた。まずは何を置いても植物なんですね。素晴らしいですモントさん。
「それより、そっちの初顔のあんちゃん、疲れた顔してるけど、気分が落ち着くハーブティでも淹れるか? 見たところ、マックの知り合いなんだろ?」
「あ、ありがとうございます。でも俺、さっきの所に戻らないと」
クラッシュはモントさんの申し出を断り、こっちを向いた。
「マック、もう一回転移できる? さっきの場所まで」
「あ、無理。どこをどう走ったかわからないから、魔法陣に描き込めない。ここは馴染んでたから飛べたみたいだけど。って禁止って言ったばっかりだろ」
俺が首を振ると、クラッシュはがっくりと肩を下げて、今度はヴィデロさんに詰め寄った。
「え、じゃあヴィデロ。さっきの所に案内してよ」
「するわけないだろ」
一刀両断されてる。当たり前だよ。またレイモンドを見て暴走したらやだし。
そんなやり取りをしていたら、空気が揺れて、そこからセイジさんが現れた。
現れた瞬間、セイジさんはまっすぐクラッシュのもとに向かっていく。
あ、やっぱりさっきのは見間違いじゃなかったのか。
「クラッシュ。お前、攫われた時の記憶、あるのか」
セイジさんの言葉に、クラッシュが躊躇った後にこくんと頷いた。
それを見て、セイジさんが「やっぱりか……」と呟く。
「あいつのことは、エミリに任せてきたから」
「母さんに……母さんは、あいつが父さんを殺した奴らを雇ってた奴だって、わかってたの?」
「ああ」
「じゃあ、何で放置してたの。今度はマックが攫われるところだったのに」
そう詰め寄るクラッシュに、セイジさんの顔が少しだけ顰められた。
「放置したんじゃない、放置せざるを得なかったんだ」
「ま、それはこんな野外でする話じゃねえみてえだし、皆でうちで休んでくか」
さらに詰め寄ろうとしたクラッシュを止めるかのように、モントさんが割り込んでいく。
その言葉に、セイジさんが一番に「ありがてえな」と乗った。
そして、俺の横に立つヴィデロさんを見て、そういうことか、と頷いた。
え、何、何でヴィデロさんがいるとそういうことになるんだよ。
ヴィデロさんは特に気にした様子もなく、足元のタルアル草を見下ろしていた。
「ヴィデロさん」
そっと声を掛けると、ヴィデロさんは俺の方に視線を移動して、目があった瞬間綺麗に笑った。
なんか、その笑顔が儚いのは、気のせいかな。
ヴィデロさんの笑顔は、すごく胸の痛くなるような笑顔だった。
全員でモントさんの家の中に移動する。
コの字型に置かれた大きいカウチソファは、全員が座っても余裕があった。
俺もちゃっかりヴィデロさんの横に陣取る。
モントさんが淹れてくれたハーブティは、俺がいままで飲んだことのないもので、これもまた美味しかった。
「モントさん、この茶葉売ってます? めっちゃ美味しい」
「お―。あるぞ。っていうかマック。その調子だとほとんどのお茶っ葉買い占めちまうんじゃねえか」
「それでもいい。モントさんのお茶、ほんとに美味しいから」
一口飲んだだけで、心が凪いでいくような、清涼感溢れるお茶が美味しい。
皆飲んだ瞬間顔を緩めている。クラッシュまで。落ち着くよな。
「で、だ。ちょっと聞きたいんだが、あの魔法陣はマックが紡いだのか?」
お茶を飲んで落ち着くと、セイジさんは俺の方に目を向けて口を開いた。
セイジさんは、昔話をする前に、確認したいことをとことん追求することにしたらしい。
俺がセイジさんの質問に頷くと、さらに突っ込まれた。
「もしかして、クラッシュから教わったのか?」
「はい」
「古代魔道語読めたのか?」
「それもクラッシュから習いました」
「あのクソ貴族とどこで知り合った」
俺が手短に目を付けられたことを話すと、セイジさんは「そうか」と頷いて、視線を俺の横に流した。
だからなんでそんな風にヴィデロさんを気にするんだよ、セイジさん。
セイジさんとヴィデロさんって、知り合いだったのか?
「セイジさんと知り合い? ヴィデロさん」
そっと訊くと、ヴィデロさんは「お互いがお互いを知っている、っていう程度かな」という何とも曖昧な答えが。
ああ、知り合いではないんだね。
「ええと、そういうの両片思い、っていうんだっけ」
「全く違うな」
思いつくままの単語を口に乗せたら、それこそ一瞬にしてヴィデロさんに一刀両断された。
って、そうだった。それどころじゃない、クラッシュだよ!
