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高二ノ秋2
子どもの四年は大きい
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放課後。
部活に入っているわけでもなく暇人なので、敷地内のショッピングセンターに買い物に来ていた。
夜に龍次の部屋に遊びに行くので、適当にポテチでも買っていくかと食料品売り場を物色する。あいつ確かコンソメが好きだったよな。俺は薄塩派だから、両方買っていくか。それからコーラに、サイダー。
久しぶりに昔馴染の連中と連絡が取れるとあって、舞い上がっていた。特に、手紙一枚で丸投げしてしまった副総長の皆月には悪いことをしたので、直接詫びを入れたかった。恐らく今は、アイツが総長をやっているんだろう。変なところで真面目な奴だから、俺が帰ってくることを見越して「総長代理」にしているなんてこともあるかもしれない。
早く夜にならないものかと浮かれながらポテチの袋に手を伸ばすと、同じ商品を取ろうとした客と手がぶつかった。
「あ、ごめん……っ」
「いや、こっちこそ」
おっかなびっくりと手を引っ込めたのは、黒縁メガネの気弱そうな奴だった。
ラスト一袋だった薄塩のポテチを、彼も買おうとしたのだろう。とはいえ、目的の品は一つしかない。
「俺のり塩でいいから、どうぞ」
「え、あ……ボクこそ、大丈夫」
「遠慮するなって、はいこれ」
「あ、ありがとう……」
消え入りそうな声で薄塩の袋を受け取ると、カゴに入れた。既にカゴの中には二リットルのコーラやら、チョコやら、ガムも入っている。お菓子パーティーの買い出しだろうか。
「その、東條君って思ったより話しやすいんだね」
「……悪りぃ、どっかで会ったっけ?」
見覚えがない。ネクタイの色から見て、同じ学年なのだろうけど、少なくともクラスは違った。
「小学校同じだったの、覚えてる?」
「え、マジ?全然思い出せない」
「クラスは違うけど、委員会が一緒だった古見だよ」
「ふるみ、古見……あ、もしかして古見新!?」
そういえばそんな奴いた、と名前を言えば、こくりと頷いた。
うわ、懐かしい。そういえばそんな奴いたな。
小学生時代は、まだギリギリヤンチャで済まされる活発な子どもだった俺は、放送委員会で好き勝手盛り上げ放送をしては、教師に怒られていたものだ。子どもサイドには好評だったものだ。
「中学に合わせて親の転勤で引っ越したんだけど、同じ高校で……でもイメージと違ったから、同じ人なのか自信がなかったんだ。でも、こうやって直接話したら全然変わってなくて安心した」
「あ~……その、ちょっと深い訳があってだな……」
この学園に放り込まれてからは、目立たないように物静かに過ごしていたのだ。龍次でさえ、すぐに話しかけずに様子を見ていたくらいなので、小学校以来とあっては同一人物だと結びつかないのも無理はない。
「面倒な役割ってのも押し付けられるし、何だよ悪役令嬢って」
「確かに……大変だね」
うんうん、と同情気味に頷く古見。
勝手に押し付けられたイメージを壊さないように過ごさなければならないので、こうして素の俺を知っている人に会えたのは僥倖だった。
「連絡先交換しようぜ」
「うん、ボクでよければ」
いっぱいのお菓子と甘い飲み物を抱えて寮に向かっていった古見と別れると、別の方向から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あ、東條先輩」
「紘川じゃん」
ヒロインこと、紘川がマイバッグを手に歩み寄ってきた。袋の中には野菜が見える。夕飯の買い出しで来たのだろう。
「先輩、さっき喋ってた人と知り合いですか?仲良さそうに見えましたけど」
「小学校の同級生だったんだよ。世間って狭いな」
「へ~、でもあの人……生徒会の書記に選ばれてた人ですよ?」
「え?」
