それでは今から可愛い悪魔の話をします

短めな話

風邪ひきのわがまま

＊悪魔くんが風邪ひいた話から



「しるふ、しるふ」

　ばしんばしんと肩を叩かれて目が覚める。シアンを看病していたら、横で眠ってしまったようだ。元気ではないようで、舌が回っていない。

「どうした」

「お腹すいた」

「ゼリーでいい？」

「うん」

　立ち上がって冷蔵庫へ。さっき買ってきて冷やしていたカップが色とりどりの列を作っている。

「葡萄、桃、梨......」

「ももー」

「わかった」

　ついでに氷袋も新しいのを取ってくる。風邪のシアンはほんとうにびっくりするほど静かだ。

「シルフ、食べさせて」

「......しょうがないな」

　容器を開けて、一口ずつスプーンで口に持っていってあげると、どんどん咀嚼されていく。あっという間に食べ終えてしまった。
　シアンは熱のこもった息をほぅと吐いて、

「りんごも剥いてきて」

「そんなに食べるのか」

「うさぎの形に切って。そしたらまた......そばにいて」

　どんどん注文が増える。だけど、潤んだ瞳を見ていると、なんでも聞いてあげたくなってしまう。

「ああ。もちろんだ」