さっきまでの嫌な空気はすっかりなくなっている。
魔力をたらふく食べたタルアル草は満足したかのように転移した瞬間地面に葉をでろーんと広げ、クラッシュの拘束を解いている。
うわあ、ヴィデロさんがすっごい顔してるなあ。目を見開いて混乱してるような顔。そんな顔も好き。
「マック……今のは」
「転移の魔法陣が成功してよかった。クラッシュにこれだけはって教えてもらってたんだ。ぶっつけ本番だったけど」
俺の言葉に、ヴィデロさんが「そうか……」と呆れたように呟いた。
え、と。ダメだったのかな。
「ダメじゃないけど、ダメじゃないんだけどな、だったら、馬車に乗せられる前に転移を使って逃げることも出来たんじゃないのか……?」
「ああああああ!」
そうかも! っていうかなんで走って逃げた俺! ってあの時は落ち着いて魔法陣なんて書けそうもないから!
あ、でも、馬車の中で使うって手もあったのか。でもそれだと俺が詰め込まれてると思って追いかけてるクラッシュはどうなるんだ。
でもでも俺が大人しく捕まってたからクラッシュは暴走しそうになって、俺がクラッシュを追い詰めたってこと、に、なるのかな……。
「やっぱり、俺、どうしようもなく馬鹿だ……」
もっといい方法が、絶対にあったのに。結局はクラッシュを暴走させそうになって、あのおっさんはそのまま。ただただ転移で逃げたって。
なんか、ほんと。もう。
落ち込む。
「ヴィデロさんも、俺のせいで立場悪くなるよな……ごめん」
「いやそれはないな。しっかりと報告するし、レイモンドの処罰はしてもらうつもりだ。一般人を拉致っていうのはしっかりと法に触れる罪だからな。そこは安心しろ」
「よかったぁ……」
ホッとしていると、それまで俯いてじっとしていたクラッシュが、フラ……と顔を上げた。
じろりとすごい目で俺を睨みつけてくる。
表情が怖い以外、周りの空気が悪くないのは、魔力(MP)がなくなったからだよな。こんなに育ってるもん、タルアル草。足元で絨毯のように広がって、大きくてきれいな花弁を誇らしげにさらしてる。すっごいピンクの花弁だから、たんまりと万能薬の素が出るよ。もう空き瓶ないけど。
クラッシュは憤懣やる方ないという態度で手を握りしめている。
「マック……どうして、邪魔するんだよ……」
少しだけ長めの金髪を乱して、俺を睨むクラッシュに、取り敢えず軽くチョップをお見舞いした。
「仇討ちとかそういうのはいいと思うよ。でもやり方が悪いだろ。あんな状態で仇討ちしても、クラッシュが無事じゃなかったらダメだろ。エミリさん、旦那さんだけじゃなくてクラッシュまでいなくなったらどうなるんだよ。それにさ」
「母さん……?」
ハッとしたようにクラッシュが表情を改める。
ようやく俺の言葉が届いたみたいだ。よかった。
「そう。さっき転移の魔法陣が発動する直前、セイジさんとエミリさんが来たんだよ。たぶんセイジさんの転移で。だから、落ち着いて。もう魔力ないだろ。暴走しないんならマジックハイポーションあげるけど」
「暴走……? 確かに魔力なくなっちゃったけど。さっきのやつなんだったの」
「モントさんに貰ったタルアル草っていう植物なんだけど」
投げつけた時に鉢から飛び出したから、クラッシュの魔力を思う存分吸ってすっかり大きくなってる。しかもここに落ち着いちゃったし。どうしよう、このままお持ち帰り、できるのかな。
ここ、畑じゃなくて門の横らへんなんだけど。モントさんに怒られないかな。
「って待ってマック。セイジさんと母さんが来たって?」
「うん。魔法陣が発動しちゃったから入れ違いって感じで」
「うそ、何で」
「それは本人に聞けよ。っても、もうあそこに戻るのは禁止な。今度はクラッシュが狙われそうで怖い」
「それはわかってるけど……でも」
クラッシュは険しい表情を崩して、今度は泣きそうに顔を歪めた。
そして、俺に抱き着いてくる。
「もう、目の前で拉致されないでくれよ……」
「うん、ごめん……」
抱き着いているクラッシュの背中を撫でて、呟くようなクラッシュの声に、俺まで鼻がツーンとする。
ヴィデロさんは複雑そうな顔をしていたけど、クラッシュの様子にただ見守ることにしたみたいだった。
「お前ら、いったいどうしたんだ。ベル鳴らなかったけど、どうやって入ったんだ?」
いきなり聞こえてきた太い声に、クラッシュはスン、と鼻を鳴らしながら離れていった。
声の方に視線を向けると、裏の農園の方からモントさんがのっしのっしと歩いてくるところだった。
「モントさん。すいません。直接ここに飛んじゃったみたいで」
「飛んだだあ? それにその足元。何でそこにタルアル草が咲いてるんだよ」
「貰った鉢植えのこれ、変な感じで育てちゃって」
足元に鎮座しているタルアル草を見て、モントさんが盛大に溜め息を吐いた。
