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本編

お互いに過保護なので

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*2人のスキンシップ(ちょっと血みどろ)が見れます










「ウッ......」

 後ろでそんな声がして、オレはオレはサッと顔が青くなった。嫌な予感。振り向くとやっぱり、腹を押さえて俯いている。

「シルフっ」

 こうなってしまうから、オレは自分が弱いのが嫌なんだ。物理で戦えるような人間離れした戦闘力はない。だから魔法で支援するけど魔力はすぐに切れてしまう。いつだって攻撃をする剣も、攻撃を受ける盾も、シルフの役目だ。

「しっかりっ......大丈夫、一旦下がろう」

 ふらついたシルフを支える。腹に弾丸を受けてしまったようで、苦しそうに歯を食いしばっている。オレよりずっと背が高くて、オレの腕がシルフを支えるには心許ないことこの上ない。......だけど全体重で支えるから、力抜いて良いんだからね。手にべったりと血がついて、すごく......泣きそうになる。

「シルフ......シルフ。ここなら大丈夫だから。血、飲もう?」

 浅く息をし続けている。壁際まで下がって、銃弾を受けないように寄り掛からせる。細かい汗の粒が額にたくさん浮いていて、本当に辛そうだ。下瞼に薄く涙が張っている。

「あぁ......。だけど、弾を......抜かないと」

「弾......」

 服に赤い染みが広がっているだけで、銃弾がどのあたりに残っているのか分からない。内臓を傷つけていれば、簡単に取り出すのも難しそうだ。

「シアン......」

 お願い、と吐息のように囁かれる。オレは心を決めて、シャツの布を千切った。
 重厚ではないが美しく筋肉のついた腹。筋肉の形に沿って、血液が赤く流れている。その下腹部のあたり。

「ごめん。......すぐ終わらすけど、痛いよ」



 弾丸が抜けると、すぐにちょっと傷が塞がり始めた。すごい回復力だ。だけどまだ荒い息をしている。回復するときが痛いのかもしれない。

「飲める?血。オレが切ってあげた方がいい?」

 手首に爪を立て、横に引こうとすると、シルフの手がそれを止めた。無声音でつぶやく。

「いつもの......やつで」

「......うん、分かったよ」

 申し訳ないくらい傷を受けていない、きれいなままの首を曝け出す。噛みやすいように、頭を支えて首元に引き寄せる。

 ......カプッ。

 口を付けられ、僅かにピュッ、と血が噴き出る感覚。オレの血管から、シルフの喉へ流れていく。こういうとき、トクン、トクンといつもより自分の鼓動がはっきり聞こえる。リズムに合わせて血液が、流れ出しては飲み込まれていく。シルフの肩をちょっとだけ強く掴む。いつもは少しで止めさせてるけど、今日は好きなだけ飲んでいいよ。

 コクン、コクン......しばらく一定間隔で続いていた血を飲み込む音が止む。

「いいの?」

「うん」

「傷は?」

「もうだいたい......うぅっ」

 オレが腹をつつくと、明らかに痛がる声。遠慮してんじゃねえってば。

「嘘つき。いいからもっと飲めよ」

 オレが貧血になったって、ちゃんと休めば平気だから。




「飯を食べてくれ」

「ん?」

 何、急に。今そんな時間じゃないよ。任務終わって、シャワー浴びたし。もう眠くなるまで雑誌読んで、寝るだけだよ。

「今日血を多めに飲んだ分。ちゃんと食べないと回復しないから」

「いや平気だよ。倒れなかったし、別にお腹減って......」

「だめ。ここ座って。何か作るから」

 お前の料理なら食べるだろってか?......まぁ、シルフの作る卵料理、好きだけど。

「......まずかったら食べないからな」

 その後、出されたフワフワオムレツが美味しかったことは、言うまでもない。
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