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第76話:アストラルナイフ

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 魔王討伐軍の選別が進む中、赤髪の店主の店でアストラルソードを買った冒険者の剣士アルスはさらなる力を求めていた。
 何故ならアルスは魔王討伐軍の一人に選ばれたからである。
 アストラルソードの力に不満はないが、魔王と戦うのだ。さらなる力を手にする必要がある。
 幸いアストラルソードは魔力の刃を武器とするだけあって軽い。
 もう一本、アストラルソードを買い二刀流にしても充分戦えるものがあった。
 そのためもう一本のアストラルソードを求めてアルスは赤髪の店主の店を訪れた。
 コーラル王国王都から少し外れた森に踏み入った所にある店。そこを訪れる。

「いらっしゃい」

 赤髪を肩まで垂らした店主が出迎えてくれる。

「おや、あんたは……」
「久しぶりだな、店主よ」
「これはこれはお久しぶりなことで」

 店主は笑みを浮かべてアルスを迎える。アルスも笑みを浮かべた。

「新しい商品をご所望かい?」
「ああ。もう一本、アストラルソードが欲しい」

 アルスは単刀直入に要件を告げた。
 もう一本アストラルソードがあれば自分は無双の強さを発揮できる。
 そう思ってのことだった。アルスの言葉に店主はふむ、と悩み込む。

「ん、どうした? まさかないのか?」
「いや、あるにはある。だが、アストラルナイフだ」
「ナイフか……」

 右手に長剣のアストラルソードを持ち、左手に短剣のアストラルナイフを持つ。
 それでも自分は今よりは強くなれる実感が湧いていた。アルスは頷く。

「それでいい。アストラルナイフを売ってくれ」
「分かった。ちょっと、待っておくれ」

 そう言って店主は店の奥に引っ込んでいく。
 帰って来た時にはアストラルソードの柄より少し小さめの柄を持っていた。
 刀身はない。魔力をエネルギー状の刀身に変えて武器とするのだからそれも当然のことであるのだが。

「これがアストラルナイフか」
「ああ。こいつに魔力を込めれば刀身が形成される」
「分かった。買おう。いくらだ?」

 アルスは店主に訊ねる。店主は答えた。

「金貨2枚って所だね」
「うむ。買おう」

 金貨2枚を差し出し、アルスはアストラルナイフを手にする。

「毎度あり」

 店主の言葉を受け、アルスは店を出た。
 長剣と短剣の二刀流か。使いこなすには技巧を必要とするが、短剣を盾代わりに使い長剣で斬り付ける。
 そういう剣術があることをアルスは知っていた。
 それ故にそれを試してみることにする。
 冒険者ギルドに行き、ゴリラ型魔物の討伐の依頼を受けたアルスは現地に赴く。
 魔物は大勢いた。そこにアルスは斬り込む。二本の剣の柄に魔力を込めて刀身を形成する。
 アストラルソードの刀身は長く、アストラルナイフの刀身は短い。
 しかし、不安を覚えることはない。
 エネルギー状の刀身の切れ味はよく知っている。

 アルスはゴリラ型の魔物に斬り込んだ。

 長剣で斬り付け、相手の反撃を短剣で受け止める。
 悪くはない。短剣の方も攻撃に使い、二刀流の剣術でアルスは戦う。
 ゴリラ型魔物の肉体にエネルギー状の刀身が突き刺さり、次々に倒していく。

「悪くない」

 この二刀流。なかなか使える。これならば魔王の軍勢とも戦えるというものだ。
 二本の剣を振るい、アルスは魔物たちを蹴散らしていく。
 まだ二刀流には完全に慣れた訳ではないが、すぐにものにして見せる、とアルスは思う。

 実際、初めて二刀流を使ったにしてはアルスの剣の腕前は抜群であった。
 二本の剣を振るい、敵を倒す。敵の攻撃をアストラルナイフでいなし、アストラルソードで斬り付ける。

 ナイフは防御だけには使わず攻撃にも使い臨機応変な戦いぶりをアルスは見せる。
 このように戦えるのなら悪いものではない。

「はあっ!」

 二刀流でX字に魔物を斬り裂く。斬り裂かれた魔物は絶叫を上げ倒れる。

 その勢いでアルスはゴリラ型魔物たちを全滅させる。アストラルナイフ、悪くはない。
 ソードとナイフの二刀流であればどんな敵にも勝てる。その実感を抱く。

 魔王討伐への時間は迫っている。コーラル王国騎士団は当然参加するとして自分のような冒険者もそれに参加しなければならない。

 それでもこの二刀流があれば魔王相手でも引けを取らないと思える。
 二本のエネルギー状の剣。これがあれば大抵の魔物は倒せる。

 魔王討伐、やって見せようではないか。アルスはそう自信を抱く。
 魔王討伐の時は近い。その確信も抱き、他の者に後れを取らないようにしなくては。

 それもできる。このアストラルソードとアストラルナイフの二刀流であれば。強気に魔王討伐の時を待つアルスであった。
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