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春の箱庭
同級生の特待生
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酷い罪悪感を抱えながら、布団の中で丸まっているうちに、いつの間に眠っていた。
朝日がカーテンの隙間から溢れて来る明るさで、ぼんやりと天井を見上げていた。
一週間ほどしか経っていないのに、自分の体が今までとは大きく変わってしまっていた。
男のペニスを受け入れて快感を拾う。ただ玩具を突っ込んで感じるだけとは違う、明らかに作り替えられてしまった。もうこれを知る前には戻れない。
まさに、栗栖達が言った通りになっていた。
中を満たされて、擦られる充足感。男に羽交い締めにされて、組み敷かれて犯されることに悦びを感じてしまうなんて、有り得ない。唾棄すべきことなのに、確かに熱が点ってしまう。吐き気がした。
「早く、ここから出ないと……」
逃げないと、もっと恐ろしいことになる。既におかしくなっている。
久木が逃げ道を用意してくれている間に、動き出さなければ。
日中の保健室は、道中他の生徒と鉢合わせになる可能性があった。一般生達は、皆理玖の役割を認識したのだろうか。
栗栖達に犯されているときに撮られた映像を、見ているかもしれない。
同じ男に犯されて悦ぶ男を、どんな目で見るだろうか。想像するだけで胸が苦しくなった。今、一般生には会いたくない。
「……裕樹」
端末には、瀬川から体調を心配するメッセージが届いていた。それから、欠席中のノートあとで見せるとも。
あんなことがあったのに、普通に接するようなメッセージを送ってくる瀬川が恐ろしかった。
同時に、昨晩瀬川に抱かれた記憶で自慰をしてしまったことを、酷く恥じた。瀬川が自分を欲情の対象と見ているのと同じように、理玖もまた彼に組み敷かれた記憶で興奮してしまったことが、受け入れ難かった。
彼からのメッセージに何と返せばいいのか。今でも理玖が学園を去ることを諦めていないことを知れば、どんな行動を起こすかわからない。
見なかったことにして、久木からのメッセージを開いた。そこには、特待生寮の共同冷蔵庫の中に、パンとおにぎり、それから野菜ジュースを入れたビニールを下げておいたから食べてと書かれていて、すぐにお礼の返信を打った。
ちょうどお腹が空いたところだった。時計を見れば、朝の六時半。学生の中にはもう寮を出て、朝から開いているショッピングモールの生活必需品コーナーや学食にいる者もいるだろう。
そう考えるとこの特待生寮の中から出ずに済むのは、有り難かった。
昨晩の行為の数々を想像すると、きっとそう早くは起きて来ないだろうと考えて、静かにドアを開けた。
理玖の想像通り、静かな廊下には誰もいない。物音を立てないように気をつけながら、共有部に向かった。
薄暗い共有キッチンの明かりをつけて、冷蔵庫を開けた。各部屋にもビジネスホテルに備え付け程度の大きさの冷蔵庫はあるが、共有スペースにあるのは、一般的な家庭用サイズのそれだった。
中には名前が書かれた飲み物や食べ物があって、三ツ橋と丁寧な字で書かれたビニール袋を開けると、その中にはメッセージ通りシャケとツナマヨのおにぎり、惣菜パン、それから野菜ジュースが収められていた。これで朝と昼に充てろということなのだろう。ありがたく、今はおにぎりをレンジで温めて食べることにした。パンは部屋に持って帰って、昼ごはんにさせてもらおう。
ビニールを手に取って、振り返った瞬間、足音が近づいてくるのに気づいた。
誰か来る。共有スペースなので当たり前なのだが、ついつい身構えてしまう自分がいた。
やがて姿を表したのは、制服姿の生徒だった。当然襟元に桜の刺繍があって、特待生なのだとわかる。
着用している制服の着古した感が一切ないので、きっと同じ一年生だろう。そこまで考えが至ったところで、昨晩聞こえてきた情事の音を思い出して、顔を赤らめた。
「あ、君もしかして三ツ橋?」
「そうだけど……」
話しかけてきた同級生がどうして自分の名前を知っているのだろうと不思議に思って、目を瞬かせた。
「昨日学校で見たハメ撮りの三ツ橋、すごいエロかったからさ」
「ハ……っ!?」
彼の口からサラッと出てきたワードに、理玖の思考が停止した。
どうしてそれを彼が見たのだろう。疑問が伝わったのか、説明された。
「昼休みに、その年の一年の貫通式映像を上映するのが慣わしなんだってさ」
「な、何それ……」
「普通に感覚狂ってるとは思うけどね。まぁ、オレはここでうまく稼いでいくって決めてるから」
事もなげに言う同級生に、理玖は目を見開いた。
「ああ、ごめん。名乗ってなかったけど、オレは1年2組の双葉楓。隣の部屋にいるから、よろしく」
「よろしく……、っ!」
会釈を返したところで、隣人ということは昨日の声の主が双葉であること知って、どんな顔をすればいいのか悩んでしまった。
「ああ、もしかして昨日の声聞こえてた?貫通式は別として、同世代に抱かれるのって初めてだったから、どんなノリでいけばいいのか悩んだんだよね」
「同世代?」
