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第69話:バーニング・モーニングスター その1
しおりを挟む魔王の復活にラッシュたちパーティーメンバーも警戒の面持ちを強めていた。
リーダーのラッシュは例の赤髪の店主の店で買ったデーモンクラッシャーという斧を持っており、これで魔性のものへの特効攻撃ができる。
治癒師のアリーシャも赤髪の店主の店で買った癒しの杖がある。
パーティー全体で見れば魔物の、魔王の軍勢にも対抗できる強力なパーティーだ。だが、所属する戦士ゴルドーは自分の力量に不満を覚えていた。
「オレもリーダーのようにいい武器を手に入れなくては」
それはゴルドーにとって義務のようなものであった。
魔王が復活し、これから厳しい依頼が多く発生するであろう中で一般品の武器では心もとない。
ラッシュやアリーシャのように特殊な装備を身に付ける必要があると踏んでいた。
「ゴルドー、そんなに思い詰めることはないと思うが」
「いや、リーダー。オレも強くならなければいけない。これから依頼はどんどん過酷になっていくんだ」
「……そうか。それなら例の店に行くといい。きっとゴルドーのためになる武器が売っている」
リーダーのラッシュの言葉にゴルドーは目を見開く。
例の店とは噂の赤髪の店主の店のことか。あらゆる武器防具アイテムが集まり、客の要望に確実に応えると言う。
眉唾物であるが、このパーティーメンバーだけでもラッシュの退魔の斧・デーモンクラッシャー、アリーシャの癒しの杖をその店で手に入れることに成功している。
信用してもよいのだろう。
そう思い、ゴルドーはラッシュの言葉に頷くと、例の店に向かった。
コーラル王国王都の少し外れ、森に踏み入った所にその店はある。
店の中に入ったゴルドーを赤髪を肩まで垂らした店主が出迎える。
「いらっしゃい」
世間話をしている暇はない。単刀直入にゴルドーは要件を告げた。
「魔王の復活で強力になっている魔物たちを倒せる武器が欲しい」
「ふむ。冒険者の方なら当然の注文だね」
「あるのか? ないのか?」
「そう急くこともあるまい。ちょっと待っておくれ」
そう言い、店主は店の奥に入っていく。そうして出てきた時には鉄球を鎖で繋いだ棒、モーニングスターを手に持っていた。
「それはモーニングスターか? しかし、ただの鉄球では……」
「ただの鉄球じゃないさ。これはバーニング・モーニングスター。この鉄球は振り回せば炎を纏い、炎の球となり目標に襲い掛かる」
「ほう。それは凄い」
本当ならば大したものだ。見れば鉄球には魔術的な紋様が書き込まれているのが分かる。
これが炎の鉄球を生む秘密だろう。
これならば強力化していく魔物たちにも対抗できるかもしれない。
ゴルドーはそう思い、このバーニング・モーニングスターの購入を決意していた。
「これをくれ。いくらだ?」
「金貨3枚と銀貨10枚って所だね」
「分かった」
代金を払い、バーニング・モーニングスターを受け取る。そうして、店を後にする。
「毎度あり」
店主の声が背中にかかった。
ともあれこれでラッシュのパーティーに相応しい活躍ができる。
冒険者ラッシュのパーティーは竜殺しを成し遂げた冒険者ケイのパーティーに次ぐ存在だとコーラル王国王都の冒険者ギルドでは評判の身だ。
その期待に恥じぬ戦いができる。自分たちパーティーもケイのパーティーもこれからは魔王の軍勢の討伐にかかり切りになるであろう。
それを思えばこの武器は心強いことこの上ない。
バーニング・モーニングスターを少し試してみようと思ったゴルドーは王都に一直線に戻らず、魔物が出るのを待つ。
ゴブリンが湧いて出たのでそれに対し、棒を持ち鉄球を振り回す。
すると鉄球は次第に炎を纏うようになり、それをゴブリンに叩き付けると一撃で倒すことができた。文句なしの威力である。
「こいつは凄い」
そう思いつつ炎の鉄球を振るい、残りのゴブリンも一撃で倒していく。この武器ならば文句ない。それを確信する。
ゴルドーはパーティーメンバーの元に戻った。リーダーのラッシュが声を掛けてくる。
「ゴルドー、いい武器は買えたか?」
「ああ。文句なしのものがな」
「それは……モーニングスターですか?」
ラッシュの言葉に頷くとアリーシャが声を掛けてくる。
「うむ。だが、ただのモーニングスターではないぞ」
「あの店主の店ならそうだろうな。ゴルドーも戻ったことだし、依頼を受けようと思う」
ラッシュはそう言い、受ける依頼を述べる。
「デーモン数匹の討伐だ。デーモンは一匹でも厄介な魔物。それが数匹となると困難が予想されるが、俺たちなら乗り越えられると信じている。みんな、この依頼、完遂するぞ!」
リーダーの言葉に一同が頷く。
デーモン数匹の退治か。難しい、だが、ラッシュの言う通り不可能ではないだろう。
ゴルドーはバーニング・モーニングスターを手に覚悟を決めるのであった。
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