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第43話:二人のヒーロー

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 早速、ひーろーしょーが始まった。
 シカイを務める男がまいくというもので子供たちを煽る。
 まずは怪人たちが舞台に上がり、好き勝手暴れまわる。
 これも前もって教えられたストーリーの通りだ。俺はその様子を舞台袖で見守り、自分の出番がやって来たことを知る。

「さあ、みんな! ヒーローの登場だ!」

 シカイの男がそう言うのに合わせて俺は舞台に上がる。
 ワッと観客の子供たちが沸き立つ。そして、俺への声援をかける。
 俺は鎧姿に模造刀という姿であり、悪を裁く正義の味方としては申し分のない。

 俺は模造刀を掲げ、悪役の怪人たちに斬りかかる。
 無論、本当の剣ではない。斬り裂くことはかなわないのだが、それで怪人役の人たちはやられた演技をして倒れていく。

 これもあらかじめ打ち合わせで聞いたストーリー通りだ。
 俺は模造刀を振るい、怪人たちを次々に倒していく。子供たちも大盛り上がりだ。

 悪くはないな。そう思いながら模造刀を振るって怪人たちを次々に倒す。そこで新たな怪人たちが現れる。

「おーっと! 怪人の援軍だ! ヒーローはどうする!?」

 シカイの男がそう言って、不安を煽る。負けるなー、がんばれー、と子供たちからの声援。
 残念ながら、今回はそれに応えられない。
 この新たな怪人たちにやられて、倒れるのがストーリーの筋書きだ。

 とはいえ、やられるまで果敢に戦わせてもらうが。
 俺は模造刀を手に新たな怪人たちに斬りかかる。怪人たちはそれをものともせず、俺に攻撃を加える。
 それに俺は後退し、膝をつく。

「ああーっ! ヒーロー、苦戦! 苦戦だー! どうなってしまうんだー!」

 煽りまくるシカイの男。子供たちは不安そうな顔になる。
 怪人たちが俺にとどめを刺そうと(無論、演技だが)襲い掛かってきた時、舞台袖から新たな影。

「おーっと!? あれはなんだ! 新しいヒーローだ!」

 リリアである。鎧姿のリリアが模造刀を持ち、俺の助太刀に参上する。そういうストーリーであった。

 リリアは模造刀で怪人たちを次々に倒していく。
 俺も立ち上がり二人で背中を預け合う体勢を整える。ふむ。演技とはいえ、こうしてリリアと背中を預け合って戦うのは久しぶりのことで、そして、悪いものでもないな、と思う。

「ヒーローが二人! こうなったらもう無敵だ! 怪人なんかに負けないぞ!」

 シカイの男が子供たちを煽り、子供たちのテンションも最高潮に達する。
 俺とリリアは怪人たちに模造刀で斬りかかり、次々に倒していく。

「ふん。よくわからんが、これでいいのか?」
「ああ、充分だよ、リリア」

 リリアはこの催し自体をよく分かっていないようであったが、子供たちを楽しませる分には悪くないという顔で怪人と戦っていく。
 鎧姿のヒーロー二人に(俺たちにとっては見慣れた鎧だが)子供たち大盛り上がり。怪人がばったばったと倒されていき、ひーろーしょーも終わりに近づいていた。

 全ての怪人を倒し、怪人役の人たちは舞台から降りると俺とリリア、そして、シカイの男だけが残された。シカイの男は俺たち二人に近づいてきてマイクを向ける。

「いやあ、流石はヒーロー! あんな怪人たちは敵ではないですか!」

 シカイの男の言葉に俺たちは頷く。

「我々はスナイバル王国の騎士。あのような輩に負けはしない」

 リリアが先に口を開いた。普段なら咎める所だが、この状況でスナイバル王国の名を出してもまるで違和感はない。

「俺たち騎士がいる限り、市民のみんなの平和は守る。安心してくれ」

 俺もヒーローっぽく言葉を選び口を開く。これに子供たちは大熱狂。悪くはないな。こうして子供たちのヒーローになるというのも。
 そうして、俺たちのひーろーしょーの第一幕は終わる。この後、時間を空けて二回。合計三回、この寸劇を行い、日も沈んだ頃、解散となった。

「いやあ、二人共、よくやってくれたよ」

 ソガ殿が満足げな顔で俺たち二人に寄って来る。

「これ報酬、色をつけといたからね」

 イロヲツケタ? その言葉の意味は分からなかったが、とりあえず給料の入った袋を俺とリリアは受け取る。

「ありがとうございます」
「恩に着る」
「いやいや、これからもたまにヘルプで出演頼むよ。君たちの鎧姿は最高にサマになっているからね」

 そう言い、ソガ殿は去って行く。さて、俺もリリアも鎧姿のままだ。ジドウシャでサナの家まで送ってくれるということなので周囲の注目を集めずには済むが。

「どうだった、リリア?」

 俺はリリアに訊ねる。リリアは思いのほか、上機嫌そうな顔であった。

「不思議な催しであったな。だが、悪い気はしない」
「そうだな。子供たち、楽しんでくれたみたいだからな」
「ああ。子供の笑顔は私たちの世界でもこの世界でも大切なものだ。それを守るために我ら騎士がいるのだ」

 上機嫌なリリアに相槌を打ち、二人で送迎のジドウシャに乗って帰る。
 満足感も得られたし、金も手に入った。悪くはない役目だったな、と思いながら。
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