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第4話:今の自分の立場
しおりを挟む昼食も食べ終わり、ルグベドとの時間という事で侍女は退室していった。
さて、これからどうするか。ランスロットとこういう時間になった時はどうしたっけ、と思い、ふと口に出す。
「ルグベド、狩りに行きませんか?」
「狩り、ですか……?」
ルグベドは驚いた顔を見せる。私だって皇女とはいえ、乗馬も騎射の心得もある。
鹿狩りなどはランスロットと共に楽しんで来た身だ。
そこまで言ってハッと気づく。もしかしたらエリカは乗馬が出来ないのか。
その推測は当たっていたようだ。
「エリカ様、貴殿は乗馬が出来なかったはずですが……」
「あ、いえ、練習したのよ! 貴方と一緒に楽しむために!」
なんとか誤魔化しの言葉を並べる。ルグベドは訝しんだ様子を見せたものの納得してくれたようだった。
「それでは参りましょう。エリカ様の身はこのルグベドが守るのでご安心を」
「ええ、頼りにしておりますわ」
そう言って笑うルグベドに思わず心奪われそうになる。
いかんいかん。私の思い人はあくまでランスロットだ。
それから馬を出して、ルグベドと共に狩りに出かける。侍女たちからは私が狩りに出る事を不安視されたが、エリカならともかくエルミリアの私ならこれくらい簡単に出来る。
見事、馬を乗りこなしている様子を見せると侍女たちは驚いた顔をした。
「これは驚いた。本当に乗馬を身に付けたのですな」
ルグベドも驚いている。
あまり積極的に見せる事でもないかと思ったが、まぁ、いいだろう。
そうして、帝都の外に出てルグベドと共に鹿狩りに精を出す。
ルグベドも傭兵隊長だけはあり、馬の扱いは上手く、騎射も習得しているようであった。
「ルグベド、やりますわね」
「エリカ様の方こそ! 見違えました!」
本来のエリカはこういう事は出来ないのだろう。
ルグベドは驚きながらも私と共に鹿狩りを楽しむ。
それが終わり、屋敷に戻るとルグベドと別れる時間がやって来た。
「ルグベド、今日は楽しかったですわ。ありがとう」
そう言うとルグベドは驚いた顔になった。
「エリカ様からありがとうなどという言葉を聞けるとは……これからもよろしくお願いいたしますぞ」
本来のエリカ、どんな嫌味な人間なんだろう。
そう思ったが私は笑みを浮かべてルグベドを送り出す。そこに来客があった。
「あ、貴方は!」
私の本来の姿、アルカディア帝国第一皇女エルミリアだ。エルミリアはこちらを見ると薄く笑った。
「ふふふ、低級貴族のエリカさん。どうかしら、最下級貴族としての一日は?」
エルミリアはこちらを嘲笑うつもりでここに顔を出したようであったが、実の所、このエリカの立場での生活もそこまで悪いものではないと思えている自分がいた。
それでも、それを認める訳にはいかない。
「冗談じゃないわ。早く私の体を返して! 貴方がエリカでしょう!?」
「何を馬鹿な事を言っているのか。私はアルカディア帝国第一皇女のエルミリアよ。貴方とは格からして違うのよ」
「何を!」
そう言って、私はエルミリアに掴みかかろうとするが、エルミリアの護衛の兵士が私を制止した。
手を出せばあの槍で串刺しにされる。それを思って私はエルミリアから退く。
「あはは! まぁ、お互い、こうなった以上は仕方がないんだから、お互いの日々を満喫しようじゃないの! 貴方はエリカ・ルク・フォーンとして生きるのよ! 低級貴族の令嬢としてね!」
そう言い放ちエルミリアは立ち去って行く。
周りにいた兵士たちにも聞こえているだろうが、何を言っているのか理解出来たものはいないだろう。
私は悔しい思いを堪え、エルミリアが去って行くのを見送る。
何の神の悪戯か。エルミリアとエリカの運命は入れ替わった。
しかし、と思う。あのエリカだったエルミリアに皇女としての務めが務まるだろうか? 執務を多くこなさなければならず、礼儀作法など学ぶべき事も多い。
それだけの執務をここまで聞いている限りのエリカには務められるとは思えないのだが……。
(まぁ、その内、分かるわね)
仕方がなく私はエリカとしてフォーン家の屋敷に帰って行くのであった。
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