男子校の悪役令嬢

冴島

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高二ノ秋1

予期せぬ再会

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 風紀委員の根城、風紀委員室は、学園の特別教室棟の四階に位置している。ちなみに生徒会室は二階にあり、それぞれ対角線上の正反対にあった。
 生徒会が人気投票での選出であるのに対して、風紀委員は「役割」という扱いなっているが、つまりはちゃんと仕事を全う出来そうな人材が推薦されているという仕組みだった。
 風紀委員に入り、きっちり仕事をこなせる上にトップとしての器がある二年生が、秋に風紀委員長に任命される。
 風紀は、学園の警察組織的な扱いだ。教師に代わって服装や持ち物検査、それから学園内のトラブルにも介入する。
 学内でのコンプラ違反は、風紀委員にひっ捕らえられて、相応の処罰を受ける。

 特別教室棟の廊下を歩く間も、チラチラヒソヒソと鬱陶しいものを感じ内心うんざりしながら、ようやく風紀委員室の前に辿り着いた。
 気持ちはさながら、中学の時に世話になった警察に補導された時の気分だ。馴染みの生活安全課のおっさんに、いい加減無免許運転はやめなさいよと耳タコになるほど言われて、瀬馬が迎えに来て返されていた。
 ウルセー無免許がまずいのは俺だって知ってんだよ。十六になったらちゃんと免許取るつもりだったのに、それも結局ここに入れられたせいでご破産になった。クソ親父め。
 しっかし、なんで呼び出されたんだか。思い当たるとしたら、昼のひと騒動だが、それはあの生徒会長のせいだ。俺は悪くない。
 さっさと終わらせて寮に戻ろうと、意を決してドアをノックした。

「失礼します。二年の東條です」

 流石に素で話はしない。ここは癪だが御令嬢キャラで、猫を被りまくって適当にいなして帰ろう。それが早い。

「入れ」

 ドアの向こうから相変わらずクッソ良い声のバリトンが聞こえてきた。許可を得たので、ドアを開いて中に入る。
 真っ直ぐ、窓際にあるデスクには「新風紀委員長」が座っていた。その隣には、バリトンボイスの持ち主である「元風紀委員長」の二階堂志磨にかいどうしまが立っていた。

「え……?」

 そこにいる、あまりにも見知った顔の人物に、俺は言葉を失って立ち尽くした。

「その様子では、掲示板もマトモに見ていないようだな」

 二階堂が呆れたように言う。
 うるせー自分が悪役令嬢なんていう意味わからない役割を充てられて、他の奴なんか気にしてられるか。

「編入しても、全然知られませんでしたからね」

 新風紀委員長が、クスリと笑う。

「総長、じゃなかった……司は、前からいつも真っ直ぐでしたから。俺が近くで見守っていることも気づかず、いつだって一生懸命で」
「随分と、彼のことをよく知っているんだな」
「そりゃ、小学校からの付き合いでしたから」

 そこにいるのは、新風紀委員長はーーーガキの頃からのダチで、暴走族の頭をやっていたときも一緒にいた。

「ずっと近くにいたのに、全然バレないとは思わなかったよ」

 山本龍次やまもとりゅうじだった。

「えっ、龍次?なんで」
「半年前、二年の新学期のタイミングで編入試験受けて入ったんだよ。そしたら選挙管理委員会とか言う奴らに、ガタイ良いから風紀入れって無理やり言われてさ。元ヤンの俺が、ガキのおままごとみたいな警察の真似事なんてしてられるかって思ったんだけど、二階堂先輩にみっちり扱かれてさ。気づいたら風紀委員長にさせられてたってわけ」
「ぜんっぜん気づかなかった……」

 というか、この学園に編入するなんて、山本ンちどんな家なんだ。

「親父が再婚してさ、若い嫁さんとの時間を邪魔されたくないって偶然司と同じ学校に放り込まれたんだよ。でもよかった……また会えて」

 幼馴染との、久しぶりの再会。
 相変わらず顔が濃い奴だ。しばらく見てない間に、さらに背が伸びた気がする。
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