これは報われない恋だ。

朝陽天満

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73、魚は美味いね

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 おっちゃんの言葉に、自首するような気分でそう答えると、俺の焦った顔を見たおっちゃんががははと笑いだした。



「誰のモンでもねえ自生した木だからそんな顔しなくても持ってっていいって。ただな、あれ、上の方しか生ってなかったろ。俺も何個か欲しかったんだけど採れなくてよ。よかったら何個か魚と交換してくれねえか?」

「喜んで!!」



 俺はホッと胸を撫で下ろすと同時に、思わぬおっちゃんの申し出に飛びついた。

 ワクワクしながら拾った実を次々出す。三種類くらいあったから、全部の方がいいよな。どんな魚と交換してくれるんだろう。

 腕に抱え込んだ木の実の山を差し出すと、おっちゃんが苦笑して「そんなにくれるんか」と腰の袋を開けた。



「ここに入れてくれ。んじゃ、魚、何匹くらいがいいやら。全員連れか? 4匹じゃ足りねえか?」

「とんでもない! そんなにくれるんですか! 俺、クワットロの海鮮丼屋の魚がここで取れてるって聞いて、連れてきてもらったんです!」

「あれは俺が卸してんだ。新鮮で美味いだろ」

「すっごく美味かったです……! ありがとうございます! 俺、魚ほんと好きで」

「わかったわかった、そんなキラキラした顔して。よし8匹やるよ。たんと食え。そして、また店に行ってくれ。あの店の店主な、あんな裏側に店構えちまって、なかなか客足が伸びねえしちょっくら人見知りで口下手でなあ。美味いはずなのになかなか繁盛しねえんだよ。もっと資金があればもっといいところに店構えられるってのによ」

「そうなんですね……」



 あのお店も大変なんだなあ。確かに裏側だったし。表からじゃ、看板すら見えない位置にあったしなあ。

 と思ってると、ずいっと雄太が前に出てきた。こいつも魚好きだから、あの店は絶対に教えよう。と、たった今思った。



「失礼します。魚が食える店があるんですか? そこ、ぜひ教えて欲しいです。もし店主の了解があれば宣伝も辞さないので」

「あ、高橋。俺が知ってる。昨日ヴィデロさんに連れてってもらったから」



 そっとそう伝えると、雄太がギラッとした目をこっちに向けた。



「なぜ黙っていた……そういうのは、即、教えるべきだろ……?」

「ごめん」



 さっきよりもさらに真剣な目つきで俺を追い詰めにかかった雄太に即謝ると、雄太も即「許す」とその迫力ある表情のまま俺を許してくれた。



「おお! ぜひ宣伝して欲しい。俺も心配してたんだ。表通りの雑貨屋の角から細い道を入って、一個目の角を左に曲がったすぐの店だ。メニューは一つしかねえんだけどよ、味は折り紙付きだ。『カトレに訊いた』って言やぁちょっとはおまけしてくれんだろ。俺も、おめえの店を宣伝してくれる奴がいるって言っとくからよ、頼んだぜ」

「わかりましたカトレさん」



 雄太がちらっとだけ視線を動かしたのを見て、雄太の裏フレンド欄に漁師さんの名前が並んだのに気付いた。

 っていうか、俺のフレンド欄にもビックリマークが付いてる。俺も名前呼んでいいってことかな。

 カトレさんは俺に新鮮なアジみたいな見た目の魚を8匹も渡してくれた。



「カトレさん、ありがとうございます! 早速ここで捌こう!」



 喜び勇んでカバンから調理器具を出すと、雄太が「待て」とストップを掛けた。



「こっちの方に平らな岩があるから、ここの方がやり易いんじゃないか」

「わかった」

「俺が頭をぶった切る」

「ハラワタ切るなよ」

「善処する」



 さっさと色々用意し始めた俺と雄太の連携を見て、三人が目を丸くしている。でも魚は新鮮な方が美味いしね! 

 調理スキルレベル上げるぞー!