「畑の土壌ならまだしも、そこの土は魔力がねえんだよなあ。根っこ傷付けねえように掘り返して、あっちに植え直すか。これ、万能薬の素搾り取ったらここだと枯れちまうんだよ。魔力がなくなっちまうから。あ、それとも、ここの土になんか混ぜてみるか。ここで落ち着いちまってるしな」
ムムム、と唸りながらモントさんは地面のタルアル草のことを考え始めた。まずは何を置いても植物なんですね。素晴らしいですモントさん。
「それより、そっちの初顔のあんちゃん、疲れた顔してるけど、気分が落ち着くハーブティでも淹れるか? 見たところ、マックの知り合いなんだろ?」
「あ、ありがとうございます。でも俺、さっきの所に戻らないと」
クラッシュはモントさんの申し出を断り、こっちを向いた。
「マック、もう一回転移できる? さっきの場所まで」
「あ、無理。どこをどう走ったかわからないから、魔法陣に描き込めない。ここは馴染んでたから飛べたみたいだけど。って禁止って言ったばっかりだろ」
俺が首を振ると、クラッシュはがっくりと肩を下げて、今度はヴィデロさんに詰め寄った。
「え、じゃあヴィデロ。さっきの所に案内してよ」
「するわけないだろ」
一刀両断されてる。当たり前だよ。またレイモンドを見て暴走したらやだし。
そんなやり取りをしていたら、空気が揺れて、そこからセイジさんが現れた。
現れた瞬間、セイジさんはまっすぐクラッシュのもとに向かっていく。
あ、やっぱりさっきのは見間違いじゃなかったのか。
「クラッシュ。お前、攫われた時の記憶、あるのか」
セイジさんの言葉に、クラッシュが躊躇った後にこくんと頷いた。
それを見て、セイジさんが「やっぱりか……」と呟く。
「あいつのことは、エミリに任せてきたから」
「母さんに……母さんは、あいつが父さんを殺した奴らを雇ってた奴だって、わかってたの?」
「ああ」
「じゃあ、何で放置してたの。今度はマックが攫われるところだったのに」
そう詰め寄るクラッシュに、セイジさんの顔が少しだけ顰められた。
「放置したんじゃない、放置せざるを得なかったんだ」
「ま、それはこんな野外でする話じゃねえみてえだし、皆でうちで休んでくか」
さらに詰め寄ろうとしたクラッシュを止めるかのように、モントさんが割り込んでいく。
その言葉に、セイジさんが一番に「ありがてえな」と乗った。
そして、俺の横に立つヴィデロさんを見て、そういうことか、と頷いた。
え、何、何でヴィデロさんがいるとそういうことになるんだよ。
ヴィデロさんは特に気にした様子もなく、足元のタルアル草を見下ろしていた。
「ヴィデロさん」
そっと声を掛けると、ヴィデロさんは俺の方に視線を移動して、目があった瞬間綺麗に笑った。
なんか、その笑顔が儚いのは、気のせいかな。
ヴィデロさんの笑顔は、すごく胸の痛くなるような笑顔だった。
全員でモントさんの家の中に移動する。
コの字型に置かれた大きいカウチソファは、全員が座っても余裕があった。
俺もちゃっかりヴィデロさんの横に陣取る。
モントさんが淹れてくれたハーブティは、俺がいままで飲んだことのないもので、これもまた美味しかった。
「モントさん、この茶葉売ってます? めっちゃ美味しい」
「お―。あるぞ。っていうかマック。その調子だとほとんどのお茶っ葉買い占めちまうんじゃねえか」
「それでもいい。モントさんのお茶、ほんとに美味しいから」
一口飲んだだけで、心が凪いでいくような、清涼感溢れるお茶が美味しい。
皆飲んだ瞬間顔を緩めている。クラッシュまで。落ち着くよな。
「で、だ。ちょっと聞きたいんだが、あの魔法陣はマックが紡いだのか?」
お茶を飲んで落ち着くと、セイジさんは俺の方に目を向けて口を開いた。
セイジさんは、昔話をする前に、確認したいことをとことん追求することにしたらしい。
俺がセイジさんの質問に頷くと、さらに突っ込まれた。
「もしかして、クラッシュから教わったのか?」
「はい」
「古代魔道語読めたのか?」
「それもクラッシュから習いました」
「あのクソ貴族とどこで知り合った」
俺が手短に目を付けられたことを話すと、セイジさんは「そうか」と頷いて、視線を俺の横に流した。
だからなんでそんな風にヴィデロさんを気にするんだよ、セイジさん。
セイジさんとヴィデロさんって、知り合いだったのか?
「セイジさんと知り合い? ヴィデロさん」
そっと訊くと、ヴィデロさんは「お互いがお互いを知っている、っていう程度かな」という何とも曖昧な答えが。
ああ、知り合いではないんだね。
「ええと、そういうの両片思い、っていうんだっけ」
「全く違うな」
思いつくままの単語を口に乗せたら、それこそ一瞬にしてヴィデロさんに一刀両断された。
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