男子校の悪役令嬢

冴島

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高二ノ秋3

仮面を剥いだ肉食動物

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※R-15くらいのお触りあり


「あー、可愛い。このまま押し倒して食べちゃいたいくらい」

 腰を掴んで、引き寄せてくる我孫子を押し退けようと四苦八苦するが、ガッチリ掴んだ手が動く気配ない。
 おい、腰から尻を触るな。揉むな。気色悪い。
 声は聞き慣れた我孫子のものなのに、本性を現した声色は全然違う。ねっとりと張り付くような、耳元で息を吹きかけるように囁かれると、ゾクリと悪寒が走った。

「ふ、ざけんなっ、離しやがれこの変態」
「えー?どうしようかな。折角だからこのままヤっちゃおうかと。というか司くん、同室だからって無防備にパンイチで彷徨くからいつもムラムラさせられてたんだよね」

 確かに我孫子の前では何も気にせずにいた。
 入学当初、最初はこいつ相手にも猫かぶっていたはずなのに、いつの間にか素で接していたし、それも巧みに誘導されていたのかもしれない。
 我孫子の手が、シャツの隙間から入ってきて下腹部を撫でた。変な触り方をしてくるせいで、ビクッと震えてしまう身体が恨めしい。

「誰も邪魔に入らないし、この部屋には盗聴器も無いことはチェック済み。学園側にもバレないから、ヤリたい放題だよ」

 どうしようかなー、なんて呑気に言いながら、手の方はえげつなくズボンの中に入ってきて鼠蹊部を撫でる。
 絶妙に決定的なところには触れてこないもどかしさで、熱い吐息が漏れた。

「その気になってきた?」
「そんなわけ、ないだろ……っ」
「でも、ここ勃ってきてるよ?」

 服の上から、股を触られた。奴のセクハラめいた触り方のせいで、確かに変な気分になってきている。

「生理現象だっ」
「うんうん。若いから正直な身体だよね。心配だよ、僕だけじゃなくてあの腹黒会長やら似非チャラ男会計にペロリと喰われちゃんうじゃないかって。言葉巧みに学校から連れ出して、ホテルに連れ込まれてもおかしくないって」
「お前じゃないんだから、そんなことするわけねーだろ!」
「この前会計に押し倒されてたくせに」
「なんでそれを」
「フフ、僕に隠し事は出来ないよ?」

 まさかこいつ、俺に盗聴器仕掛けてるんじゃないか?そうでもなければ、押し倒されたことまで確信をもって知っているのはおかしい。

「ほんとちょろすぎて心配」
「お前が言うなっ」
「うんうん、そうだね。隙あり」
「っふ、ぅ……んむぅ……ッ!?」

 伸びてきた手が顎を掴んで、唇が重なった。抉じ開けられた唇の隙間から侵入してきた舌が、俺の舌を引っ張り出して吸い上げてくる。
 五十嵐とのそれなんて、子どものママゴトなんじゃないかってくらいの、激しいキスだった。口蓋を舐められるとゾクゾクとした感覚が背筋を駆け抜け、身体に力が入らなくなる。
 息をする暇も与えられず、酸欠でクラクラしてくる。
 壁に押し付けられて、ひたすらに貪られて意識が遠くなってきた。
 駄目だ、これ以上はマジでやばい。

「ん、んーーっ、ぷはっ」

 渾身の力で奴を押し返すと、膝蹴りをお見舞いした。残念ながら簡単に躱されてしまったが、それでも距離はとれた。

「おお、流石は元総長。お転婆だね」
「ふざけんな、このセクハラ野郎っ」
「いいのかなー?お父上に悪い報告しちゃうかも」
「脅すつもりか」

 ニヤリ、と厭らしく口角を上げる我孫子。そこには、一年半過ごしたはずのミーハーでお調子者の奴の面影はない。
 完璧に騙されていたことに、イライラしてくる。

「マ、僕としてもここを退学させてしまうと仕事が終わっちゃうから本意ではないんだよね。だから、」

 精々これからも楽しませてよ。

 なんてのたまう我孫子から逃げるようにトイレに駆け込んで、鍵を閉めた。

「ヌくの?こっちでやればいいのに」

 無視して大きく息を吐いた。
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