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高二ノ秋3
親衛隊と悪役令嬢1
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小一時間はトイレに閉じこもってたんじゃないかと思う。
我孫子が部屋を出て行く音が聞こえてきて、ようやくドアを開けて辺りを見渡した。……よし、いない。
スタコラサッサとばかりに部屋から逃亡した俺は、そのまま龍次の部屋に行こうとしたが……いや、流石にそれはまずいのでは?と我に返ってやめた。
アイツは風紀委員長だ。だから泊めてくれと言われても、軽率に頷くわけにはいかない。夜消灯後に自室を出ることは、校則で禁止されているからだ。
学園の警察組織的役割の、しかもトップがそれを破ってしまえば、必然的に秩序は崩壊する。そこに気が回らないほど、俺も馬鹿ではない。
しかし他に頼れるような人……と考えるが、浮かんでこなかった。学園ではあまり目立たず、積極的に人に絡むようなこともなかったので、我孫子がいないとボッチになってしまうのである。
うわ、俺の友達……いなさすぎ……?
年収低すぎみたいなことを考えつつ、強いていえば五十嵐とか、この前再会したばかりの小学校の同級生、古見を候補に挙げたが、すぐに却下した。
こいつら生徒会じゃん。何が起こるかわかったもんじゃない。実際五十嵐には押し倒されたばっかりだし……しかも、キスされたし。いくら校則で淫行禁止って言われてても、お触りまでならオッケーとか言い出すやつも居るので、目下信用ならない集まりの生徒会を頼るのは愚策だ。
仕方なく、軽く廊下を歩いて自室に戻ってくると、呑気に我孫子が座っていた。
「あ、お帰り~流石に他の人の部屋に行くほど馬鹿じゃなかったね」
「うせぇ」
「龍次くんと僕くらいしか、まともな友達もいないもんね。司くんボッチだし」
「殴るぞ」
「おお、綺麗なフォーム」
流石にここまで煽られて黙って聞いているほど、気が長くはない。
パンチを繰り出すが、涼しい顔で我孫子を避けた。こいつ、動きが早いな……。
「まぁ寝なって。流石に寝ている司くんに手を出したりしないよ。反応がないのは趣味じゃないし」
寝不足で司くんのモチモチ肌が燻んじゃうのも嫌だしね~、などと呑気に言ってベッドに入っていく我孫子を睨みつけながら、自分も寝る準備に取り掛かったのだった。
翌朝、先に目覚めた我孫子は昨日のことなんてなかったんじゃないかってくらいに元の我孫子だった。
軽く寝坊した俺にせっせと世話を焼き、一緒に学食へ。学食に入ると妙な歓声が上がるのは、もう慣れてきた。慣れたくなかったけど。
そして午前の授業を受けると、委員会の仕事があるからと我孫子が消えていく。
今日の昼飯どうするかな、と机でうんうん悩んでいると、影が差した。
「東條様、少しお時間いただいてもよろしいですか?」
「………何か、用?」
「ええ、こちらでは少し話しにくい内容ですので。場所を変えさせてください」
三人いるうちの、一人には見覚えがあった。
生徒会長の親衛隊だ。王道学園なるものには、要職や目立つ奴には親衛隊ができる。生徒会のは公認で、他は大抵非公認。男が男の親衛隊とか信じられないんだが、あるんだなこれが。
美作の親衛隊を去年やっていたのだから、会長が継続であるってことは、今も親衛隊なんだろう。
クラスの連中に見送られながら、親衛隊の連中に連れて行かれるのだった。
我孫子が部屋を出て行く音が聞こえてきて、ようやくドアを開けて辺りを見渡した。……よし、いない。
スタコラサッサとばかりに部屋から逃亡した俺は、そのまま龍次の部屋に行こうとしたが……いや、流石にそれはまずいのでは?と我に返ってやめた。
アイツは風紀委員長だ。だから泊めてくれと言われても、軽率に頷くわけにはいかない。夜消灯後に自室を出ることは、校則で禁止されているからだ。
学園の警察組織的役割の、しかもトップがそれを破ってしまえば、必然的に秩序は崩壊する。そこに気が回らないほど、俺も馬鹿ではない。
しかし他に頼れるような人……と考えるが、浮かんでこなかった。学園ではあまり目立たず、積極的に人に絡むようなこともなかったので、我孫子がいないとボッチになってしまうのである。
うわ、俺の友達……いなさすぎ……?
年収低すぎみたいなことを考えつつ、強いていえば五十嵐とか、この前再会したばかりの小学校の同級生、古見を候補に挙げたが、すぐに却下した。
こいつら生徒会じゃん。何が起こるかわかったもんじゃない。実際五十嵐には押し倒されたばっかりだし……しかも、キスされたし。いくら校則で淫行禁止って言われてても、お触りまでならオッケーとか言い出すやつも居るので、目下信用ならない集まりの生徒会を頼るのは愚策だ。
仕方なく、軽く廊下を歩いて自室に戻ってくると、呑気に我孫子が座っていた。
「あ、お帰り~流石に他の人の部屋に行くほど馬鹿じゃなかったね」
「うせぇ」
「龍次くんと僕くらいしか、まともな友達もいないもんね。司くんボッチだし」
「殴るぞ」
「おお、綺麗なフォーム」
流石にここまで煽られて黙って聞いているほど、気が長くはない。
パンチを繰り出すが、涼しい顔で我孫子を避けた。こいつ、動きが早いな……。
「まぁ寝なって。流石に寝ている司くんに手を出したりしないよ。反応がないのは趣味じゃないし」
寝不足で司くんのモチモチ肌が燻んじゃうのも嫌だしね~、などと呑気に言ってベッドに入っていく我孫子を睨みつけながら、自分も寝る準備に取り掛かったのだった。
翌朝、先に目覚めた我孫子は昨日のことなんてなかったんじゃないかってくらいに元の我孫子だった。
軽く寝坊した俺にせっせと世話を焼き、一緒に学食へ。学食に入ると妙な歓声が上がるのは、もう慣れてきた。慣れたくなかったけど。
そして午前の授業を受けると、委員会の仕事があるからと我孫子が消えていく。
今日の昼飯どうするかな、と机でうんうん悩んでいると、影が差した。
「東條様、少しお時間いただいてもよろしいですか?」
「………何か、用?」
「ええ、こちらでは少し話しにくい内容ですので。場所を変えさせてください」
三人いるうちの、一人には見覚えがあった。
生徒会長の親衛隊だ。王道学園なるものには、要職や目立つ奴には親衛隊ができる。生徒会のは公認で、他は大抵非公認。男が男の親衛隊とか信じられないんだが、あるんだなこれが。
美作の親衛隊を去年やっていたのだから、会長が継続であるってことは、今も親衛隊なんだろう。
クラスの連中に見送られながら、親衛隊の連中に連れて行かれるのだった。
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