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第63話:魔眼返しの盾 その2
しおりを挟む魔眼を持った者もいるという盗賊団討伐。
その依頼をエドガーとレーンは受けた。エドガーには魔眼返しの盾がある。
魔眼を武器にしている相手には優位に戦いを進めることができるであろう。
レーンも守りの衣で防御力は低そうに見えて万全。加えてスピードに長けた俊敏な剣術を振るえるとあっては並の盗賊など相手にならない。
二人は依頼を受け、盗賊団のアジトに向かう。道中の魔物を撃退し、盗賊団のアジトに乗り込む。盗賊たちは剣を手に迎撃に出た。
「来たか!」
レーンが飛び出し、軽装の俊敏さで剣を振るい、盗賊たちを斬り捨てて行く。
エドガーもそれに続き、剣で盗賊たちに挑む。
軽装のレーンと違いエドガーは重装備で身を固めた身であるが、それを感じさせない動きで盗賊たちを斬り捨てる。
そうしていると一人の盗賊が前に出た。
魔眼使い! 直感的にそれを悟ったエドガーは「レーン!」と叫ぶ。それだけでレーンにも意図は伝わった。
エドガーの後ろに下がり、エドガーは魔眼返しの盾を構える。
魔眼使いの盗賊は静止の魔眼を持つ盗賊であった。この目で見られた者は体の自由を奪われるのだが、魔眼返しの盾がそれを跳ね返し、魔眼使いの方が静止の圧力にかかった。
他にも数人、魔眼使いらしき盗賊が出てくるが、それらは全て魔眼返しの盾に跳ね返され、相手に与えるはずの力が自分に返って来た形になった。
「なんだ! 魔眼が通用しねえのか!」
盗賊団の頭領らしき男が苛立ちげにそう言い、前に出てくる。
魔眼が通用しないのなら直接倒すしかない。
魔眼使いによる魔眼の行使を見守っていた他の盗賊たちも再び剣を手にエドガーとレーンに襲い掛かってくる。
魔眼を封じられたのだ。もはや恐れる必要はない。エドガーとレーンは剣を振るい、盗賊たちを次々に斬り捨てて行く。
「魔眼さえなければ! お前らごとき!」
レーンが高々に声を響かせ、盗賊たちに剣を振るう。
その身に盗賊の剣が当たることはあったが、噂の店で買った守りの衣がそれをはじいてくれる。
レーンは剣を走らせ、盗賊たちを斬り伏せる。
魔眼使いが跳ね返され、自分に当たった魔眼の効力から立ち直り、再び魔眼を振るおうとするが、それはエドガーの魔眼返しの盾で再び跳ね返される。
魔眼使いたちはまるで真価を発揮できないまま、硬直する。
そこにレーンが攻撃を仕掛け、斬り捨てて行く。
エドガーも剣を振るい盗賊たちを斬り伏せる。
もはや盗賊団はエドガーとレーンの二人を相手に壊滅状態に陥っていた。
剣を捨てて逃走する者たちも出てきている。逃げ出す盗賊も追いかけて後ろから斬ったが、全員を斬り倒すことはできなかった。残った盗賊の頭領とレーンは剣を交える。
カシラだけあり、他の盗賊よりは腕が立つようであった。
だが、レーンの敵ではない。数合打ち合った末にレーンの剣が頭領を斬り裂く。
「ぐ、ぐがぁ!」
頭領はうめき声を上げて、倒れる。頭領の撃破。これに盗賊団の盗賊たちは一気に士気を無くしたようであった。
戦意喪失し、次々に逃げ出す。そんな中だからこそ油断していたのだろう。
生き残っていた魔眼使いの一人がレーンを睨む。その眼光に射抜かれたレーンは身動き一つ取れなくなってしまった。
しまった。静止の魔眼。それに捕らわれたレーンに魔眼使いは短剣で斬りつけようとして、
「レーン! 油断大敵だぞ!」
エドガーが割って入る。魔眼使いはエドガーを睨むがそれを魔眼返しの盾で反射され、自分の体が硬直する。
そこにエドガーは遠慮なく斬り掛かり、魔眼使いを倒す。
レーンはその頃になってようやく魔眼の効力から脱することができた。
「すみません! エドガーさん!」
「無事ならいい! 残りの盗賊を一掃するぞ!」
そうして魔眼使いの相手はエドガーに任せ、レーンは他の盗賊たちを斬り捨てて行く。
そうしている内に盗賊団のアジトで息をしているのはエドガーとレーンだけになっていた。
盗賊討伐は成功したのだ。達成感をレーンは身に感じつつ、エドガーに声をかける。
「やりましたね、エドガーさん」
「ああ。盗賊討伐は成功だ」
「エドガーさんの助けなくてはできない依頼でした」
レーン一人でこの依頼を受けていたらレーンは命を落としていたであろう。
魔眼使いを前に無抵抗のまま殺されていたであろう。それを自覚しているが故にレーンはそう言う。
「いや、お前の剣術には助けられた。俺一人でも達成できない依頼だった」
いくら魔眼返しの盾があるとはいえ、一人でこの依頼を達成できたと思うほどエドガーは増長してはいない。
レーンの剣技もあってこそできた依頼。
エドガーとレーン。二人の冒険者がいたからこそ達成できた依頼であることに間違いはなかった。
「それじゃあ、帰りましょうか」
「そうだな。たっぷり報酬を貰わねば」
二人は頷き合って、盗賊団のアジトを後にする。こうして今日もまた悪人たちは成敗されるのであった。
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