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第18話:コスプレ展にて
しおりを挟むとーきょーびっぐさいとは独特の建物が多いこの世界でも特に際立った特徴を持つ建物であった。
三角錐の上に逆に三角錐がある外観をしており、特徴的という他ない。
ここでイジューイングループ主催のコスプレ展が行われるようであった。
サナ、ルリ、フェイフーらは着替えのための更衣室に行き、俺とナギサが二人で先に会場に入った。
中に入って驚いた俺の世界のような服や鎧、まんがやあにめのきゃらくたーを模した服装に身を包んだ人間で溢れかえっていたからだ。
その独特の熱気には押されてしまう。俺が驚いた顔をしているのを見るとナギサはくすり、と笑った。
「アドニス、驚いているようね」
「そりゃあ、な。これだけのこすぷれいやーがいることもだが、どれもこすぷれとは思えないレベルの高いものばかりだ」
「その中でも貴方の鎧は指折りの出来よ?」
「そりゃ、俺の鎧は……」
本物、と言いかけて口をつむぐ。
本物の鎧なんて言ったらどういう騒ぎになるかわからない。俺の鎧のこすぷれで俺もこすぷれいやー。そういうことにしておいた方がいい。
「貴方の鎧、ホントに完成度が高いのね。実際に鉄を使っているの? 凄すぎるわ」
ナギサが感嘆の声を上げる。そりゃあ、鉄は使っている。じゃないと鎧にならないだろう。
このこすぷれ展で鎧を着ている人の鎧は鉄などではなく、ぷらすちっくやアツガミとやらだろうけど。
「そう言うナギサのこすぷれもよく似合っている」
「え? 私?」
俺がナギサを褒めるとナギサは意外そうな顔をして目を見開く。その末に頬を赤らめて言った。
「似合ってる、かしら?」
「ああ。本物の貴族みたいだ。俺の故郷にも……いや、なんでもない」
ナギサが着ている服と同じような服を着ている人間が多くいる故郷などこの世界にはない。
俺は慌てて口をつむぎ、ナギサを褒め称えた。
「赤い貴族服はナギサによく似合っているよ。貴族の雰囲気が醸し出されているな」
「そ、そう? それならいいんだけど」
そんな会話をナギサとしていると着替え終わったサナたちがやって来た。
前々からの予告通りサナとルリは露出度の高いびきにあーまーとやらのこすぷれ、フェイフーは武道家のようなこすぷれであた。
「待たせたわね」
「えへへ……ちょっと大胆すぎるかな、と思ったんですけど、やっぱりこれで」
「へぇ、みんないい出来のコスプレじゃない」
サナが堂々と言い、ルリは少し恥ずかしそうに、フェイフーは会場のこすぷれ姿の人々を見渡し感心したように言う。
「やはり露出度が高すぎるのではないか?」
思わず俺はサナとルリに言ってしまう。「いいじゃない」と言ったのはナギサだった。
「露出度の高いコスプレなんて珍しくはないわ。むしろ低い部類でしょう」
「これで低いのかよ……」
流石にそれは驚く。こすぷれとは奥が深いものだ。
しかし、サナとルリの剥き出しになった肩口や露わになったおへそや太ももを見るとなんともいえない背徳感を感じてしまう。
俺が二人を見ていると、
「アドニス、エロい目で私たちを見ないでくれる?」
「ちょ、ちょっと恥ずかしいです」
「ああ、いや、そんなつもりは……」
そんな気はないのだが、ジロジロ見すぎてしまったか。
反省反省。俺は向き直ると、「それじゃあ、こすぷれを目一杯楽しむか」と言い、一同を率いて会場の中心に行く。
サナやルリはこすぷれいやーたちと談笑に転じ、フェイフーも加わる。
ナギサもまたこすぷれいやーたちとこすぷれを作った苦労話などをして、盛り上がる。
そんな中、俺は置いてけぼりであった。仕方がない。俺のはこすぷれではないのだ。
だが、こちらから話かけなくても相手から話しかけてきた。
その鎧凄いですね、などと言われ鉄を使っていると答えると仰天されてしまった。
鉄製の鎧のこすぷれなど稀少だろう。俺の鎧は、この広いこすぷれ展でもまるで埋没せず、存在感を放っているようであった。
目立つ気はなかったのだが……どうしてもこの鎧の完成度の高さは注目の的になる。
「写真いいですか?」
鎧姿のこすぷれをした集団にシャシン撮影を求められる。俺は二つ返事で頷き、一緒にシャシンを撮る。そうしていると、サナやルリたちと合流した。
「アドニス、この場でも貴方のコスプレは際だっているわね」
「俺のはこすぷれじゃない……ってサナなら知っているだろ?」
「分かっているわよ、ふふふ……」
そうして、合流し、会場を練り歩く。露出度の高い服装をした女の子が俺にぶつかったのはその時だった。
「きゃっ、すみません……」
「いや、気にすることはない」
その女の子を見て、サナが声を上げる。
「あ、貴方のその格好、『魔法少女スターダスト・リリィ』のリリィ・スターね?」
「分かります? そのコスプレです」
「よく出来てますねぇ」
サナがこすぷれの元ネタとやらを当て、ルリが感心したように言う。やはりこすぷれとは奥が深いものだ。
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