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本編※R-18
クスリの実験台 #1
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「シルフ、今日の任務なんだけど」
「ん?」
シルフの澄んだ瞳に見つめられると、どんなに隠した罪悪感も表面に表れてしまいそうだ。オレは心の中で雑念を振り払って、続けた。
「オレ今日......ちょっと具合が悪くってさ。ごめん、2人じゃないとやり辛い任務なのに。その......」
「風邪か?ここのところ寒いからな」
「あ、う......」
「いいよ。今日は1人で行く」
「あ......ありがとう」
気づかれてしまわないか不安なほど、汗をかいている。それが本当に風邪に見えたのか、シルフは頭を撫でてくれる。
「シアンがいれば心配はないんだが......もしかしたら怪我をしてしまうかもしれない。その時は、血を飲ませて」
「無理は、しないでね」
「シアンこそ世界」
オレは罪悪感に押しつぶされそうになっていた。
シルフが任務に出向くのを見送ると、オレはもう一度シャワーを浴びて、出かける支度をした。全身を疲労感が襲っている。はやく、しないと。
*
「おっ、シアン。おれのちんぽが恋しくなったか?」
そんな訳ねえだろ。無言で首を振る。
オレはこの兄上に連絡をとり、ホテルに来ていた。自分から呼び出すなど癪だったが、そうでもしないともう限界だ。
「そうだ、塗り込んでおいたアレの調子はどうだ?」
アレとは、昨晩この兄上が急にオレを呼び出して、服をひん剥かれてケツに塗られたとある軟膏のことだろう。そのせいで気になってしまって、こうして嫌々来ているのだ。
「どうだ、こっちに来て見せてみろ。............おおっ」
見せる、というか兄上は無理やりオレのズボンのベルトを外して中に手を突っ込み、歓声を上げた。
「......すごい水分だ」
「んん......」
あんまり触られると、もっと気持ち悪い。......昨日からずっと、ズボンの中がびしょびしょで、ぐっすり寝ることもままならなかった。そう、この兄上が勝手に塗りつけてきたこの薬は、塗るとそこから水分が出て止まらなくなるものだった。
そもそも発汗剤として作り始めたようだ。軟膏タイプのものを作っているうち、どこに塗っても水分が出るような仕様が出来上がり、ついにはこの用途に特化したものに改良した、と。
「おれ、天才だろ。出てるものは汗に違いないが、こりゃ誰が見ても『濡れてる』としか言えねえな」
この状態でどうやってあの店の仲間と会話してたんだ?兄は嬉々として聞いた。
「サイアクだよ」
オレは初めて口を開いた。できることなら何も話さず早く終わらせてほしかったが、これだけは言わないと気が済まない。
兄上は確かに、凄腕の化学者だ。魔法が使えるとはいえ、薬などの調合には科学的知識を要する。自室にもそういう設備が一通り揃っていて、毎日爆発音が絶えない。そのせいでいろんな臭いが混ざった体臭をしていて、近寄りたくはないのに、こうして来ざるを得ない状況にされる。
「あーあ、シアンがもっと小さい頃に、発明してればなぁ。もっと用途が増えたろうに」
昔の話はやめてほしい。やるならさっさとしろと急かすと、兄はベッドの上で服を脱ぎ始めた。
「お前は自分で脱げ。じっくり見てやるから」
「くそっ......本当に趣味悪いな」
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