海辺にて君を待つ

鈴咲絢音

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episode.2 海に浮かぶ謎の物体

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 見たくもない体を隠すべく、私はすぐに下着の上から干してあった薄手のウェットスーツに少し焼けた肌を通す。

 そして全身を包む黒いスーツの上から体型を隠すゆとりのある花柄の入ったチュニックを着た。

 こうしたインナーとしてのウェットスーツと洋服の重ね着が海域が広がった今の時代の一般的なスタイルだ。

 このウェットスーツは通気性、速乾性共に抜群で海上生活はもちろんのこと、その体にぴったりフィットする着心地の良さから普段着にだって最適だ。

 紫外線にも強いらしいので、日焼け止めを塗らずにそのまま外に出ても安心なのだ。

 今日から冬休みだと言うのに何の予定もない私は特にしたい事も思いつかないので、少しの虚無感に苛まれながらも、母に言われた通り宿題に取り組もうと自室の机に向かった。

 数学の計算ばかりを繰り返し、計四枚のプリントを終えた頃に腹の虫が鳴いた。

 時計を見ると長針は12時を指している。

 どおりでお腹が空く訳だ。キリもいいので私は一度勉強道具を片付けてキッチンに向かった。

 冷凍庫からレンジで温めるだけの炒飯を取り出し皿に盛り、ラップをかけてそのまま電子レンジの中に入れてスタートボタンを押した。

 小気味良いチンの音を聞いてレンジの中身がしっかり温まった事を確認し、できる限り熱さを感じないようにお皿の縁を摘んで急いでリビングに運ぶ。

 熱々の炒飯を食べながらふと外の景色を眺めた。

 マンション8階のベランダからは、高層の建物が浮かび並ぶ青い海が見える。

 水面は小さく揺れ、高く昇った太陽を反射して眩しく光っていた。

 ぼんやり眺めていたその光景の中に、見慣れない黒い物体が波間を漂っているのを見つけた。

「なんだろ」

 ぽつりと零した独り言に反応するようにその黒い物体は水面を滑るように進み始めた。

 ゆらゆらと長く伸びる姿はワカメか何かの海藻のようにも見えるが、建物群から離れて真っ直ぐ進むその動きは思っていたより速く海藻のそれじゃない。

 私は椅子から身を乗り出してじっと目を凝らした。

 よく見ると水面に浮かぶ黒い物体の下に白い身体が存在しているようだった。

 私はそれがどんな生物か全く想像がつかずさらに混乱してしまう。

 もしかしてとても珍しい生き物かも!?

 好奇心が沸き立った私は急いでお昼ご飯をかき込むと、皿も片付けずに耐水仕様のポシェットにスマホと鍵だけを詰め込み家を飛び出した。
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