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クーデターから3日後
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ブーテェ法国の国民たちは、誰もが夢で女神から第三王子以外は法国の国王として認めないこと、その他のものが王位にいる間は天罰が下ることを聞いた。その夢を見た者たちは二つの反応に分かれた。
敬虔な女神信者である者や、他国から法国に来て警戒心が強いものは、すぐに法国を出て行った。しかし大多数は、女神様が自分たちをひどい目に合わせるはずがない、ひどい目に合うとしてもそれは国王や貴族だけ。そんな風に都合よく思い込み、法国に残ることを決めた。
帝国民は元から女神に対する信仰が強くないこともあり、ほとんどの国民は帝国に残ることを決めた。
「ねえ。ママ。今日もお外で遊べないの?」
ざあざあと激しく降る雨を見て、家の中から女の子が不満そうに言った。
「そうね。雨が止まないと無理よ」
母親は娘にそう答えながら、空を見つめた。今日で雨が降り始めてから三日が経つ。雨は朝から晩まで延々と降り続き、畑や村は水でぐちゃぐちゃだ。
「女神様がお怒りだわ」
ある老婆はそう嘆くが、嘆くだけだ。また、三日も経つと村の中に怪我人や病人も出てきた。いつもなら村の教会を回っている聖女のもとへ行けば治してもらえるが、今は誰にも治してもらうことはできない。
また、王都では簡単な下水整備がされているのだが、続く雨で汚物があふれ出てしまい異臭がするようになっていた。
もしかすると、自分たちは大きな選択ミスをしたのかもしれない。そんな思いが国民たちに芽生え始め、重いため息が空気に溶けていた。
法国の王宮内では、パトリックがイライラとしながら執務室の椅子に座っている。ユーリエの元に送った使者から聞いたのは、すでに聖女たちは公爵領から出て行ってしまったということ。また、第三王子やリューイが見つかっていないことも、パトリックを苛立たせた。
「そうだ」
イライラしていたパトリックは何かをひらめき、紙に文字を書き出す。
「おい。使者をたてて、これをネバンテ国王へ渡してこい」
近くにいた男に書状を渡す。内容としては、クーデターを支持しなかったことは水に流す代わりに、コルネリアを返せ。というものだ。
手紙を受け取った男性が部屋から出ていくと、入れ替わりにマリアンネが部屋に入ってくる。癒しの力は使うことができないが、いまだに青色の衣を身にまとっている。
「パトリック様。雨はいつ止むんですの?馬車から降りたら濡れてしまいましたわ」
髪の毛を撫でつけながら、不機嫌そうにマリアンネが言う。
「さあな。そのうち止むだろう」
畑が水浸しになり、浸水を起こしている家も多くあるが、二人の耳には入ってきていない。雨が降り続けていることの異常さは感じてはいるものの、その重大さには気が付いていないようだった。
「それよりも。さっきネバンテ国に使者を送ると聞こえたのですが、コルネリアを呼び戻すんですの?」
「ああ。聖女がいないと不便だろ?」
妾としても囲いたい、とはもちろん言わずにパトリックが答えると、マリアンネは両手をぱちんと合わせて喜ぶ。
「とてもいい案ですわ!コルネリアが帰ってきたら、安心して過ごせます。今は怪我をしても治せないんですもの」
きゃっきゃっと無邪気にマリアンネが喜ぶ。正面からやり合うとめんどくさい、そう幼少期から気がついていたコルネリアは、二人をうまく流して生きてきた。
最初は嫌なことは嫌だと答えていたが、後ろ盾のない幼いコルネリアが悪役になって責められるだけだった。そのため、基本的にコルネリアは反抗せず、二人の言葉にはイエスと答えてきた。
今までのことがあるため、二人はコルネリアが自分に従うと心から信じこんでいる。まさか意に沿わない行動を起こすとは、夢にも思っていないのだ。
「きっと法国に帰れると知ったら泣いて喜びますわね。あの子の顔を見るのは嫌だけど、使ってあげましょう」
ふふっとマリアンネが笑い、パトリックも笑顔で頷いた。
法国からネバンテ国の首都までは、早馬で3日ほどの距離だ。パトリックの使者がヴァルターの元に着いたのは、雨が降り始めてからちょうど一週間後だった。
恭しくパトリックの書状を掲げる使者の男性を、ヴァルターは冷めた目で見ている。隣に座っているコルネリアは複雑そうな表情を浮かべていた。
「なるほど。使者殿。お疲れだろうから、いったん休まれては?その間に返答を用意しよう」
ヴァルターの提案にへとへとの使者は喜んで礼を言い、案内されるままに部屋から出ていく。
「ヴァルター様。法国から何と来たのですか?」
「くだらん提案だ。君が聞くまでもない」
ぐしゃり、とヴァルターが書状を握りしめる。
(――雨が続いているから、援助の提案かしら?)
