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第12話:退魔の甲冑
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を使ってくるものはいる。
得てして魔物は生まれながらに強力な魔法使いであることが多い。
こちらも魔法使いならば魔法をぶつけ合って対抗するのだが、こちらが魔法を使えない戦士とあれば、魔法を回避するか、喰らうかしかない。
そんな現状に嫌気が挿した冒険者のグルーガはなんとか魔法に対抗できる装備がないかと思い、赤髪の店主の店の噂を聞いた。
曰く、その店にはどんな武器も防具もアイテムも揃うという。
眉唾ものではあるが、この噂をアテにして、グルーガはその店を訪れた。
その店はコーラル王国王都の外れ、少し森に踏み入った所にあった。
店の中に入り、一瞥する。様々な剣や盾、鎧が立て掛けてある。
この店なら確かに望みの品があるかもしれない。
グルーガは期待して店の奥に踏み入る。
来客を察した店主が現れグルーガを迎えてくれた。
「いらっしゃい」
噂通り赤髪を肩まで垂らした男であった。胡散臭さを感じつつもグルーガは目的を話す。
「魔法に対抗できる盾か鎧が欲しい」
「ほう。魔法使いと戦いでもするのかね?」
店主はそう訊いてくる。気持ちは分かった。
今、コーラル王国は隣国のエルディスト王国との関係が悪化し、ピリピリしている。
エルディスト王国の魔法使いとの戦いに用いるのではないか。そう思われても無理はないとグルーガ自身自覚していた。
だが、違う。
「いいや、違う。魔法を使う魔物退治に用いるものだ。人間の魔法使い相手に使う気はない」
「そうかい。それならとっておきを用意しよう」
少し上機嫌になったような店主の言葉。
この店主も自分の店の品物が戦争に使われることは嫌うのだろう。
その気持ちはなんとなくグルーガにも分かった。
自分の販売した代物で他国の人間を殺傷することは快く思わないだろう。
奥に引っ込んで行った店主は戻ってきた時には大型の甲冑を一つ持っていた。
見るからに特殊な金属で作られたと分かる洗練されたデザインの甲冑だ。
思わずグルーガは「おお……!」と感嘆の声を漏らす。
「こいつは対魔の甲冑だ。魔法攻撃を弾いてしまう力を秘めている」
「それはいい。俺が欲しかったものはまさしくこれだ」
魔法を弾く力のある甲冑。これが欲しくて自分はこの店に来たのだ。
その甲冑は見るからに頼もしそうで店主が嘘を言っているようには思えない。
これを買おう。グルーガは早くもそう決断していた。
「これをくれ。いくらだ?」
「金貨4枚に銀貨20枚だな」
「分かった」
少し高いが、魔法を弾くという性質上、高くなるのも仕方がないであろう。
グルーガは手持ちの金を差し出し、対魔の鎧を購入する。
「毎度あり」
赤髪の店主に渡すと店主は頷き、グルーガに甲冑を手渡す。
それを受け取り、満足した気分で帰路につくグルーガ。
早速、明日には魔法を使う魔物相手の依頼を冒険者ギルドで受けよう。
この鎧があれば魔物の使う魔法はもはや敵ではない。
高揚する自身の気持ちを自覚しながら、家に帰り、翌日、その甲冑を着込み、冒険者ギルドに行った。
魔法を使う魔物討伐の依頼は危険性も高いのでランクが高くなっている。その分、報酬も高い。
グルーガは依頼を受けると早速、魔物退治に向かった。
愛用の剣を手に、魔物の集団の元に行く。魔物たちは指定された場所にいた。
グルーガの姿を見ると揃って魔法を唱えてくる。火球が飛んできて、グルーガに直撃する。しかし。
「ほう。この鎧は大したものだ」
鎧が魔法の火球を弾き返し、グルーガはノーダメージだった。
魔物たちは動揺しつつも続けて魔法を連続して唱えて来る。風の刃、大地の礫、水の勢い、雷の閃光。
それらがグルーガの体に降り注ぐが、鎧が全て弾き返し、グルーガはダメージを一切受けていなかった。
「無駄だ、無駄だ。この鎧を着た俺を傷付けられるものではない!」
そう言うとグルーガは剣を手にこちらからも攻撃を開始した。
魔物たちに斬り掛かり、魔物たちが迎撃に放ってきた魔法は鎧が弾き飛ばす。
剣で魔物たちを斬り裂き、魔物たちの絶叫が上がる。
他の魔物たちが魔法を唱えてくるが、それらも鎧に弾かれる。
魔物たちの中には生まれながらの魔法使いもいる。それらの魔物は人間にとって脅威となるものであるが、この鎧を着込んだグルーガには関係ないことだ。
魔法を弾き、剣を振るい、魔物たちを斬り捨てて行く。
「お前たちなど敵ではない。このグルーガの剣を受けよ」
魔物たちを断罪する言葉を告げると剣を振るい、残りの魔物も斬り捨てる。
魔物たちは懲りずに魔法を放ってくるが、対魔の鎧は全てを弾き返し、グルーガにダメージを与えない。
そうして、魔物たちは全て討伐された。グルーガは高揚する気分を隠そうともせず満足気に頷く。
「うむ。この鎧のおかげだな」
この鎧がなければ困難なミッションになっていたことだろう。
しかし、この対魔の鎧があればもう魔法を使う魔物相手に怯えることもないのだ。
それを強く実感し、グルーガは帰還する。
