4 / 47
第4話:最高の逸品、はんばーぐ
しおりを挟む
日も暮れてきたので俺は石動家の人たち、といってもサナとヨーイチ殿の二人だけだが、と一緒に晩餐を食べることになった。
店の奥にある生活スペースに案内される。
父親と娘だけで他に家族はいないのかと思ったが、母親がいないことには突っ込まない方がいいだろう。
この国の常識に疎い俺でもそれくらいは分かった。
鎧を上半身も下半身も脱ぎ、代わりにヨーイチ殿のてぃーしゃつとじーぱんという格好に着替えさせられた。
このてぃーしゃつにじーぱんという服とズボン、動きやすい、良い服とズボンだ。この姿で戦場に出るのはゴメンだが。
「アドニス、お箸使える?」
「オハシ? 何だ、それは?」
「あー、やっぱ無理か。じゃあ、フォークとスプーンでいいかしら?」
「ああ。フォークとスプーンなら使える」
オハシなるものがどういうものか気になったがとりあえず答える。
料理がテーブルに並んでいく。見たこともない豪華な料理だ。
「これは……凄く美味そうだな」
「うちの娘は料理上手でね。アドニスくんも満足できると思うよ」
「白米よりパンの方がいいかしら、アドニス?」
「ハクマイ……ライスか。どちらでもいいが、どちらかと言えばパンの方が馴染み深いな」
「了解っ」
そうして、料理が全て並ぶ。サナとヨーイチの前にはライスが茶碗に注がれ、俺の前にはパンだ。
メインディッシュであろう料理ははんばーぐという名らしかった。
そこに野菜のサラダが並び、スープが用意される。やはり見たこともない豪勢な料理だ。
「これは凄いな! サナは料理人なのか?」
「お褒めの言葉、ありがとう。でも、これくらいこの世界……この国じゃ普通に出て来る料理よ。そこまで驚くほどのものでもないわ」
「そうなのか」
どうやらこの国の料理のレベルの水準はかなり高いようだった。
このような豪華な料理を貴族でもないのに食べられるとは。
俺は驚きを覚えつつもサナとヨーイチ殿と一緒に「いただきます」の挨拶をする。サナが「異世界でもやっぱりいただいますはあるんだ……」などと言っていたが。
そうして、まずパンに口をつける。
「う、美味い……!」
これ程、柔らかくて豊満な味を閉じ込めたパンを俺は知らない。
スナイバル王国の安物のパンはこれとは比較にならないくらいまずかった。
パンの異常な美味さに思わず、「高かっただろう、これ」と訊ねてしまう。
「パン屋さんで80円で買ったものだけど」
「そうか」
80円というのがどのくらいの価値かは分からないがこんな美味しいパンだ。
さぞ大金だったのだろう。そんなものを食べさせてもらって悪いという気持ちが溢れてくる。
次にメインディッシュらしいはんばーぐに手を付けた。フォークで突き刺し、口の中に運ぶ。
……美味すぎる!
俺は思わず感激してしまう。しっかり焼かれた肉の触感にソースが絡み合い、絶妙なハーモニーを形成している。
肉も美味く、これも高かっただろうと思われた。
「このはんばーぐとやらは最高だな!」
「ありがと、アドニス。私の得意料理なの」
「そうか。しかし、これも高かっただろう」
「や、せいぜい200円くらいしかお金かかってないから。セールで買ったひき肉だし」
先の80円より多くなっている。円という通貨がどれだけの価値を持つかは知らないが高級品を食べているのだな、と実感する。
サラダも健康さあふれる瑞々しい野菜が使われており、これも高級品だな、と俺は思う。
スープも絶品で何から何までこれまで俺が食べてきた料理と比べると別物であった。
これまで俺がスナイバル王国で食べていた料理などこの料理の足元にも及べまい。
全部、食べ終わり、「ごちそうさまでした」と三人で手を合わせる。
「いやあ、ホントに美味かったぞ、サナ」
「そんなに大したもんじゃないんだけどね……やっぱり異世界……アドニスの国の料理レベルはこれより低いの?」
「比べ物にならないな」
「そう」
そうして、サナは手早く食器を片付けると奥の台所に行った。好奇心で付いていった俺だが、
「うお! 水がこんな所から出た!? 魔術か?」
「ただの水道だって。そんなに凄いもんじゃないわよ」
「スイドウ、と言うのか。これは自由自在に水を操るのか?」
「そんな言い方をしたら大袈裟だけど、まぁ、そんな所ね」
スイドウとやらから出た水でサナは三人分の食器を洗っていく。その動作は手慣れたものであった。
「この世界は凄いのだな」
この世界に来て一日目、それを実感する一晩になるのであった。
店の奥にある生活スペースに案内される。
父親と娘だけで他に家族はいないのかと思ったが、母親がいないことには突っ込まない方がいいだろう。
この国の常識に疎い俺でもそれくらいは分かった。
鎧を上半身も下半身も脱ぎ、代わりにヨーイチ殿のてぃーしゃつとじーぱんという格好に着替えさせられた。
このてぃーしゃつにじーぱんという服とズボン、動きやすい、良い服とズボンだ。この姿で戦場に出るのはゴメンだが。
「アドニス、お箸使える?」
「オハシ? 何だ、それは?」
「あー、やっぱ無理か。じゃあ、フォークとスプーンでいいかしら?」