そこまで聞いたところで思い出した。
アイツ、古見って昔はもっと活発なキャラだったよな、と。
部活に入っているわけでもなく暇人なので、敷地内のショッピングセンターに買い物に来ていた。
夜に龍次の部屋に遊びに行くので、適当にポテチでも買っていくかと食料品売り場を物色する。あいつ確かコンソメが好きだったよな。俺は薄塩派だから、両方買っていくか。それからコーラに、サイダー。
久しぶりに昔馴染の連中と連絡が取れるとあって、舞い上がっていた。特に、手紙一枚で丸投げしてしまった副総長の皆月には悪いことをしたので、直接詫びを入れたかった。恐らく今は、アイツが総長をやっているんだろう。変なところで真面目な奴だから、俺が帰ってくることを見越して「総長代理」にしているなんてこともあるかもしれない。
早く夜にならないものかと浮かれながらポテチの袋に手を伸ばすと、同じ商品を取ろうとした客と手がぶつかった。
「あ、ごめん……っ」
「いや、こっちこそ」
おっかなびっくりと手を引っ込めたのは、黒縁メガネの気弱そうな奴だった。
ラスト一袋だった薄塩のポテチを、彼も買おうとしたのだろう。とはいえ、目的の品は一つしかない。
「俺のり塩でいいから、どうぞ」
「え、あ……ボクこそ、大丈夫」
「遠慮するなって、はいこれ」
「あ、ありがとう……」
消え入りそうな声で薄塩の袋を受け取ると、カゴに入れた。既にカゴの中には二リットルのコーラやら、チョコやら、ガムも入っている。お菓子パーティーの買い出しだろうか。
「その、東條君って思ったより話しやすいんだね」
「……悪りぃ、どっかで会ったっけ?」
見覚えがない。ネクタイの色から見て、同じ学年なのだろうけど、少なくともクラスは違った。
「小学校同じだったの、覚えてる?」
「え、マジ?全然思い出せない」
「クラスは違うけど、委員会が一緒だった古見だよ」
「ふるみ、古見……あ、もしかして古見新!?」
そういえばそんな奴いた、と名前を言えば、こくりと頷いた。
うわ、懐かしい。そういえばそんな奴いたな。
小学生時代は、まだギリギリヤンチャで済まされる活発な子どもだった俺は、放送委員会で好き勝手盛り上げ放送をしては、教師に怒られていたものだ。子どもサイドには好評だったものだ。
「中学に合わせて親の転勤で引っ越したんだけど、同じ高校で……でもイメージと違ったから、同じ人なのか自信がなかったんだ。でも、こうやって直接話したら全然変わってなくて安心した」
「あ~……その、ちょっと深い訳があってだな……」
この学園に放り込まれてからは、目立たないように物静かに過ごしていたのだ。龍次でさえ、すぐに話しかけずに様子を見ていたくらいなので、小学校以来とあっては同一人物だと結びつかないのも無理はない。
「面倒な役割ってのも押し付けられるし、何だよ悪役令嬢って」
「確かに……大変だね」
うんうん、と同情気味に頷く古見。
勝手に押し付けられたイメージを壊さないように過ごさなければならないので、こうして素の俺を知っている人に会えたのは僥倖だった。
「連絡先交換しようぜ」
「うん、ボクでよければ」
いっぱいのお菓子と甘い飲み物を抱えて寮に向かっていった古見と別れると、別の方向から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あ、東條先輩」
「紘川じゃん」
ヒロインこと、紘川がマイバッグを手に歩み寄ってきた。袋の中には野菜が見える。夕飯の買い出しで来たのだろう。
「先輩、さっき喋ってた人と知り合いですか?仲良さそうに見えましたけど」
「小学校の同級生だったんだよ。世間って狭いな」
「へ~、でもあの人……生徒会の書記に選ばれてた人ですよ?」
「え?」
そこまで聞いたところで思い出した。
アイツ、古見って昔はもっと活発なキャラだったよな、と。
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