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11.無茶振りだとしても美人の命令には逆らえない

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 俺、火ノ浦竜也がドラゴンの生贄としてこの異世界、ディラジオン国に来てから早3日が経過した。

 俺は腕力の種を食べては剣を振り回し、疲れてはまた腕力の種を食べて、剣を振り回して、また食べて、振り回して……そんな日々を繰り返していた。

 幸い異世界人だからなのか、副作用の筋肉痛はそこまで酷くなく、腕力の種を連用する事ができたのは救いだった。

 またずっと社畜としてブラック企業でデスクワークばかりだったからか、久しぶりに体を動かして汗を流すのがとても気持ちよかった。

 もちろん、命がかかっているから、そんな能天気にやってはられない。だが、それが逆に久々に何かに熱中するきっかけをくれたようにも思う。

 こうして俺は尋常ではない速さで長剣の扱い方をマスターしていった。

 と言ってもほぼ自己流で、こうしたら振りやすい、こうしたら斬りやすい、といった感覚で動かし方を学んでいった。

 なのでこれが本当に実戦で通用するかは定かではない。俺にとって剣で戦うなんて、ゲームやアニメの世界なのだから。わかるはずもない。

 そんな時のリーゼ頼みなのだが。

「振り方が合っているか見てほしい?
 武器を振るうのに正しいかどうかなんてあるものか。
 勝つか負けるか、それだけだ」

 と言われてしまい、ろくな指導はなかった。

 この世界では武道とか、そういうのはないのか?

 それともリーゼ自身も自己流だったりするのだろうか?

 ともかく、頼るべき師匠がそんな感じなので、自己流にならざるを得なかった。

 今日も黙々と剣を振っていると、それをぼんやり見ていたリーゼが何かを呟いた。

「…………そろそろいけるか……」

「えっ?」

「火ノ浦竜也、お前もだいぶ剣を身につけられただろう?
 まだ危なっかしい所はあるが、実戦に移るぞ」

「じ、実戦!? というと?」

 さすがにまだドラゴンはないよね? まずは雑魚から倒して経験値稼ぎだよね?

 てか、この世界に経験値ってあるのか? あまり素振りする限りは感じないけど。

 俺は生唾をごくりと飲み込み、彼女の言葉を待つ。

「とりあえずあそこの森に数日篭ってこい。
 モンスター100体倒すまでは出てくるな。
 逃げ出そうとしても無駄だぞ、私が見張っているからな」

「はいぃ????」

 俺の素っ頓狂な声が爽やかな風吹く草原に虚しく響いた。

 100体倒すまで帰れまてんってか。まあどこにも帰る場所はないんですけど。

 文句の一つでも言ってやろうと思ったが、目の前の少女は澄ました顔を少し緩ませた。

「火ノ浦竜也、お前ならできる。頑張れよ」

「…………はい」

 結局、美少女の微笑みには抗えなかった。
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