「ああ。フォークとスプーンなら使える」
オハシなるものがどういうものか気になったがとりあえず答える。
料理がテーブルに並んでいく。見たこともない豪華な料理だ。
「これは……凄く美味そうだな」
「うちの娘は料理上手でね。アドニスくんも満足できると思うよ」
「白米よりパンの方がいいかしら、アドニス?」
「ハクマイ……ライスか。どちらでもいいが、どちらかと言えばパンの方が馴染み深いな」
「了解っ」
そうして、料理が全て並ぶ。サナとヨーイチの前にはライスが茶碗に注がれ、俺の前にはパンだ。
メインディッシュであろう料理ははんばーぐという名らしかった。
そこに野菜のサラダが並び、スープが用意される。やはり見たこともない豪勢な料理だ。
「これは凄いな! サナは料理人なのか?」
「お褒めの言葉、ありがとう。でも、これくらいこの世界……この国じゃ普通に出て来る料理よ。そこまで驚くほどのものでもないわ」
「そうなのか」
どうやらこの国の料理のレベルの水準はかなり高いようだった。
このような豪華な料理を貴族でもないのに食べられるとは。
俺は驚きを覚えつつもサナとヨーイチ殿と一緒に「いただきます」の挨拶をする。サナが「異世界でもやっぱりいただいますはあるんだ……」などと言っていたが。
そうして、まずパンに口をつける。
「う、美味い……!」
これ程、柔らかくて豊満な味を閉じ込めたパンを俺は知らない。
スナイバル王国の安物のパンはこれとは比較にならないくらいまずかった。
パンの異常な美味さに思わず、「高かっただろう、これ」と訊ねてしまう。
「パン屋さんで80円で買ったものだけど」
「そうか」
80円というのがどのくらいの価値かは分からないがこんな美味しいパンだ。
さぞ大金だったのだろう。そんなものを食べさせてもらって悪いという気持ちが溢れてくる。
次にメインディッシュらしいはんばーぐに手を付けた。フォークで突き刺し、口の中に運ぶ。
……美味すぎる!
俺は思わず感激してしまう。しっかり焼かれた肉の触感にソースが絡み合い、絶妙なハーモニーを形成している。
肉も美味く、これも高かっただろうと思われた。
「このはんばーぐとやらは最高だな!」
「ありがと、アドニス。私の得意料理なの」
「そうか。しかし、これも高かっただろう」
「や、せいぜい200円くらいしかお金かかってないから。セールで買ったひき肉だし」
先の80円より多くなっている。円という通貨がどれだけの価値を持つかは知らないが高級品を食べているのだな、と実感する。
サラダも健康さあふれる瑞々しい野菜が使われており、これも高級品だな、と俺は思う。
スープも絶品で何から何までこれまで俺が食べてきた料理と比べると別物であった。
これまで俺がスナイバル王国で食べていた料理などこの料理の足元にも及べまい。
全部、食べ終わり、「ごちそうさまでした」と三人で手を合わせる。
「いやあ、ホントに美味かったぞ、サナ」
「そんなに大したもんじゃないんだけどね……やっぱり異世界……アドニスの国の料理レベルはこれより低いの?」
「比べ物にならないな」
「そう」
そうして、サナは手早く食器を片付けると奥の台所に行った。好奇心で付いていった俺だが、
「うお! 水がこんな所から出た!? 魔術か?」
「ただの水道だって。そんなに凄いもんじゃないわよ」
「スイドウ、と言うのか。これは自由自在に水を操るのか?」
「そんな言い方をしたら大袈裟だけど、まぁ、そんな所ね」
スイドウとやらから出た水でサナは三人分の食器を洗っていく。その動作は手慣れたものであった。
「この世界は凄いのだな」
この世界に来て一日目、それを実感する一晩になるのであった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!
電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。
しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。
「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」
朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。
そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる!
――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。
そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。
やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。
義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。
二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる