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第71話:フランベルジュ
しおりを挟む魔王の復活により魔物は活性化・大量発生し、冒険者ギルドにも討伐の依頼がひっきりなしにもたらされることになっていた。
そんな中、女冒険者のクイナは自らの力不足を痛感していた。
クイナは長剣を使う冒険者である。しかし、今の普通の長剣では凶暴化する魔物たちに立ち向かうのに不足である、と言わざるを得なかった。
悩んでいると声がかけられる。
「クイナ、何をそんな難しい顔をしているの?」
「アスカ……!」
同じく女冒険者のアスカだ。噂の赤髪の店主の店でパワー・ガントレットを買い、拳を武器に戦う身であった。
アスカはパワー・ガントレットの恩恵で凶暴化した魔物たちにも負けず依頼をこなしている。
そんなアスカにクイナが相談するとアスカは噂の赤髪の店主の店に行けばいい、と言った。
「あのお店? 眉唾物って聞いたけど……」
「あのお店の商品は確かよ。きっとクイナにも相応しい商品を売ってくれるわ」
友人のアスカがこう太鼓判を押すのなら信頼してもいいのかもしれない。
クイナはそう思い、アスカと後に一緒に依頼を受けることを約束し、噂の店に行った。
コーラル王国王都の少し外れ、森に踏み入った所にその店はある。クイナは半信半疑ながら店の中に足を踏み入れた。
「いらっしゃい」
赤髪を肩まで垂らした店主がクイナを出迎えてくれる。
胡散臭い店主だな、と思ったことは否定できないが、アスカの言葉によれば信頼に値する店主だ。
クイナはいい剣が欲しいと要件を言った。
「そうだな。この剣、フランベルジュなんかどうだ?」
それは以前、魔族の少女リィルがこの店を訪れた際、スネーク・ソードの対価として置いていった剣だ。
扱いに困っていたが、いい剣を求める者がいるのなら譲り渡すのも悪くはない。
クイナはフランベルジュを見て、その剣に炎属性の魔法が宿っていることを感じ取った。
これなら確かに。魔物の討伐で力になりそうだ。そう思いクイナは値段を訊ねる。
「金貨3枚に銀貨20枚って所かな」
店主は値段を言う。払えない金額ではない。クイナは代金を払うとフランベルジュを受け取った。
「毎度あり」
その店主の言葉を背中で聞きながら、店を出る。
この剣はいい剣だ。そのくらいは分かる程度にはクイナは冒険者稼業をしている。
冒険者ギルドに戻るとアスカがクイナを出迎えた。
「クイナ。いい剣は買えたの?」
「まぁ、買えたわ。これで魔物の討伐に行きましょう」
アスカの言葉に応え二人して依頼を受けるべく受け付けに行く。
ロック・リザードが大量発生しているとのことだったのでその討伐の依頼を受けてアスカと二人、現地に赴く。
なるほど。いるやいる。ロック・リザードの大群を前にクイナとアスカは警戒を強める。
「行くわよ、クイナ」
「ああ、アスカ」
アスカがまずロック・リザードに攻撃を仕掛けた。
パワー・ガントレットで強化された拳がロック・リザードの肌を打ち、ダメージを与える。
そのまま連続して拳を叩き込みアスカはロック・リザードの一匹を仕留めた。
あのガントレットも赤髪の店主の店で買った品物だと聞く。
本当にいい物を売ってくれるのだな、と思いつつクイナも炎の魔剣フランベルジュを振るい、ロック・リザードに斬りかかる。
炎属性を帯びた剣はロック・リザードの肌を斬り裂き、その身を倒す。
文句ない。この剣ならどんな魔物にも対抗できる気がする。
そう思いつつアスカは拳でロック・リザードを倒し、クイナはフランベルジュを振るい、ロック・リザードを斬り捨てていく。
最初は大勢いたロック・リザードも徐々にその数を減らしつつある。
「この剣なら……!」
フランベルジュを振るうクイナはロック・リザードごときに後れは取らない。
炎の魔剣は次々にロック・リザードをその餌食として、斬り倒していく。
パワー・ガントレットを装備したアスカもロック・リザードたちを殴り倒していく。
この勢いでロック・リザードは次々に討ち取られ、ついに全滅した。
「やったわね、クイナ!」
「ええ! この剣のおかげよ!」
あの赤髪の店主の店。最初は信用していなかったが、これだけの商品を取り扱っているとなると信用せざるを得ない。
あの店は本物だ。その確信を抱き、ロック・リザード討伐をクイナはアスカと共に祝い合う。
「あのお店は本物だったのね」
「だから言ったでしょう?」
「ええ。アスカの言う通りだったわ」
この剣ならこれから凶暴化している魔物にも対抗できるというものだ。
クイナは満足感を覚えて、王都の冒険者ギルドにアスカと共に戻る。この剣で魔物たちを斬り倒すことを思い描きながら。
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