まさか法国に帰れ、という内容だとは気がついていないコルネリアは首をかしげる。
「一ヶ月は待たないと行けないからな。ひとまず使者には帰らないでもらおうか」
にやっとヴァルターが悪い笑みを浮かべ、近くに控えていたクルトを呼び寄せる。
「とりあえず食事をとらせたら、牢屋に案内してやれ」
短く返事をしてクルトが部屋から出ていく。ヴァルターは法国へ返事をする気もなければ、使者を法国へ帰す気もないようだった。
敬虔な女神信者である者や、他国から法国に来て警戒心が強いものは、すぐに法国を出て行った。しかし大多数は、女神様が自分たちをひどい目に合わせるはずがない、ひどい目に合うとしてもそれは国王や貴族だけ。そんな風に都合よく思い込み、法国に残ることを決めた。
帝国民は元から女神に対する信仰が強くないこともあり、ほとんどの国民は帝国に残ることを決めた。
「ねえ。ママ。今日もお外で遊べないの?」
ざあざあと激しく降る雨を見て、家の中から女の子が不満そうに言った。
「そうね。雨が止まないと無理よ」
母親は娘にそう答えながら、空を見つめた。今日で雨が降り始めてから三日が経つ。雨は朝から晩まで延々と降り続き、畑や村は水でぐちゃぐちゃだ。
「女神様がお怒りだわ」
ある老婆はそう嘆くが、嘆くだけだ。また、三日も経つと村の中に怪我人や病人も出てきた。いつもなら村の教会を回っている聖女のもとへ行けば治してもらえるが、今は誰にも治してもらうことはできない。
また、王都では簡単な下水整備がされているのだが、続く雨で汚物があふれ出てしまい異臭がするようになっていた。
もしかすると、自分たちは大きな選択ミスをしたのかもしれない。そんな思いが国民たちに芽生え始め、重いため息が空気に溶けていた。
法国の王宮内では、パトリックがイライラとしながら執務室の椅子に座っている。ユーリエの元に送った使者から聞いたのは、すでに聖女たちは公爵領から出て行ってしまったということ。また、第三王子やリューイが見つかっていないことも、パトリックを苛立たせた。
「そうだ」
イライラしていたパトリックは何かをひらめき、紙に文字を書き出す。
「おい。使者をたてて、これをネバンテ国王へ渡してこい」
近くにいた男に書状を渡す。内容としては、クーデターを支持しなかったことは水に流す代わりに、コルネリアを返せ。というものだ。
手紙を受け取った男性が部屋から出ていくと、入れ替わりにマリアンネが部屋に入ってくる。癒しの力は使うことができないが、いまだに青色の衣を身にまとっている。
「パトリック様。雨はいつ止むんですの?馬車から降りたら濡れてしまいましたわ」
髪の毛を撫でつけながら、不機嫌そうにマリアンネが言う。
「さあな。そのうち止むだろう」
畑が水浸しになり、浸水を起こしている家も多くあるが、二人の耳には入ってきていない。雨が降り続けていることの異常さは感じてはいるものの、その重大さには気が付いていないようだった。
「それよりも。さっきネバンテ国に使者を送ると聞こえたのですが、コルネリアを呼び戻すんですの?」
「ああ。聖女がいないと不便だろ?」
妾としても囲いたい、とはもちろん言わずにパトリックが答えると、マリアンネは両手をぱちんと合わせて喜ぶ。
「とてもいい案ですわ!コルネリアが帰ってきたら、安心して過ごせます。今は怪我をしても治せないんですもの」
きゃっきゃっと無邪気にマリアンネが喜ぶ。正面からやり合うとめんどくさい、そう幼少期から気がついていたコルネリアは、二人をうまく流して生きてきた。
最初は嫌なことは嫌だと答えていたが、後ろ盾のない幼いコルネリアが悪役になって責められるだけだった。そのため、基本的にコルネリアは反抗せず、二人の言葉にはイエスと答えてきた。
今までのことがあるため、二人はコルネリアが自分に従うと心から信じこんでいる。まさか意に沿わない行動を起こすとは、夢にも思っていないのだ。
「きっと法国に帰れると知ったら泣いて喜びますわね。あの子の顔を見るのは嫌だけど、使ってあげましょう」
ふふっとマリアンネが笑い、パトリックも笑顔で頷いた。
法国からネバンテ国の首都までは、早馬で3日ほどの距離だ。パトリックの使者がヴァルターの元に着いたのは、雨が降り始めてからちょうど一週間後だった。
恭しくパトリックの書状を掲げる使者の男性を、ヴァルターは冷めた目で見ている。隣に座っているコルネリアは複雑そうな表情を浮かべていた。
「なるほど。使者殿。お疲れだろうから、いったん休まれては?その間に返答を用意しよう」
ヴァルターの提案にへとへとの使者は喜んで礼を言い、案内されるままに部屋から出ていく。
「ヴァルター様。法国から何と来たのですか?」
「くだらん提案だ。君が聞くまでもない」
ぐしゃり、とヴァルターが書状を握りしめる。
(――雨が続いているから、援助の提案かしら?)
まさか法国に帰れ、という内容だとは気がついていないコルネリアは首をかしげる。
「一ヶ月は待たないと行けないからな。ひとまず使者には帰らないでもらおうか」
にやっとヴァルターが悪い笑みを浮かべ、近くに控えていたクルトを呼び寄せる。
「とりあえず食事をとらせたら、牢屋に案内してやれ」
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