 気合いを入れた俺たちの手によって、魚は間もなくおいしそうな姿に変わった。



 ユイが敷物を敷いてくれたので、その上に出来上がった料理を運ぶ。

 とっておきの果物を使ったフルーツソースも勿論作った。あの味は再現できなかったけど、でも大分美味しくできたはず。

 コルザの油を使うと、ハーブを入れなくても香りのいいムニエルが出来上がるから、それにソースを掛けて。



 途中から魚が二匹追加されたので、それも同じように調理する。

 一人一匹の刺身と、一匹のムニエルフルーツソースがけが出来上がった。

 それを、5人で囲む。

 しっかりとカトレさんも俺たちの昼食に混ざっていた。でも大歓迎! 魚の提供者は優遇します!



「これ、うめえな。おめえ、料理の腕がいいな」

「ありがとうございます! 俺、マックです」

「マックか。んでそっちのは剣さばきがいいな」

「高橋と言います。こっちのちっこいのが、俺の彼女のユイ」



 ちゃっかりユイまで紹介した雄太は、漁師の知り合いが出来たことにすごく満足そうだった。

 だって新鮮な魚を手に入れられるかもだし。



「これ、美味いな。このタレと油はどこで手に入れたんだ?」

「セッテの農園で手に入る果物と、油は売ってるのかな。セッテの農園で育ててるコルザっていう花から絞った油だそうです」

「ほう、セッテか。農園が封鎖されて大変なことになってるって聞いてたが、再開されたんだな」

「はい!」



 カトレさんは何やら考えているようだった。すでに目の前の魚は、骨すら残っていない。これがまたうめえんだ、って言って火であぶってポリポリ食べていた。

 カルシウム! と俺も真似して食べたのは言うまでもない。ヴィデロさんは、自分の魚の骨を俺に苦笑しながら分けてくれた。優しい。好き。



 雄太も魚に満足したらしく、ニヤリ顔じゃない笑顔を浮かべていた。

 これから水揚げした魚を運ぶんだ、と言って、カトレさんは木の間にあった馬車に魚の入った箱を積んでいった。箱の中には、カトレさんが出した氷が魚の間にぎゅうぎゅうに詰まっている。何でも、魚を新鮮なまま届けたくて、氷魔法を必死で勉強したんだとか。すごい、尊敬する。

