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高二ノ秋2
会計の思惑
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我孫子の妄想が炸裂して話が脱線しまくったが、要は生徒会の連中に近づかなければいい。呼び出される可能性も無きにしも非ずだが、奴等もエンタメ的な意味で俺に害を及ぼうそうというのなら、人前で行動を起こすはずだ。
だったら、呼び出しなんて総スルーすれば良い。こっちは伊達に悪役を任されてはいない。言われた通りに素直にことを進めてやるつもりなんて、更々ないのだった。
翌日も、登校してみれば周りの連中はコソコソと噂話をしていた。
「昨日、司様が風紀に呼び出されてたの、なんだったんだろう?」
「中庭の熱烈キス事件についてじゃない?」
「確かにあれは大変えっちなキスだった」
「お前みてたの!?いいな~」
「ここに途中から動画がある」
「マジ?見せて」
「学内共有投稿サイトにアップされてるぜ」
おい肖像権って概念はこの学園にはないのか。
美作との例のキスシーンは、居合わせた誰かが途中からスマホで撮影した動画が拡散されていた。これはひどい。
昨日連絡先を交換した龍次からも対応するとはメッセージはあったが、多分既に保存されていたりでイタチごっこになるのは明白だった。忌まわしきネット社会。学園側も対策しろよ。
試しにどんな風に撮られてるのかと自分で見てしまったが、ウッワー!と途中で耐えられなくなって端末ごとシャットダウンした。誰が自分のキスシーン(しかもディープなやつ)を見たいというのか。なんたる拷問。
「キスされてる司くん、めちゃくちゃ顔がエロいもんね……」
うんうん、と横で頷く我孫子。
違う、そうじゃない。
とりあえず熱りが覚めるまでは、例の中庭には近づかないことにした。紘川にもそうメッセージを送ると、彼も同じように別のところで昼食を取ることにしたようだ。
せっかくの穴場スポットをダメにしてしまい、申し訳ない。
はてさて、どこでランチタイムと洒落込むか。学食はいつもの視線と声が煩いし、風紀にお邪魔するのも忙しくて迷惑だろうし……仕方ない、買ってきて寮の部屋で食べるか。
残念ながら昼は我孫子はいつも委員会の仕事がある(アイツは飼育栽培委員)ので、一人で購買でパンを購入し、人気の少ない寮の廊下を歩いた。
わざわざ昼休みに寮に戻る生徒は少ない。そりゃそうだ。学食に行けば栄養バランスの整った飯にありつけるし。昼寝に戻ってくる奴くらいなものだが、そういう人はさっと部屋に入ってギリギリに出て行くので、廊下が静かになるのは必然だった。
「はー、学食のランチが食べたい」
「食べればいいんじゃない?」
「そう簡単な話じゃないんだよ……って、お前」
気楽な独り言だった筈が、何故かキャッチボールが続いてしまって、その場に足を止めた。
「ヤッホー、話題のキス顔がエロい悪役令嬢さん」
「……五十嵐」
「露骨に悲しい顔されて悲しい~」
「そんなこと思っても無いくせに」
「バレた?」
廊下の角に立っていたのは、生徒会会計の五十嵐だった。
元爽やか系、現チャラ男という、わかりやすく学園のキャラ設定に当て嵌めてキャラ変をしてみせた五十嵐が、ニヤリと笑みを浮かべる。
「こんなところで会うなんて、奇遇だね」
「あっそ、じゃあな」
「まあまあ、そう言わず。これから昼飯なんでしょ?俺の部屋で一緒に食べよ」
「ハァ?」
「うわ、すごいドスが効いてる」
突然何を言い出すんだこいつ、と顔を顰めた。
だったら、呼び出しなんて総スルーすれば良い。こっちは伊達に悪役を任されてはいない。言われた通りに素直にことを進めてやるつもりなんて、更々ないのだった。
翌日も、登校してみれば周りの連中はコソコソと噂話をしていた。
「昨日、司様が風紀に呼び出されてたの、なんだったんだろう?」
「中庭の熱烈キス事件についてじゃない?」
「確かにあれは大変えっちなキスだった」
「お前みてたの!?いいな~」
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試しにどんな風に撮られてるのかと自分で見てしまったが、ウッワー!と途中で耐えられなくなって端末ごとシャットダウンした。誰が自分のキスシーン(しかもディープなやつ)を見たいというのか。なんたる拷問。
「キスされてる司くん、めちゃくちゃ顔がエロいもんね……」
うんうん、と横で頷く我孫子。
違う、そうじゃない。
とりあえず熱りが覚めるまでは、例の中庭には近づかないことにした。紘川にもそうメッセージを送ると、彼も同じように別のところで昼食を取ることにしたようだ。
せっかくの穴場スポットをダメにしてしまい、申し訳ない。
はてさて、どこでランチタイムと洒落込むか。学食はいつもの視線と声が煩いし、風紀にお邪魔するのも忙しくて迷惑だろうし……仕方ない、買ってきて寮の部屋で食べるか。
残念ながら昼は我孫子はいつも委員会の仕事がある(アイツは飼育栽培委員)ので、一人で購買でパンを購入し、人気の少ない寮の廊下を歩いた。
わざわざ昼休みに寮に戻る生徒は少ない。そりゃそうだ。学食に行けば栄養バランスの整った飯にありつけるし。昼寝に戻ってくる奴くらいなものだが、そういう人はさっと部屋に入ってギリギリに出て行くので、廊下が静かになるのは必然だった。
「はー、学食のランチが食べたい」
「食べればいいんじゃない?」
「そう簡単な話じゃないんだよ……って、お前」
気楽な独り言だった筈が、何故かキャッチボールが続いてしまって、その場に足を止めた。
「ヤッホー、話題のキス顔がエロい悪役令嬢さん」
「……五十嵐」
「露骨に悲しい顔されて悲しい~」
「そんなこと思っても無いくせに」
「バレた?」
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「こんなところで会うなんて、奇遇だね」
「あっそ、じゃあな」
「まあまあ、そう言わず。これから昼飯なんでしょ?俺の部屋で一緒に食べよ」
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