「ああ、オレ義理の父親に抱かれてたから」
いわゆる性的虐待ってやつ、とあまりにもサラリと言われて、理玖は息を呑んだ。
朝日がカーテンの隙間から溢れて来る明るさで、ぼんやりと天井を見上げていた。
一週間ほどしか経っていないのに、自分の体が今までとは大きく変わってしまっていた。
男のペニスを受け入れて快感を拾う。ただ玩具を突っ込んで感じるだけとは違う、明らかに作り替えられてしまった。もうこれを知る前には戻れない。
まさに、栗栖達が言った通りになっていた。
中を満たされて、擦られる充足感。男に羽交い締めにされて、組み敷かれて犯されることに悦びを感じてしまうなんて、有り得ない。唾棄すべきことなのに、確かに熱が点ってしまう。吐き気がした。
「早く、ここから出ないと……」
逃げないと、もっと恐ろしいことになる。既におかしくなっている。
久木が逃げ道を用意してくれている間に、動き出さなければ。
日中の保健室は、道中他の生徒と鉢合わせになる可能性があった。一般生達は、皆理玖の役割を認識したのだろうか。
栗栖達に犯されているときに撮られた映像を、見ているかもしれない。
同じ男に犯されて悦ぶ男を、どんな目で見るだろうか。想像するだけで胸が苦しくなった。今、一般生には会いたくない。
「……裕樹」
端末には、瀬川から体調を心配するメッセージが届いていた。それから、欠席中のノートあとで見せるとも。
あんなことがあったのに、普通に接するようなメッセージを送ってくる瀬川が恐ろしかった。
同時に、昨晩瀬川に抱かれた記憶で自慰をしてしまったことを、酷く恥じた。瀬川が自分を欲情の対象と見ているのと同じように、理玖もまた彼に組み敷かれた記憶で興奮してしまったことが、受け入れ難かった。
彼からのメッセージに何と返せばいいのか。今でも理玖が学園を去ることを諦めていないことを知れば、どんな行動を起こすかわからない。
見なかったことにして、久木からのメッセージを開いた。そこには、特待生寮の共同冷蔵庫の中に、パンとおにぎり、それから野菜ジュースを入れたビニールを下げておいたから食べてと書かれていて、すぐにお礼の返信を打った。
ちょうどお腹が空いたところだった。時計を見れば、朝の六時半。学生の中にはもう寮を出て、朝から開いているショッピングモールの生活必需品コーナーや学食にいる者もいるだろう。
そう考えるとこの特待生寮の中から出ずに済むのは、有り難かった。
昨晩の行為の数々を想像すると、きっとそう早くは起きて来ないだろうと考えて、静かにドアを開けた。
理玖の想像通り、静かな廊下には誰もいない。物音を立てないように気をつけながら、共有部に向かった。
薄暗い共有キッチンの明かりをつけて、冷蔵庫を開けた。各部屋にもビジネスホテルに備え付け程度の大きさの冷蔵庫はあるが、共有スペースにあるのは、一般的な家庭用サイズのそれだった。
中には名前が書かれた飲み物や食べ物があって、三ツ橋と丁寧な字で書かれたビニール袋を開けると、その中にはメッセージ通りシャケとツナマヨのおにぎり、惣菜パン、それから野菜ジュースが収められていた。これで朝と昼に充てろということなのだろう。ありがたく、今はおにぎりをレンジで温めて食べることにした。パンは部屋に持って帰って、昼ごはんにさせてもらおう。
ビニールを手に取って、振り返った瞬間、足音が近づいてくるのに気づいた。
誰か来る。共有スペースなので当たり前なのだが、ついつい身構えてしまう自分がいた。
やがて姿を表したのは、制服姿の生徒だった。当然襟元に桜の刺繍があって、特待生なのだとわかる。
着用している制服の着古した感が一切ないので、きっと同じ一年生だろう。そこまで考えが至ったところで、昨晩聞こえてきた情事の音を思い出して、顔を赤らめた。
「あ、君もしかして三ツ橋?」
「そうだけど……」
話しかけてきた同級生がどうして自分の名前を知っているのだろうと不思議に思って、目を瞬かせた。
「昨日学校で見たハメ撮りの三ツ橋、すごいエロかったからさ」
「ハ……っ!?」
彼の口からサラッと出てきたワードに、理玖の思考が停止した。
どうしてそれを彼が見たのだろう。疑問が伝わったのか、説明された。
「昼休みに、その年の一年の貫通式映像を上映するのが慣わしなんだってさ」
「な、何それ……」
「普通に感覚狂ってるとは思うけどね。まぁ、オレはここでうまく稼いでいくって決めてるから」
事もなげに言う同級生に、理玖は目を見開いた。
「ああ、ごめん。名乗ってなかったけど、オレは1年2組の双葉楓。隣の部屋にいるから、よろしく」
「よろしく……、っ!」
会釈を返したところで、隣人ということは昨日の声の主が双葉であること知って、どんな顔をすればいいのか悩んでしまった。
「ああ、もしかして昨日の声聞こえてた?貫通式は別として、同世代に抱かれるのって初めてだったから、どんなノリでいけばいいのか悩んだんだよね」
「同世代?」
「ああ、オレ義理の父親に抱かれてたから」
いわゆる性的虐待ってやつ、とあまりにもサラリと言われて、理玖は息を呑んだ。
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