報酬で得た金で酒場に行き、噂の赤髪の店主の店は噂通りのものだったと周りに話すグルーガであった。
得てして魔物は生まれながらに強力な魔法使いであることが多い。
こちらも魔法使いならば魔法をぶつけ合って対抗するのだが、こちらが魔法を使えない戦士とあれば、魔法を回避するか、喰らうかしかない。
そんな現状に嫌気が挿した冒険者のグルーガはなんとか魔法に対抗できる装備がないかと思い、赤髪の店主の店の噂を聞いた。
曰く、その店にはどんな武器も防具もアイテムも揃うという。
眉唾ものではあるが、この噂をアテにして、グルーガはその店を訪れた。
その店はコーラル王国王都の外れ、少し森に踏み入った所にあった。
店の中に入り、一瞥する。様々な剣や盾、鎧が立て掛けてある。
この店なら確かに望みの品があるかもしれない。
グルーガは期待して店の奥に踏み入る。
来客を察した店主が現れグルーガを迎えてくれた。
「いらっしゃい」
噂通り赤髪を肩まで垂らした男であった。胡散臭さを感じつつもグルーガは目的を話す。
「魔法に対抗できる盾か鎧が欲しい」
「ほう。魔法使いと戦いでもするのかね?」
店主はそう訊いてくる。気持ちは分かった。
今、コーラル王国は隣国のエルディスト王国との関係が悪化し、ピリピリしている。
エルディスト王国の魔法使いとの戦いに用いるのではないか。そう思われても無理はないとグルーガ自身自覚していた。
だが、違う。
「いいや、違う。魔法を使う魔物退治に用いるものだ。人間の魔法使い相手に使う気はない」
「そうかい。それならとっておきを用意しよう」
少し上機嫌になったような店主の言葉。
この店主も自分の店の品物が戦争に使われることは嫌うのだろう。
その気持ちはなんとなくグルーガにも分かった。
自分の販売した代物で他国の人間を殺傷することは快く思わないだろう。
奥に引っ込んで行った店主は戻ってきた時には大型の甲冑を一つ持っていた。
見るからに特殊な金属で作られたと分かる洗練されたデザインの甲冑だ。
思わずグルーガは「おお……!」と感嘆の声を漏らす。
「こいつは対魔の甲冑だ。魔法攻撃を弾いてしまう力を秘めている」
「それはいい。俺が欲しかったものはまさしくこれだ」
魔法を弾く力のある甲冑。これが欲しくて自分はこの店に来たのだ。
その甲冑は見るからに頼もしそうで店主が嘘を言っているようには思えない。
これを買おう。グルーガは早くもそう決断していた。
「これをくれ。いくらだ?」
「金貨4枚に銀貨20枚だな」
「分かった」
少し高いが、魔法を弾くという性質上、高くなるのも仕方がないであろう。
グルーガは手持ちの金を差し出し、対魔の鎧を購入する。
「毎度あり」
赤髪の店主に渡すと店主は頷き、グルーガに甲冑を手渡す。
それを受け取り、満足した気分で帰路につくグルーガ。
早速、明日には魔法を使う魔物相手の依頼を冒険者ギルドで受けよう。
この鎧があれば魔物の使う魔法はもはや敵ではない。
高揚する自身の気持ちを自覚しながら、家に帰り、翌日、その甲冑を着込み、冒険者ギルドに行った。
魔法を使う魔物討伐の依頼は危険性も高いのでランクが高くなっている。その分、報酬も高い。
グルーガは依頼を受けると早速、魔物退治に向かった。
愛用の剣を手に、魔物の集団の元に行く。魔物たちは指定された場所にいた。
グルーガの姿を見ると揃って魔法を唱えてくる。火球が飛んできて、グルーガに直撃する。しかし。
「ほう。この鎧は大したものだ」
鎧が魔法の火球を弾き返し、グルーガはノーダメージだった。
魔物たちは動揺しつつも続けて魔法を連続して唱えて来る。風の刃、大地の礫、水の勢い、雷の閃光。
それらがグルーガの体に降り注ぐが、鎧が全て弾き返し、グルーガはダメージを一切受けていなかった。
「無駄だ、無駄だ。この鎧を着た俺を傷付けられるものではない!」
そう言うとグルーガは剣を手にこちらからも攻撃を開始した。
魔物たちに斬り掛かり、魔物たちが迎撃に放ってきた魔法は鎧が弾き飛ばす。
剣で魔物たちを斬り裂き、魔物たちの絶叫が上がる。
他の魔物たちが魔法を唱えてくるが、それらも鎧に弾かれる。
魔物たちの中には生まれながらの魔法使いもいる。それらの魔物は人間にとって脅威となるものであるが、この鎧を着込んだグルーガには関係ないことだ。
魔法を弾き、剣を振るい、魔物たちを斬り捨てて行く。
「お前たちなど敵ではない。このグルーガの剣を受けよ」
魔物たちを断罪する言葉を告げると剣を振るい、残りの魔物も斬り捨てる。
魔物たちは懲りずに魔法を放ってくるが、対魔の鎧は全てを弾き返し、グルーガにダメージを与えない。
そうして、魔物たちは全て討伐された。グルーガは高揚する気分を隠そうともせず満足気に頷く。
「うむ。この鎧のおかげだな」
この鎧がなければ困難なミッションになっていたことだろう。
しかし、この対魔の鎧があればもう魔法を使う魔物相手に怯えることもないのだ。
それを強く実感し、グルーガは帰還する。
報酬で得た金で酒場に行き、噂の赤髪の店主の店は噂通りのものだったと周りに話すグルーガであった。
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