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第10話:スカウト

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 今日も今日とて看板男の仕事だ。
 朝ごはんに白米と目玉焼きとミソシルを食べた。
 目玉焼きは俺の世界でもあった料理で鶏の卵を使って作る料理だ。

 米も俺の世界にはあったが、驚いたのはその味だ。
 俺の世界の米より段違いに美味しい。同じ米などに何故これほどの差が出るのか不思議に思った俺は問い掛けてみる。

「何故、この世界の米はこんなに美味いのだ?」
「そりゃあ、品種改良とか色々やっているからね」
「ヒンシュカイリョウ?」

 ヨーイチ殿が答えてくれたが、何を意味するのか分からなかった。

「お米の稲穂と稲穂をかけ合わせて美味しいお米ができるようにしているのよ。ここまでくるのに何十年何百年とかかっているけどね」
「そうか……それだけの期間をかけて改良したのだ。それは美味いはずだな」

 感心する。食に対するこだわりはこの世界では大きいようであった。
 ミソシルなる独特のスープも最初は戸惑ったが悪いものではない。
 もっともオハシを使えない俺は全てをフォークとスプーンで食べていて、ワフウの料理をフォークとスプーンで食べるのはねえ、とサナに苦言を呈されているのだが。
 早くオハシを使えるようになるよう練習中だ。
 オハシとやらが合理的な物であることはサナとヨーイチ殿がオハシを使って料理を食べている様子を見るだけで分かる。
 あれも自分でもできるようにならなければならない。

 そんなことを思いながら店頭に立つ。今日もマナツビとやらのようだが、体を覆う魔術の防護壁があるので俺は鎧姿でも涼しく快適に過ごせる。
 寝床と食事を提供してもらっている恩を返すために少しでも多くの客を呼び込むために今日も鎧姿で店頭で宣伝役を務める。そうしていると子供たちが寄ってきた。

「うわあ、すげえ、カッコいい~」
「お兄さん、ドラゴンファンタジーから出て来たみたい~」
「ははは、そうか。俺はカッコいいか」

 子供たちに纏わり付かれ俺は上機嫌になる。
 鎧姿は男の子たちの好奇心をくすぐるようで、ぺたぺた触ってくる。
 この辺の子供の行動は俺の世界とも変わりないな、と思う。

 俺の世界でも騎士たちが町を歩けば子供たちは純粋な憧れを秘めて近寄ってきたものだ。

「お兄さん、剣振って~」

 そんなことを子どもたちが言う。俺は剣を引き抜いた。
 といっても俺の剣は店内に置いてきているので模造刀であるが。
 模造刀だけあって、俺の剣よりかなり軽い。これなら軽々振り回せる。
 俺が「やっ!」「はっ!」と掛け声を上げて、模造刀を振るえば、子供たちから歓声が上がる。
 うむ。悪くないな。これは。やがて子供たちも去り、俺は店頭で暇を持て余していると、ジドウシャがやって来て俺の側で止まった。中から人が数人出てきて、俺に近寄る。

「君が噂の本物そっくりの鎧を来ているコスプレイヤーかい?」

 俺はこすぷれいやーではないのだが、ここで否定すると話が面倒くさくなりそうだと思ったので首肯する。
 俺に話しかけた男は笑みを浮かべて続けた。

「いやあ、君みたいな逸材を探していたんだ。ヒーローショーに主役として出てみる気はないかい? 勿論、報酬も弾むよ」

 ひーろーしょー? ちょっと、分からなかったのでサナを呼ぶ。サナはやって来て話を聞くと「いいじゃない」と目を輝かせた。

「アドニスならヒーロー役できるわよ! 是非、やるべきだわ!」
「サナ、そのひーろーしょーというのは何なんだ?」

 俺はサナに問い掛けると、正義の味方と悪人のフリをした人同士が子供たちの前で戦うフリをして、正義の味方側が勝利して子供たちを喜ばせる催し物だと説明してくれた。
 なるほど。それに出るとなれば悪い気はしないな。

「私は曽我裕二という者だ。この申し出を受けてくれるかい?」
「ユウジか。俺はアドニス・トーベだ。快く受けよう」
「いきなり下の名前で呼ぶのかい……」

 少し面食らった様子でユウジは苦笑いして言う。む、これは失礼だったか。

「それは失礼した。ソガ殿」
「ああ、トーベさん。よろしく頼むよ」
「任せておけ」

 そうして俺はソガ殿たちが企画しているひーろーしょーとやらに出ることになった。
 開催日は一週間は先のようであるが、自然と気合いが入ってしまうものであった。

「あんまり気合いいれて失敗しないでよね」
「でも、凄いですね、アドニスさん。ヒーローショーにスカウトされるなんて」
「金髪碧眼だからねぇ、アドニスは。ヒーロー役にはピッタリよ」

 サナの他に、ルリもフェイフーもやって来て、俺を褒めてくれる。
 俺のこの鎧はこの世界では余程貴重なものなのだな、と思う。
 フェイフーが言うにはそれだけでなく俺の生まれつきの金髪と青い瞳もヒーローの要素として重宝されるもののようだが、それが何故かは今ひとつ理解しそこねた。

「何故、金髪碧眼がいいのだ? 色が違うだけだろう?」
「日本人はその色に憧れちゃうものなのよ。ま、私は中国人だけどその気持ちは分かるわ」

 そう答えるフェイフー。やはりよく分からないな。この世界にはまだ謎が多い。そう思う、俺であった。
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