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昔の話 (※はR-18)
プレゼント #1
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この街にはいろんなひとがいる。
もちろん多くは人間だ。彼らは自分以外の住民もみな人間だと思って暮らしているから、知るはずもない。そこに混じって、少なからず別の種族も暮らしていることなんて。
人外だって、暮らしてる住民の正体をすべて把握できるわけではない。気付かぬうちに、人間だと思って別の種族と会話していることはある。中には、悪意を持った人外だっている。多くは善良なのだが、悪意を持った一握りの存在に困らされること......それは、どうすれば防げるのだろう?
この街にはまだ、人外と人外の、人外と人間の治安を守る存在がいなかった。そう、天使と悪魔2人のちびっ子を子守りしている魔女のポロロッカは、今はまだただのアンティークショップ経営者。彼女は最近悩んでいた。今日もカウンターに突っ伏してうめいている。
「うぐぐぐ......」
オレンジのポニーテールがだらんと垂れて、原色の観葉植物のようなありさまだ。彼女の手には、数字の書かれたメモが握られている。
「売り上げが、伸びないよぉ......」
彼女の悩み。それは、アンティークショップの経営が芳しくないことだった。
もともとそれほどの利益は求めていなかった。ただ生活のためのお金を稼ぐだけ、この街の住民との繋がりを求めるだけ。だが、このごろは......
「それにしたってっ!売れない!よっ!」
近くに大手百貨店ができたからかもしれない。それと、最近ちびっ子が増えたしなぁ。可愛くてついつい、お菓子とか頑張って作っちゃうんだよなぁ。ポロロッカは支出の方が多い家計簿を眺めて絶望した。
「来てくれるひとたち、割と高価なものを売ってくれちゃうからなぁ」
アンティークショップは常々品物を買い取ってもいる。主に人間に頼れない人外たちがポロロッカの存在を知って、珍しい品物を納品してくれるのだ。中には人間には見せられない魔法アイテムもあったりして......当然店側が対価を支払うし、価値に見合った額を渡さなければ信用が落ちてしまう。
「うううん......」
ポロロッカが頭を抱えていると、ガランガランとドアの鈴が鳴った。誰か入ってきたようだ。対応しなくちゃ......彼女が立ち上がりかけるとしかし、トコトコと軽い足音が近づいてくる。ん、ということは......
「ロロ姉、死んでるの?」
開口一番にかなり攻めた一言だ。ポロロッカの思った通り、子供の高い声。
「んぇぇ......生きてるけど」
「なんかだらしないなぁ。せっかく来たのに、もう帰ろうかな」
「ええいや、......いらっしゃい!なんか食べる?」
「今日は......」
顔を上げると、ちょっともじもじしたシアンが立っている。手には何か持っているようだ。
「どうしたの?」
「今日は、ロロ姉に渡したいものがあって」
「ええっ!?本当に?」
シアンははにかんでうなずくと、手を広げて見せた。そこには......
きれいな紐状の髪飾りがあった。茶色い革製の細いリボン。質はとても良さそうで、長く伸びた両端には不思議な見た目のビーズが一粒ずつ通してある。ひよこ豆くらいの大きさの丸いビーズ。不透明で、陶器で出来ているようにつやつや。赤と青の線で細かく美しい模様が描かれている。その図柄はどこか異国風だ。長く伸びた髪飾りはどこか東洋の龍を思わせる。
「これを......私に?」
「うん。いつも付けてるから、似合うかなって」
にこっと笑って手を差し出してくる。慣れないことに恥ずかしそうに顔を赤らめるシアンの姿に............ポロロッカは、萌え死んだ。
「......?ロロ姉、生きてる?」
「はっ。あ、うん。ちょっと感無量で......」
シアンの手から髪飾りを受け取る。
「ありがとう。すごく嬉しいよ!しかもなんだか不思議なデザインで......どこで買ったの?」
「市場で、不思議なお姉さんが売ってたの」
「アクセサリー屋さんが来てたのかな?うわぁ、私も行ってみればよかったな」
ありがとう、とシアンの頭を撫でる。満ち足りた笑顔。シアンも今はとても楽しそうだ。
東洋風のとんぼ玉の髪飾り。ポロロッカの手の中でそれが微かに、妖しい煙を発していた......だが2人とも、それには気づかない。今はただ、幸せ。
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