 でも、馬車の荷台しかなくない? 馬は? とじっと見ていると、カトレさんは懐から笛みたいなものを取り出して、フーッと息を吹き込んだ。

 途端に、どこからともなく、栗毛の馬さんが現れた。俺たちの乗ってきた馬じゃない。もっと体つきがドシッとした馬さんだ。その笛の音は俺達には聞こえなかった。



「じゃあな。魚美味かったよありがとな。気を付けて帰れよ」



 そう言って、カトレさんは馬に馬車をくっつけると、御者台に座って手を振りながら湖を出ていった。



「一人だけど、あの魔物を突っ切っていけるんだ……」



 呆然と見送ってると、ヴィデロさんが隣に立って口を開いた。



「彼は強いぞ。魚のかかった網を、一人で引いていたくらい腕力もあるからな。漁師というくらいだから、銛なんかも使えるだろうし。かなりの手練れだ」

「え、すごい。俺なんか片手で持ち上げられちゃったりして」

「それくらいなんてことないと思うぞ。俺でもできるしな」

「え、ほんと?! 俺を抱っこできる?!」

「楽勝だな」



 さ、さすが筋肉。細マッチョ。脱いだらすごいヴィデロさん。好き。



「高橋だって、彼女を片手で抱っこくらいできると思うぞ」

「え、そうかな。そうかも。ユイちっちゃいし細いし」



 俺は誰かを抱っことか、できるかな……。うん、クラッシュですらできないかも。っていうか両手でじゃないと確実に無理だ。

 ムムム、と考えてると、尻のあたりにヴィデロさんの手が添えられた。



「へ、ぅわ!」



 そのままグイッと身体を寄せられて、片手で抱っこ! 思わず驚いて悲鳴を上げてヴィデロさんにしがみついた俺に、ヴィデロさんが「な」とウィンクをしてきた。

 く……、かっこよすぎか。片手でひょいって。お姫様抱っことか、余裕ってことっすよね! 俺も腕立て伏せしよう。



「魚も美味しく食ったし、そろそろ帰るか」

「だね。馬さんも暇してるだろうし」



 と、乗ってきた馬の方を見ると、すごくゆったりした顔をして、草を食んでいた。可愛い。

 素材もあらかたゲットしたし。

 雄太たちにも声を掛けようと振り返ると、雄太とユイは手を繋いで湖を見ていた。



「邪魔したら、ダメだよね……」



 そっと雄太たちから視線を逸らして、ヴィデロさんにそう囁く。

 ヴィデロさんも苦笑して、「じゃあもう少しだけ」と俺を抱き上げたまま足を動かし始めた。



 少しだけ木の茂った方に移動して、雄太たちの視界に入らないようにしてから、ヴィデロさんは俺を下ろしてくれた。



「あっちもいい雰囲気だな」

「うん。入れないから、俺達もちょっとだけ二人でいよ」

「だな」



 二人で見つめ合って、自然と唇が重なる。

 最初は軽くちゅ、ちゅ、としていた唇が、段々と深くねっとりしたものに変わる。

 ダメだって。今、俺成人モードだから、生えてるんだから。

 前部分がテント張ってたら、雄太に余計な情報まで与えちゃうって。

 そうは思っても、止まらない。



「は……、ンぅ……」



 ヴィデロさんの首に腕を回して、唇を堪能する。しばらくはエロいことも出来ないのかと思うと、余計に煽られるんだけど……。



「あ……、んん」



 下半身に熱が溜まってくるのを自覚しながら離れられない俺の背中に、何かがトン、とぶつかった。途端にスッとヴィデロさんの口が離れていく。



「ふあ?」 



 なんだ? と後ろを振り返ると、馬さんがじっと俺たちを見ていた。

 ふんと鼻を鳴らして、俺の背中をぐいっとする。



「え、何、そろそろ帰る?」



 足をパカパカして俺をぐいぐい押すからそう言って確かめると、馬さんは肯定するように歯を剥きだして「ヒヒン」と嘶いた。

 キスに夢中になって馬さんの食事が終わってたことにも気付かなかったよ。ごめんごめん。

 と馬さんの手綱を引いて雄太たちの方に近付くと、ユイが俺と目があった瞬間真っ赤になって顔の前で手をパタパタ振った。



「み、見てないよ? 私、何にも見てないから……!」



 うん、俺達のキス、見てたんだね。その反応に、雄太の顔がめちゃくちゃ楽しそうに笑っていた。まああれだ、末永くお幸せに。

 帰りの馬上でも、ユイは決して俺と目を合わせようとはしなかった。ちらっと見てはサッと目をそらして。ヴィデロさんもそのユイの態度に笑いをこらえていた。





 もちろん、クワットロに帰ったら、行くところは一つ。



「おらおらさっさと案内しろ」

「言われなくてもするって」

「ほら早く。ほらほら早く」

「うるせえ!」



 ぐいぐい雄太が背中を押して海鮮丼屋に案内させようとしてるのがうざくて、ついつい膝カックンをする。油断していた雄太がバランスを崩しへにゃっとなるのを楽しんでから、ヴィデロさんの手を取った。

 ヴィデロさんは、なんだかんだで俺と雄太のやり取りを見て楽しんでるみたいだった。時折笑いそうに眼を細めていた。かっこいい。この人が俺の自慢の恋人なんだ。



「ヴィデロさん、手を繋いでもいい?」

「喜んで」



 嫌がりもせず手を繋いでくれるヴィデロさんに緩む顔を引き締めることもできないまま、俺はデレデレとしながら海鮮丼屋への道を雄太を引き連れて進んでいった。



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