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第5話:ビキニアーマー

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 コラール王国王都の少し外れ、森に踏み入った所にある赤髪の店主の店。

 そこに新たに訪れる来訪者がいた。冒険者イザベルである。
 女だてらに冒険者をやっているのは伊達ではなく、剣の腕前も魔法の腕前も平均以上のものはある。

 そんなイザベルがこの店を訪れたのは鎧を求めてのことであった。

 使っている剣に不満はない。しかし、革製の鎧に心細さを覚えるのも事実であった。
 かといって鉄製の鎧ではスピードが殺されてしまう。

 イザベルは王国の兵士ではない。大量に並んで機動力の無さを相殺し、圧殺することなどできない。
 そう思いイザベルは赤髪の店主の店を訪れた。

「なるほどね、軽くて丈夫な鎧か」
「ああ。無茶な注文をしているとの自覚はあるが、よろしく頼む」
「任されたよ」

 そうして、店主は奥に引っ込んでいき、その後出て来た。持ってきた鎧を見て、イザベルは少し憤慨した。

「なんだその鎧は!」

 店主が持ってきた鎧はいわゆる、ビキニアーマーというものであり、肌身の大半をさらけ出す防御力低そうな鎧であったからだ。

 肩口に肩甲が申し訳程度にあり、そこから伸びたベルトで胸を隠す胸甲に繋がっているがその胸甲は上半分が丸出しになっている。
 さらにベルトは伸び、腰の装甲に繋がっているが肝心の股間はパンツだけであった。
 とても防御力があるとは思えない。激昂するイザベルであるが、「まぁまぁ」と店主は言う。

「この鎧には魔術的な防護がかかっている。防御力は高いし、そして、何より軽い。ドラゴンの火炎も弾けるだけのものがある」
「本当だろうな……?」
「本当さ。嘘だったのなら返品返金は受け入れるよ」

 そう言われ、イザベルは頷き、その鎧を見る。
 やはり防御力は低そうではあるが、身軽そうではあった。

 魔術的な加護が施されているのならこのナリでも高い防御力を発揮することは疑う余地はない。イザベルは決めた。

「よぅし、分かった。買おう。だが、少しでも性能に不満があればすぐに突き返すぞ」
「ああ。まいどあり。金貨4枚だ」

 少し高いな、と思ったイザベルであったが、代金を支払い、鎧を買う。
 そして、次の冒険の時はそれを身に着けて冒険に出かける。

 ギルドにあった依頼のレッサー・ドラゴン討伐を受けて、山に登る。
 途中、魔物たちと出くわした。この程度の魔物に苦戦するイザベルではないが、ふと思い、鎧の防御力を試してみることにした。

 怪鳥型の魔物が爪で襲い掛かってくる。それをイザベルは体で受け止める。

 すると、鎧から薄い幕が発生し、怪鳥の爪を弾き返したのだ。
 ほう、と少し感心し、剣を振るい、怪鳥を叩き落とす。
 確かに。魔術的な加護の施された鎧のようだ。どれだけ頑丈かはまだ分からないが。

 山を登りレッサー・ドラゴンたちの退治に乗り出す。
 火炎を吐いてくるレッサー・ドラゴンもいたが、それを受けて鎧が火炎を弾く。

 ここに来て、イザベルはこの鎧の凄さを実感した。
 物理的な攻撃にも火炎攻撃にも万全の防御力を誇っている。

 高い金出して買っただけのことはあるということだ。
 イザベルはそう思いながら剣を振るいレッサー・ドラゴンたちを一掃していく。

 レッサー・ドラゴンたちは噛みつきや爪での攻撃、火炎放射でイザベルに攻撃を仕掛けてきたが、それらは全て鎧が弾いてしまう。

 イザベルは傷一つ負うことなく敵を倒していく。この鎧は凄いな。
 そう内心に思いながら、レッサー・ドラゴンたちを倒す。
 依頼は達成したので帰ろうとした時、盗賊たちがイザベルを取り囲んでいた。

「へっへっへっ、お嬢ちゃん、可愛らしい格好してるねぇ」
「俺たちに金目の物、全部渡してくれるかい?」

 盗賊たちはビキニアーマーを着ているイザベルを完全に舐めた目で見て、言う。

 うむ、やはり防御力は一流でも少し恥ずかしいものがあるな、この鎧は、とイザベルはこの危機にも関わらず関係ないことを思っていた。
 否、この程度は危機ではないのだ。イザベルの剣術とこの鎧。これがあれば盗賊ごときに負けはしない。

「御託はいい。さっさとかかってこい」

 イザベルは剣を抜き、盗賊たちに吠える。
 盗賊たちは目配せし合うと剣を抜きイザベルに襲い掛かって来た。

 人数は五人。三人が同時にかかってくる。
 それらをイザベルは剣で受け止めたが受け止め切れなかった、剣が肌に当たる。

 が、それはイザベルの体を傷つけるには至らなかった。
 鎧が剣を弾き、イザベルは無傷で剣を振るい返す。

 この鎧の防御力があれば多少、強引に攻めても問題ない。そう思い、防御を捨てて、イザベルは盗賊たちに斬り掛かった。
 盗賊たちの剣が振るわれるが、それらは鎧の前に弾かれる。

「おい、なんか、こいつやばいぞ!」
「なんで斬っているのに傷付かないんだ!?」

 盗賊たちは今更怯えだし、イザベルの剣を受ける。これはかなわないと見たのか、そのまま退散していった。

「ふむ。この鎧は凄いものだな」

 改めて鎧に対して感心するイザベル。露出度の高さだけはどうにかならないものかと思いつつも。
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