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episode.15 新しい友達
しおりを挟むシャワー室の中は狭い脱衣所に申し訳程度の籠が置いてあり、ぺらぺらの撥水加工されたカーテンの向こうに人一人が屈める位のスペースしかないステンレス張りの洗い場があった。
借りたバスタオルとジャージを籠の左側に、着ていたチュニックと湿り気を帯び脱ぎにくいウェットスーツは適当に畳んで右側に納める。
流石に下着の替えはないのでさっきまで着ていたものを軽く洗って強く絞り使い回す事にした。
お姉さんが待っているからと使い勝手の分からないシャワーを急いで浴び、髪もろくに乾かさないまま借りた服に手を伸ばした。
ズボンを引っ張り出すとぱさりと何かが落ちた。ジャージの間に何かが挟み込まれていたみたいで、落ちた薄い布を拾い上げる。
それが私の手の中で形を成した時、私の想像しない物の出現に思わず大声が出てしまう。
「えぇっ!」
一度目を逸らしてしまったが、恐る恐る掌中の物を確かめる。
サテンの滑らかな触り心地にヒラヒラのレース──所謂女性物のパンティーだった。
しかも中学生なんかが履かないどころか目にする事もないような布面積の少ないセクシーな代物。
あのお姉さん、こんなもの履いてるんだと変に想像してしまったから更に気まずさが増す。私はそれをあまり見ないようにしながらバスタオルに素早く包んだ。
濡れた髪のまま外に続く自動ドアを通り抜け辺りを見回すと、その横の壁にもたれかかってスマホを弄っていたお姉さんと目が合った。
お姉さんはスマホを上着のポケットにしまいながらこちらに手を振った。
「おーい、こっち!」
私は腕の中の物を抱え込み、小走りで彼女の元へ向かう。
「すみません、お待たせしました」
「ううん、全然。寧ろ早かったね」
「いえ……あの、これ、ありがとうございました」
お姉さんの姿にバスタオルの中の存在を思い出し、また一人気まずくなってあまり彼女の方を見ずに借りた物を返した。
お姉さんはそんな私の様子を気にせず会話を続ける。
「えーと、直、でいい?」
「えっ」
突然名前を呼び捨てで呼ばれ返事よりも先に驚きの声が出た。それにお姉さんは苦笑いを返した。
「あ、ごめん、私ちゃん付けとかできなくて。いきなり呼び捨ては嫌?」
「あ、いや、大丈夫です。えと……」
そういえばお姉さんの名前をまだ聞いていない。ちらりと彼女の顔を伺うと、彼女はああ! と声を上げた。
「私の名前まだ言ってなかったね。サトって呼んで」
「サトさん、ですか」
「さんはいらないよ、サトでいいって。敬語もいらないし」
「えっ……と」
そう言われても相手は私より年上の大人だし、私は大人に気兼ねなくタメ口を使えるようなタイプではない。
いくら相手が良いと言ってもそれは良くない、と断ろうと思ったが。
「いらないから、ね」
「……分かったよ……」
「素直でよろしい」
サトの圧の強い笑顔に、私は従わざるをえなかった。
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