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悍ましい一夜

長い夜が始まる ※

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※モブ×久木の描写有


 理玖が目を覚ますと、ソファの上に寝かされていることに気づいた。
 あれ、いつの間に寝てしまっていたのだろう。
 ぼんやりと宙に浮いた視線が、窓に向けられた。あれ、もう夜だ。
 夕方になる前に、香山先生に言わなきゃいけないのに……早く、言いにいかないと。
 どうにも怠い体を起こし、動き出そうとしてーーー体が動かない。なんで?
 腕が後ろに回ったまま、動かなかった。縛られている。

「おはよう、理玖クン」

 混乱の極みにいた理玖が、声のした方を見て、ギョッとした。
 声をかけたと思われる男の後ろ、別のソファの上で、見知った人物の身体が揺れていた。

「久木、先輩……?」
「ああ、これは仕置きだよ。本来君の教育を完遂して、俺達に差し出されるはずの御影が、危うく君を逃がすところだった」
「そんなつもりじゃ……あうッ、んッ、あッ」

 膝立ちになって、後ろから激しくピストンされ、久木が嬌声を上げた。
 後ろから腕を掴まれて、ガクガクと身体を揺さぶられるたびに艶めいた掠れ声が響く。他の生徒の手が伸びてきて、久木の胸の頂を摘み上げた。

「やっ、あッ、んうッ!」
「すっげ、締まる」
「御影チャン、胸いじられるの好きだもんなァ」
「ほら、口も使えって」
「んッ……うッ……」

 立ち上がった男のペニスが、口元に押し付けられて、眉間に皺を寄せながらもそれを口の中に入れる。
 苦悶の表情でそれを受け入れながら、懸命に奉仕をする久木を呆然と見つめていると、耳元で囁かれた。

「駄目だよ。咲秀から逃げ出そうなんて」
「……どう、して」
「何故君と面識すらない俺達が、理玖くんの逃亡未遂を知っていたかって?そりゃ、聞いたからだよ」
「誰、から」
「思い当たる人は一人しかいないんじゃない?ーーー瀬川」

 考えたくなかった。理玖が学校を辞めることを告げていたのは、久木以外にはただ一人しかいなかった。
 男に名を呼ばれた瀬川が、理玖の死角から姿を現した。
 その顔には、なんの表情も映していない。彼が何を考えているのか分からなくて、只々怖かった。

「ゆう、き……?」

 どうして、こんなところに彼がいるのだろう。
 瀬川はまだ学園に入学したばかりの一年生で、学園の裏側など知らないはずなのに。
 ここまできて、それが自分の勝手な想像であることは、明白だった。
 久木のくぐもった嬌声だけが聞こえる室内で、瀬川が静かに口を開いた。

「俺、最初から知ってたんだよ」

 彼の目が、真っ直ぐに理玖を捉えた。その目は何の感情も感じさせず、恐ろしいと思った。

「親父が学園の卒業生だから、全部知ってた。特待生の扱いも、何もかも」
「裕樹、」
「最初は興味だった。話でしか聞いていなかった、特待生ってのがどんな奴なのか」

 瀬川の独白が、淡々と続く。

「理玖は普通の奴だった。確かに綺麗だし、なんか色っぽいところもある。世間知らずで、俺たちとは違う世界で生きてたんだなってのも」

 生きてる世界が違う。改めてそう言われると、辛いものがあった。
 貧乏人で、毎日家族のために働いていた理玖と、何の不自由もなく生きてきた彼らとはまさしく生きる世界が異なった。
 この世界には、どうしようもないほどの格差がある。
 どれほど能力があっても、持たざる者は、持つ者と同じように生きることはできない。
 他ならぬ、友人の口から突きつけられる。

「でも、話しているうちに仲良くなりたいって思った。友達でいたい、けど……理玖は、特待生だ」

 特待生に課せられる仕事を、知っていた。既に体を開かれているのかもしれない。男を受け入れて、苦痛と悦楽に悶える理玖を想像して、自慰に耽ったこともあった。
 最初は友達としての好意だったはずなのに。いつしかそれは、友情ではなく執着と肉欲を孕んだものに豹変した。

「好都合だと思った。特待生制度を利用すれば、俺だけのものには出来ないけど、理玖を手に入れられる」
「………」

 絶句した。
 瀬川がそんなことを考えていたなんて。あの笑顔の裏で、理玖への歪んだ執着を抱えていたなんて。知る由もなかった。

「特待生の運用は、学業への支障を最低限にすることと、心身に過大な負荷をかけないこと。それからドクターストップ……香山センセが止めない限りは、学生の自治に任されてる」

 ニヤニヤと理玖と瀬川を見ていた男が、説明を始めた。

「俺達、特待風紀委員がメインでやってんだよ。俺は委員長の栗栖くりすだ。どうぞよろしく」
「……どうも」
「ハハ、お前これから犯される相手に挨拶するとか……面白いな」
「っ」
「肩に力入った?そこの瀬川クンは、お前が学園を辞めるかもって不安になって、俺達に相談してきた。確かに制度上は、香山センセにドロップアウトを申し入れれば退学は認められる。でも、甘いぜ。ここまで一週間とはいえ、君には金がかかっている。中退なんてことになったら、学費その他諸々請求が来る……なんてのは、ちょっと考えればわかるだろ?」
「そんな……」

 目の前が真っ暗になった。
 家族に過大な迷惑をかけるところだった。短い期間だが、この学園での暮らしはかなりの経費がかかっている。

「うっわ、ひでーな御影。可愛い後輩に借金おっかぶせるつもりだったのかよ」
「ちが、ふっ、ぐっんんっ!」

 久木を嬲っていた上級生が、茶々を入れた。否定しようとする彼の喉へと、ペニスがさらに突き入れられた。
 強制的に黙らされて、穿たれて久木の身体が跳ねる。

「マ、学園も鬼じゃねえ。支払いに猶予はくれるから、自分で働いて返すことも出来んじゃないか?話は戻るけど、友達かつ好きな子が辞めちゃうって不安になった瀬川クンに、俺達が安心安全の睡眠薬をプレゼントした。呑気に瀬川クンからもらった飲み物を飲んで、眠りこけた理玖クンを運んできたってわけだ」
「ちなみに、別室で他の一年の特待生も処女喰われてるぜ。今年は一人、すでに縦割れのビッチがいたけど」
「耳澄ましてみろよ。隣の部屋からエロい声聞こえるから」

 意識してしまったせいか、黙っていた理玖の耳に甲高い嬌声が聞こえてきた。
 同じ、一年生が既に犯されているのだ。
 散々久木を犯し、ぐったりした彼を横たえて男達が寄ってきた。

「瀬川クンには感謝してるよ。危うく一人オンナを逃がすところだった」
「だから、理玖チャンの処女は瀬川クンにやるよ」
「ヒッ」

 反射的に後ろに逃げようとしたのを、捉えられて羽交い締めにされる。

「サァ、貫通式を始めようか」
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